当日の資料から
(はじめに)
被ばくは、たとえ低線量であっても発ガンなどの悪影響が考えられ、患者への検査もできるだけ少なくすることが望ましい。ところが現在、日本では、X線検査やマンモグラフィーなどに放射線を用いていることを知らない人も少なくない。医師が必要性を認めないのにも関わらず、軽微なケガでも子にX線検査を受けさせようとする親も珍しくはない。放射線は低線量でも、繰り返し照査されることによってリスクが高まる。
がん検診や健康診断が盛んなこともあって、日本は世界一の医療被ばく大国になってしまっている。医療被ばくの増加は、国連科学委員会などが警告を発している。高木学校は12月1日、
第11回市民講座「医療被ばくをへらすために〜妊婦と子どもを中心に〜」を開催、日本の医療の現状の問題点などに警鐘を鳴らした(復習に手間どり、報告が遅くなってしまい恐縮です)。
医学博士・崎山比早子さん(高木学校):放射線の人体への悪影響を詳しく解説した
1 検査過剰ではないのか
山田真さん(小児科医)は、75才以上の後期高齢者を事実上、医療制度の枠外に置こうとしていることや、生活習慣病という概念、予防の事実上の強制など、人の病を自己責任に帰そうとする現在の日本の医療状況(概況)を批判した。公害などが根絶したわけでもない日本で、やたらに病を個人の不摂生のせいにしようとする動きをたしなめた。
しかしその上で、「日本の医療は分野ごとに、過剰であったり不足であったり、極端な差が生じてしまっている」と指摘した。たとえば、入院患者の相部屋のプライバシーや、患者1人あたりの床面積、産婦人科医の数などは深刻に不足してしまっている。リハビリ医療や労働災害については、診療や治療の打ち切りすら行われている。また、健康保険証を持たなかったり持てなかったりする人(外国籍の人や貧困な人)の医療へのアクセス難もひどい。
ところが、健康保険をもっている人には、いまだに日本では濃厚で過剰な医療が行われている。かつて風邪の子どもには、注射も打たれ、たくさんの薬が出され、のどにはルゴールが塗られた。そのような医療のあり方が疑問視され、風邪の子には注射もルゴールもやめるようになったが、親の抵抗があるという。
山田さんは「ざっといって、一般の外来診療では3分の2のクスリが不要なのでは」と指摘した上で、「しかし、投薬減には患者さんの抵抗が激しい」と問題点をあげた。健康保険の適用される患者にしてみれば、廉価な受益者負担でたくさんの薬がもらえるような医療は、なかなかやめることができないのだ。そして、過剰な医療の弊害は見えにくく、不足した医療による事故などは見えやすい。
たとえば、レントゲン撮影を省略したことによる肺炎の見落としは、事故につながって見えやすいのだが、レントゲン撮影過剰の弊害は見えにくい。そのこともあって、医療事故を避けるため、医療現場では防衛的に検査を増やすことになってしまう。若い医師は検査を頼りすぎ、問診や自らの五感に不安を感じてしまっている。
肺炎でも軽症な、マイコプラズマ肺炎は、治療しなくても治ることがある。せきだけ、あるいは微熱がだらだらと続く。しかもレントゲンで見つけやすい。ところが治るまでが長いものだから、結局、3回も4回もレントゲン撮影をすることになる。深刻な細菌性肺炎は、なるのも急、なおるのも急で、挙動が違う。マイコプラズマ肺炎については、必ずしもレントゲン撮影はいらないと指摘した論文は、20年くらい前に出されているが評価されていない。
子どもへのCTスキャンをめぐっては、アメリカで論争がおこっており、リスクが効用を確実に上回るのではないか、という方が有力になってきている。ところが救急医の現場には徹底していない。複合的な被害も過小評価されているのではないか、という指摘もあいついでいる。現在、全米では子どものCTスキャン検査を嫌がる親も多くなっているようだ。
山田医師は、ノーマライゼーション的な立場などから、選択的中絶や出生前診断には反対だ。先天的異常の恐れがあっても、子どもは生まれて来るべきだと考えている。しかし、妊婦・胎児へのリスクを考えれば、日本で行われているような成人女性の集団検診は行われるべきではない、という。妊娠可能な女性のX線検査などは、最終月経の開始日から10日以内でなければ危険なのだ。ところがこの「10日間ルール」さえ日本では知る人が少ない。
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