違法派遣で厚生労働省から処分を受けた人材派遣大手の「グッドウィル」(本社=東京・赤坂)が18日から事業停止期間に入り、全国で多くの派遣労働者が仕事を失った。派遣労働者の労働組合「派遣ユニオン」は19日、そうした労働者にとってのセーフティーネット、
「日雇雇用保険」の説明会を東京・西新宿の同ユニオン本部で開いた。
派遣ユニオンが開いた「日雇雇用保険」の説明会(撮影:いずれも筆者)
「あぶれ手当」の名で知られる日雇雇用保険は、もともと東京・山谷や大阪・釜ケ崎などの寄せ場で働く建設労働者などに適用される雇用保険だった。派遣ユニオンは派遣労働者にもこの保険を適用するよう厚労省と交渉を続け、昨年9月になって、ようやく厚労省が適用を決定した。
派遣先が毎日変わる「スポット派遣」と呼ばれる不安定な日雇い派遣で働く労働者が急増し、アパートの家賃が払えずに「ネットカフエ難民」となって夜を明かしたりする派遣労働者が多い。こうした実態が社会問題化したことも、厚労省が派遣労働者に日雇雇用保険の適用拡大を認めた背景にある。
ところが、肝心の「グッドウィル」はこの雇用保険に加入申請さえせず、厚労省もそれを見て見ぬふりで放置してきた。厚労省当局自体が派遣労働者や派遣会社に積極的に加入を呼びかけた形跡もない。結果的に、「日雇雇用保険」制度があることさえ知らない派遣労働者がいまだに非常に多い。
グッドウィル支店前で「日雇雇用保険」を知らせるビラ配り(渋谷で)
この夜7時から開かれた説明会で、派遣ユニオンの関根秀一郎書記長(グッドウィル・ユニオン書記長と兼務)が、集まった労働者に日雇雇用保険の受給方法を次のようにレクチャーした。
まず直近の2ヶ月間で合計26日以上働いた実績のあることが大前提となる。計算の基礎となる「あぶれた(失業した)ことになる日数」は、労働者の仕事の入れ方によりマチマチだが、グッドウィルの仕事がなくなったことにより、翌月11日間働けなくなった場合、「あぶれ日数」は8日前後になる(13日間働けなくなった場合は10日前後の「あぶれ」)。
給料の水準により保険給付額は4,100円〜7,500円と幅があるが、この金額に「あぶれ日数」をかけたものが、支給される「あぶれ手当」となる。
・多い人は7,500円×8=6万円
・少ない人でも4,100円×8=3万2,800円
働いた日は派遣会社が被保険者手帳に保険印紙を貼り、労働者はそれを持ってハローワーク(公共職業安定所)に行く。ハローワークは上記の計算式で「あぶれ手当」を支給する。
厚労省が派遣労働者にも適用を認めたこの日雇雇用保険だが、ハローワークで適用が認められないケースもある。説明会に参加していた40代の男性は最寄りのハローワークに行ったが、「前例がない」として被保険者手帳をもらえなかったという。
厚労省(左側)と派遣ユニオンの日雇雇用保険適用交渉(07年6月、参院議員会館で)
説明会前日の18日はグッドウィルが事業停止に入った日なので、ユニオンは東京・渋谷のグッドウィル支店前で日雇雇用保険の存在を知らせるビラを派遣労働者に配った。
給料を受け取りに支店に来た30代の男性は、やはり日雇雇用保険があることさえ知らなかった。この日に受け取った給料が、この男性にとってグッドウィルから支給される最後の給料となる。
多くの派遣労働者は日雇雇用保険の存在を知らない。厚労省は大手のグッドウィルの未加入を放置したままだった。受給の要件である被保険者手帳を無知による怠慢で発給しないハローワークもある。派遣労働をめぐる劣悪な環境を意に介さず、セーフティネットも機能させられない、お役所仕事の「寒さ」ぶりを象徴しているようだ。
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