国交省外郭団体の雄 財団法人・日本建築センター
前回は、建築文化が崩壊する原因は、
建前「耐震偽装事件の再発防止」ではなく、
本音「利権の拡大」が目的で改定された
“改悪建築基準法”にあると書いた。
建築関係者には、設計者、施工者を問わず
怒り、虚しさ、情けなさ、そして官僚への嫌悪感を訴える声が日増しに高まっている。
建築現場最前線の大工、鉄骨鳶職たちも、いやおうなしにこの問題を認識しはじめている。建築団体に所属する建築士個人に対してまで、「国に対して何も発言しないのか!」と責める声まで出てきている。
◆◆◆◆◆◆
【トピックス】
【1】もうやった、またやった。佐藤信秋自民党参議院議員(元国交省事務次官)
佐藤信秋参議院議員は、耐震偽装事件発覚前後の国交事務次官で、処理を誤った官僚の最高責任者だ。
・
元国交次官・佐藤信秋議員に献金、省幹部「会社員」と記載(読売新聞WEB)
・
佐藤信秋議員に1000万円 国交省局長やOB(Yahoo!ニュース)
・
国交省局長やOBが1千万円超寄付 自民党の佐藤信秋議員の資金管理団体に(産経新聞WEB)
・
佐藤信秋議員への献金は「適法」、冬柴国交相が見解(日経ネット)
・
佐藤信秋議員の団体、献金者188人の肩書を訂正(読売新聞WEB)
朝日新聞WEB版にあった記事「省関係者を「会社員」、佐藤信議員が報告書に」、「参院出馬予定の前国交事務次官、橋梁業界に資金要請」はリンクが切れている。
【2】恐れていた事態が判明しはじめた
改定建築基準法が施行された今年6月20日から8月末までの約70日の間に、東京都内の特定行政庁(区・市役所など行政の建築指導課)が、下ろした建築確認のうち、
「構造計算適合性判定(適判)」に回ったものは1件もなかったことが判った。
前回記事で、「……7月と8月に下ろした建築確認件数が前年同月比でそれぞれ
約45%減少した。影響が比較的少ないと思われる木造2階建ての住宅が多いと考えれば、工事費総額つまり経済の視点からみたらものすごい減少になっているのではないか」と書いている。
やはり、
「構造計算適合性判定」に回される建築(鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造で高さが20mを超えるもの。木造で高さ13mまたは軒高9mを超えるもの。鉄骨造で4階以上、あるいは高さ13mまたは軒高9mを超えるもの。その他)
は、一棟も建築確認されていなかったことが判明したわけだ。
審査の受付体制をはじめとする国の不備による、「申請したくてもできない状況」が証明されたことになる。
・
【改正建築基準法】都内特定行政庁の「適判」伴う確認件数、8月末までゼロ(KEN-Platz)
ある中堅鉄骨会社の悲鳴
一年中多忙だった東京のある中堅の鉄骨会社は、法改正以前の仕事がはけた現在、設計事務所や建設会社からの引き合いもなく、仕事がほとんど無くなった、という話を聞いた。関連する鉄骨工や鳶職も開店休業に陥っているという。
建築確認が「構造計算適合性判定」にまわっていないのだから当然だ。
【3】使えないっ!「建築物の構造関係技術基準解説書」
前回記事中、
【そらぞらしい謝罪のポーズ】と書いた。
法施行後2ヶ月以上も経過した8月27日に、法改定の中心人物
小川富由・大臣官房審議官が弁明したなかで、「解説書はすべて8月10日に発行されている」と、弁明とも報告ともつかないことを言っている。
それが出ればようやく動き出すと時間稼ぎをしながら、特定行政庁や民間確認申請機関が期待していた解説書だ。構造設計者も心待ちにしていた。
ところが、この「建築物の構造関係技術基準解説書」は、中身の濃いものを期待していた構造家には期待はずれの
解説になっていない “使えないシロモノ” なのだという。
7月の下旬から、
財団法人・建築行政情報センターが発信していた
「改正建築基準法に係る質疑・応答」がこれまた、実務(現場)知らずの能天気なもので
“使えない”もの だ。
【一例をあげよう】専門的で判りにくいかもしれないがお許しいただきたい。
