築地中央卸売市場の移転予定地とされている豊洲は、東京ガスの都市ガス製造工場の跡地で、環境基準を大幅に上回る毒物により土壌が汚染されていることが指摘されている。
委員は現地を見るのは初めて。示されるデータは東京都の都合のいいものばかり(豊洲の新市場予定地。撮影:いずれも筆者)
東京都が5月に発足させた「豊洲移転問題・専門家会議」の委員4人が30日、初めて現地を視察した。視察のもようは一応メディアに公開されたが、見たのは5地点だけ、時間もわずか50分。委員や事務局員への取材は一切ご法度だ。肉太の字体で書かれた「注意書き」が渡された。
記者団は観光バスに乗せられた。東京都が指定した5地点以外に足を踏み入れることはできなかった。
記者団は新市場予定地の入口からバスに乗せられた。それもバスガイド付(写真)の観光バスだ。東京都が調査ポイントに設定した5地点以外に足を踏み入れることはできない。40haもある広大な敷地の中からそれら5地点を選んだ根拠も定かではない。
1番目の視察ポイントは地下水がこぼれ出している場所だった。敷地の中でも最も低い地点なので地下水がここに集まる。民主党議員団の調査(5月29日)でテスターを突っ込んだところ、ペーハー値が11・30を記録した場所でもある。JanJanをはじめ各メディアも注目して、これを報道した。
東京都もさすがにこの地点は隠せなかったのか、30日の視察ポイントに入れた。だが、抜け目はない。東京都中央市場管理部・技術担当の堀江信之課長が、視察した委員に以下のように説明した。
「東京都の調査ではペーハーの速報値は10から11です」。
筆者は“あれっ!?結構正直だな”と思ったが、それも束の間だった。
「(ペーハー値が高いのは)盛り土を安定させる石灰、セメントなどによるものです」。
別の視察ポイントでは、堀江課長は次のような説明をした。「ここは東京ガスが操業に由来する有害物質を撤去した場所です」。
堀江課長は“東京都が取得した用地にさしたる毒性はない”、ということを強調したいのだろう。意図が見え見えだった。
東京都のメディア管理は、なかなか抜け目がない。
東京都による記者団と委員の隔離は徹底していた。各視察ポイントでは記者、カメラマンを先に集めさせる。集合を確認すると広報担当者が手を振って合図する。それから委員を乗せたワゴン車が来る―こんな具合だった。
筆者はスキを見計らって、ある委員と地下水の話をしていた。すると、どこからともなく近寄ってきた広報担当者が、筆者の背中を抱き「さあバスに乗りましょう」。
筆者は委員に話かける前に十分周囲を見回して、都の職員がいないことを確認したはずだった。この職員は「中東の秘密警察」でも通用するんじゃないかと思いたくなるほど、マークがしっかりしていた。
「専門家会議」とは名ばかり。どの委員も現地視察はこれが初めて。示されるデータは東京都が集めたものばかりだ。自分たちでスタッフを使って調査しない限り、客観的な数字は出ない。
独裁国家に行くと、都合のいいところばかりを見せる。北東アジアのある国へのツアーが有名だ。「美女軍団」も「マスゲーム」も登場しなかったが、十分に怪しい東京都主催の現地視察だった。
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