コーディネーターの神田優氏
カワウソ探検
私は、17年前に大阪から高知にIターンして来たのですが、高知を選んだ理由は、1つには、原子力発電所がなかったこと、もう1つには、川や海が美しかったことです。山は、日本国中どこにでもあるのですが、美しい川や海となると、どこにでもあるというわけにはいかないのです。海山川の自然の中で子供たちを育てたかったということがありました。
Iターン後2年目の夏に、子供たちの夏休みの自由研究に「カワウソ探検」を選びました。まず3人で図書館に通いました。そして、ニホンカワウソが、ほとんど何の研究もなされないまま絶滅しかかっているという驚愕すべき事実を知りました。探検の突破口が見つからなくて、息子は、当時、カワウソ調査で有名だった高知大学の町田吉彦教授に手紙を書きました。丁寧な返事が来て、アドバイスとともに、さまざまな具体的情報もいただきました。
私たちは、町田先生からいただいた情報を手にして高知県内の川や海に乗り出していきました。聞き取り調査とともに、行く先々で、網でガサガサやり、魚釣りもしました。カワウソの食べ物があるかどうかを調べるという大義名分でしたが、ホントは魚を捕りたかっただけのことなのです。私たちは、実は、遊び半分だったのですが、私たちの行動はマスコミの格好の素材となり、当時、1時間のTVドキュメント番組にもなりました。
結論を言えば、ニホンカワウソが高知県の沿岸部に生息している可能性はほとんどありません。カワウソは養殖業の天敵なのです。1928(昭和3)年以降狩猟禁止になっているはずなのですが、カワウソは殺され続けていました。また、丈夫過ぎる磯立網は、肺呼吸するカワウソには手強すぎたのです。川からは、今なお目撃情報が流れてきますが、海からの情報は、今はもうほとんどありません。
高知県には、川にも海にもまだまだカワウソの食べ物になる生き物が溢れています。しかし、川でも海でも「かつてはこの10倍はいた」と地元の漁師たちが言うから驚きます。どうやらホントらしいのです。
森にもアプローチを広げている
「島がまるごと博物館」の要約 (NPO法人黒潮実感センター・神田優氏)
1 まるごと博物館
柏島は、高知県の西南端・大月町にある周囲3.9km、面積0.57km
2、人口500人の小さな島です。水はあくまでも澄んでいて、山の上からでも海底の魚が透けて見えるくらいです。
柏島の海は、南からの暖かい黒潮と、瀬戸内海から豊後水道を南下してくる栄養豊富な海水が混じり合うことで、多種多様な海洋生物の宝庫となっています。周辺海域は、全国有数のサンゴの種数を誇り、約1,000種の魚が生息しています。その数は、亜熱帯域に位置する沖縄や小笠原とならび日本でトップクラスです。
柏島は、昔から漁業で栄えた町ですが、昨今、漁価低迷や漁獲量の減少、後継者不足等にあえいでいます。他方で、スキューバダイビング業や磯釣り渡船業、旅館民宿業などは発展し、年間3万人を超える観光客が訪れています。
黒潮実感センターは、柏島の豊かな自然環境だけでなく、島の人たちの暮らしも含めて、「島がまるごと博物館」ととらえ、島を拠点に環境保全、環境教育、調査研究などの情報を発信し、それらを基にして、地域の暮らしが豊かになるお手伝いをしています。
2 「里海」づくりに向けて
海の自然を守るためには、人を排除して、生き物のサンクチュアリとして保護する方法もありますが、柏島は無人島ではなく、昔から人々が生活してきた島です。山に里山があるように、海に里海があってもいいのではないでしょうか。人が海からの恵みを一方的に享受するのではなく、「人もまた海を耕し、育み、守る」これが私たちの提唱する「里海」の考え方です。
黒潮実感センターが目指すところは、人と海が共存できる持続可能な「里海」づくりです。そのために、センターでは下記の3つのとりくみを行っています。
(1)自然を実感するとりくみ
・大学などと共同でとりくむ海洋生物の調査研究や里海セミナーの実施
・子供たちを対象にした環境学習会や体験実感学習の開催
・成人対象のエコツアーの開催
(2)自然を生かして暮らすとりくみ
・住民の物産販売「里海市」への参加協力
・豊かな漁場づくりのお手伝い
(3)自然と暮らしを守るとりくみ
・海洋環境の定期的な調査を実施
・サンゴや藻場の保全活動
・ダイバーや地元住民と行う海中・海浜清掃活動
・自然と暮らしを守るルールづくりのお手伝い
黒潮実感センターの位置づけ
(つづく)