『施工現場で杭が偏心した(ずれた)ため、基礎や地中梁等の補強が必要になった場合、「計画変更に係る確認」を受けなければならない対称になるか』という質問への回答だ。
『原則として計画変更の手続きが必要だが、あらかじめ
寸法のずれによる影響を見込んで構造計算を行い、それについて基準への適合性の確認を受けている場合等には、計画変更(適合性判定)は
不要となる場合もある』というもの。
現場の
実態を知らない人達がつくった法律の、『設計図に対して施工時に狂い(偏心)が出たら、「計画変更申請」をしなければならない』という部分の、“解釈による緩和?”の説明らしいが、しかし、現実としてはそのような設計はやりようがない。
杭が10cm偏心した(ずれた)と仮定しても、ずれの方向との組み合わせは無限になる。基礎が20カ所あれば20カ所×杭本数=20〜数十本の杭の1本1本について、それぞれ位置のずれ、方向のずれ……を無限に設計しておくという
「無限の、無意味な、過剰設計」をしなければならないことになる。しかも、
「不要となる場合もある」であって、「不要となる(計画変更が必要ない)」ではない。
そもそも、
法をつくった人達は、現場で杭を打設するのに(工業製品のように)寸分の狂いもなく施工できるものだと思っているのだろうか?
例えば、現場で造成する杭(あらかじめ穴を掘り、鉄筋カゴを挿入し、コンクリートを流し込んで造る)は次のようなものだ。
直径1〜2mの杭の穴を掘ると外周は、すでに数センチ程度の誤差が生じているのが普通だ。そのような精度の工事に対して、施工誤差を認めないという「机上の空論」をソノママ法律にしてしまったのだからあきれる。今後、全国の杭の工事現場はパニックに陥るだろう。これが、国民にとってどのような利益をもたらすというのか。
例として杭の問題をあげたが、このような無駄な労力(過剰設計)と時間の浪費(計画変更の審査で現場は2週間程度?ストップする)は、GNPを下げるだけだろう。
いったい国はどのようなアタマ(常識、想像力、判断力)をもっているのか!
◆◆◆◆◆◆
【怪しい「瑕疵担保責任履行確保法」】
あまり知られていないが、
「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(通称:住宅瑕疵担保履行法)」というものが5月25日に国会で可決し、30日には公布されている。
これが今後の欠陥住宅被害者(過去のではない)の救済に役立つかは、こころもとないのだ。この法律が施行されるのは公布日から1年以内ということになっているが、肝心な部分(事業者に義務づけられる「供託」または「保険」)については、施行が09年の秋以降(11月29日がタイムリミット)になる模様だ。
住宅の販売や施工をした事業者が、保証金を法務局に「供託」するか、住宅瑕疵担保責任保険法人の「保険」に加入する。瑕疵があった場合に、修補のための資金が事業者に支払われる。事業者が倒産していた場合には、建て主や購入者に直接支払われるというものだ。
保険支払いの対象となるのは、2000年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称:住宅品確法)」の第87条で定める、「住宅の新築工事の請負人の瑕疵担保責任の特例」による。それは、『住宅を新築する建設工事の請負契約においては、請負人は、注文者に引き渡した時から10年間、住宅のうち
構造耐力上主要な部分又は
雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの
瑕疵について、民法第634条第1項及び第2項前段に規定する担保の責任を負う。(要約)』というもの。
この「住宅品確法」の「住宅の新築工事の請負人の瑕疵担保責任の特例」は、
2000年4月1日以降に契約した住宅の全てを対象とするものなのだが、「住宅品確法」の最後に1ページほどしか記述されていない。
問題はこれに伴って、
「住宅瑕疵担保責任保険法人」という“ニュービジネス”が誕生することだ。
