人はなぜだまされるのか――。悪質商法や詐欺に対して「私だけは引っかからない」「僕は大丈夫だ」と考える人が多いのではないだろうか。しかし現実には多くの人がだまされていることは、消費者相談窓口での相談が絶えないことからも明らかだ。
悪質商法への対応が寸劇で紹介された(大阪市中央区で筆者撮影)
ついついだまされてしまう消費者心理と、どうそれに対応するかについて解説する消費者セミナーが15日、大阪市中央区の大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)で開かれた。消費者団体のNPО法人「消費者支援機構関西(KC`s)」が主催して行われた。セミナーの内容から、だまされる場合の危険性と予防についてまとめてみた。
タイトルはずばり「人はなぜだまされるのか――消費者の心理とその防止」。講師は社会心理学などを専門とする静岡県立大学の西田公昭准教授が務めた。西田准教授は「大阪の人は振り込め詐欺などには、かかりにくいと言われていますが、果たしてそうでしょうか。それはだまされないということを保証することではありません」と会場を埋め尽くした関西一円からの参加者に呼びかけた。
実はこうした思い込みこそ危険だという。たとえば娘や息子の声を誰もが正確に聞き分けることができるだろうか。振り込め詐欺やオレオレ詐欺では電話口で泣いていたり、とても困った様子を騙し手が演出する。こういった状況で電話を受けた側は、頭の中に自分の子供が困っている様子を浮かべてしまい「ATM(現金自動預け払い機)の前ではすでに何も見えなくなっている状態になる」という。また、「私は詐欺に狙われるようなタイプではない」との心理が落とし穴となり、冷静な判断ができなくなり、だまされてしまうというのだ。
最近流行の霊能力を前面に出したスピリチュアリティ(超自然的存在とのつながりを信じ、感じることによる思想や実践)や、宗教的な勧誘の巧妙さの解説もあった。たとえば、スピリチュアリティでは霊能者・予言者の言動に注意する必要がある。もし本当に超能力的な力があるならば実際の事件の解決に役立てることもできるはずだ。しかし多くの有名霊能者の場合はそうした現実的な事例には関わりたがらない。そうした矛盾に常に疑問を持つ必要があるという。宗教的な勧誘の場合は病気や病人を抱える本人や家族の心理に巧みにつけいり、高額な商品を売りつける霊感商法などの事例が紹介された。
非科学的な思考の人もだまされやすいという。たとえばサプリメントなど栄養補助食品や、健康食品の場合、「飲んでよくなった」と「飲まなければよくならなかった」という2つの心理は強く働くが、「飲まなくてもよくなった」と「飲んだがよくならなかった」という2つの心理はなかなか思い浮かばず抜け落ちてしまう。こうして科学的に不完全な思考をしてしまうことで、だまされてしまうのだ。
セミナーの様子(同)
SF(催眠)商法などに見られる集団心理を悪用した詐欺的な商法は、だましやすい状況を作り出そうとしている。集団の中で数的に不利な状況に置かれると、「皆がそう思っているんだから」との心理が働き、だまされやすくなる。「皆がだまされるはずがない」という横並び的な思考も冷静な判断力を奪ってしまう。さらに泥棒や詐欺師が紹介される場合に、パターン化した人物像が表現されるが、これもとらわれ過ぎると危ない。イメージで思い浮かべる人物以外に対して警戒感が薄れてしまう危険性がある。
西田准教授は「自分の弱点を知り、よく考えて行動する『知識』、おかしいと思ったことは突っ込みを入れる『練習』をする、すばやく適切な機関や専門家に『相談』するという3つの点に注意して、だまされない心理トレーニングをしてほしい」と、だまされないための要素を説明した。
セミナーを聞くと、いかに人がだまされることについて無警戒な状態にいるのかが分かる。悪質商法の手口に詳しい人でさえ、上記のような条件が重なってしまえば、気がついたら、だまされていたということもよくあるという。会場には弁護士や消費生活専門相談員などの消費者問題の専門家も多数参加していたが、改めて消費者心理の危うさについて確認した様子だった。
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