国交省はその外郭団体である、
財団法人・住宅保証機構に真っ先に認可を与えるだろう。そして、「住宅瑕疵担保責任保険法人」の後ろには、保険会社が群がる。
保険と言えば本来金融庁の管轄だ。水面下では
国交省と金融庁の暗闘も始まっているという。天下り先をにらみながら妥協点をさぐっているらしい。
『保険』が絡むと、修補資金の
支払い時にトラブルが多発する可能性が高い。
生保や損保で証明済みだから気になるところだ。
ともかく、「この制度が動き出した頃に、住宅業界に一波乱があるかもしれない」と指摘しておく。
特殊法人問題に詳しい、ジャーナリストの北沢栄氏や堤和馬氏ら専門家には是非とも、理不尽な外郭団体を追及してほしい。
・
第102章 「天下り日本」を変えるのは政府案か、民主党案か(NAGURICOM [殴り込む]/北沢栄)
・
第103章 「信頼大揺らぎの独立行政法人制度/機能不全の府省評価委員会」(NAGURICOM [殴り込む]/北沢栄)
・
第103章 「信頼大揺らぎの独立行政法人制度/機能不全の府省評価委員会」(NAGURICOM [殴り込む]/北沢栄)
・
これはもう政治家・官僚による詐欺、収奪だ(堤和馬)(JanJan特集)
【ワリを食う国民】
ワリを食う国民(1) 耐震偽装マンションの被害者は未だに救われていない
マンションの建て替えに融資する金融機関のひとつ、住宅金融公庫は廃止された。といっても、住宅公団と同様に独立行政法人として、07年4月1日から名前を変え生き続けている。その名は
独立行政法人・住宅金融支援機構。
住宅金融公庫時代から融資の金利を決めていたのは、
国交省住宅局住宅資金管理室だが、耐震偽装マンションの被害住民からの訴えには冷たいという。
同じ国交省住宅局の不作為で起きた「耐震偽装事件が発端」だというのに。
『あなたのマンションを「建て替えたがる」人々がいる』、『建て替えに追い込まれてから、はしごを外される』、『金融機関によって、対応はくっきり分かれた・・・金融機関の中にも、被害住民のサイフに手を突っ込もうとしたところがある』、『公や金融機関は「リスクヘッジ」にならないのが現状』
・
(1)耐震偽装マンションは、今どうなっているのか(NBonline:日経ビジネス オンライン)
ワリを食う国民(2) 結局は消費者
建築設計事務所(統括、構造、設備)、建設会社の業務量増大。それは、最終的に建築主や住宅購入者(消費者)に負担を強いることだ。つまりワリを食うのは国民だ。
今回の改定での業務量の増大をシミュレーションした結果によると、建築確認申請業務だけでも2〜2.5倍にもなったという。設計業務も施工業務ももちろん増える。そのコストアップは計り知れない。
【むさぼる外郭団体】
前回、
「国交省外郭団体の集金システムだけはしっかりと構築された」と書いた。
財団法人・日本建築センター(写真)などの国交省外郭団体。新設された構造評定機関(日本建築センターなど)。そして、(生き残った)民間確認検査機関。特に、
外郭団体は火事場泥棒のように見える。
・
検証・耐震偽装 悪いのは誰か?何か?(7)歯止め効かぬ国交省グループ焼け太り
【国交省「ご意見募集」も各種委員会も儀式。委員の意見を無視する事務方、支える学識経験者】
実務を知らぬ官僚と、実務を知らぬ学識経験者の連携プレイ
筆者は、
「国交省ご意見募集」“葬られた”意見を公開(その1)
の
「国土交通省 欺瞞の方策」の項で、国交省の
みせかけの「ご意見募集」を批判した。
06年7月31日(月)国土交通省は、
『社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会報告書(案)に関するご意見募集について』を発表し、一般に向けて「ご意見募集」を告知した。(イヤミを言っておく。7月31日に公表して締切は8月18日。どうせ世間は夏休みだから意見は出ないと踏んだのか、自分たちがゆっくり休もうと思っただけなのかは判らぬが、絶妙な日程デスナホントニ!)
8月18日(金)に締切られた応募意見を踏まえて開催された(はずの)8月31日(木)第11回基本制度部会では、179頁にわたる資料が配布された。その中には、
【社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会「建築物の安全性確保のための建築行政のあり方について」報告書(案)に関するご意見募集の結果及びこれに対する対応等について】も入っていた。だから、それを基に31日の部会で最終の討議をしたものと思っていた。
ところが、翌9月1日(金)にはなんと、「建築物の安全性確保のための建築行政のあり方について
答申」が公表されたのだ。
その答申は、
国民に“ご意見”を求めた対象の、7月31日付け「報告書(案)」と字句などの微調整以外ほとんど変わりのないものだった。官僚があらかじめ作ったシナリオを崩す「意見」はハナから無視していたのだ。いつもの手法ではあるのだが。
ここには、
みせかけの、形骸化された「ご意見募集」と、形骸化された委員会が実証されている。異議を申し立てずに答申を認めた委員会を形骸化されていると言わずしてなんというのか。
官僚の意に沿うように委員会を仕切る(らしい)学識経験者に問題があるようだ。全員とは言わぬが。
国交省所管の外郭団体で、理事などに座っている学者達が、国交省の委員会にいること自体おかしくないのか。
【委員会の人選に手をつけなければ、官僚のやりたい放題はなくならない】
次の記事では、国交省の上記委員会と外郭団体の役員名簿(公開情報)から、行政べったりに見える学識経験者の名前を記すつもりだ。彼らには、
建築研究所に所属した経歴のある人物が極立つ。
国会議員は、国政調査権をフルにつかって、「委員会の人選」に踏み込んで欲しい。それぞれの委員を選んだ理由を官僚に説明させてほしいのだ。学識経験者だけではないが、委員会の目的にそぐわない人物もいるようだ。
また、
委員会の報告書には氏名が載らないことをいいことに、委員会を隠れ蓑にしながら事実上仕切っている事務方(官僚)の名前も載せてもらいたい。これは、委員の構成と同等以上に重要だ。
これができなければ、
形骸化した委員会を手玉に取る官僚の横暴は永遠になくなるまい。
【学識経験者を批判する理由】
医学の世界は、「基礎医学」と「臨床医学」に大別される。
「基礎医学」には、解剖学・生理学・生化学・免疫学・病理学・薬理学・衛生学・公衆衛生学などの分野がある。臨床医学の基礎をなす研究の分野だ。
一方「臨床医学」は、患者の診療に直接携わるもので、内科学・外科学・精神医学・産婦人科学などがある。臨床にあたっては、基礎医学で学んだ知識や技能は重要だが、コミュニケーション能力と患者を救おうという情熱は、絶対に欠かせないことだろう。
さて、建築の世界はどうだろうか。
大学など建築教育機関では、極めて広い建築分野の
「基礎」を研究している。計画、設計、歴史、構造、材料、建築経済、建築法規、環境、設備、施工などがさらに細分化されている。それぞれが「臨床(設計や施工)」にとって大切なものだ。
とはいえ、それほど広い分野をカバーしているから、特定分野の専門家であるひとりの教授(博士)が建築全体の視野をもっていることなどあり得ない。 だから、建築の教員といえども「実務」についての認識は案外ピントが外れていることが多い。だから自分の専門外については一般の知識レベルと大差がないものだ。
ただ、建築の教員には「プロフェッサーアーキテクト」と呼ばれる人達がいる。教員であり建築家でもある場合だ。最近は、市井の建築家や構造家を大学に招請することも多くなっている。そういう人達は最前線で建築主(注文主)に相対し、
「臨床」で設計の実務を行っている。非常勤で設計を教えている教員にもそのような建築家は多い。
彼らは建築主と打合せしながら、一方で施工者や材料メーカー、特定行政庁や確認検査機関と打合せしながら業務を進めて行く。もちろん本人が総てをするわけではないが、統括している。それが典型的な建築家(設計事務所長)の仕事だ。
委員会の学識経験者にはそのような人達をこそ選ぶべきだろう。そうすれば、あれほど世間知らずの法律は誕生しなかっただろう。
【元の法律に限りなく近く再改正しなけれは、後世に禍根を残すに違いない】