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捕鯨問題・鯨肉はさばけているのか(2・終)官製の調査捕鯨が民間の小型捕鯨業を圧迫している

佐久間淳子2008/03/07
官・産・学・政は連携し、並々ならぬ努力で調査捕鯨の鯨肉を売り出し、民間の小型捕鯨業者は困窮している。統計を分析して見えてくるのは、官製の調査捕鯨が民間の小型捕鯨業を圧迫している現状だ。
日本 食 NA_テーマ2
前回記事:捕鯨問題・鯨肉はさばけているのか(1)

目次
1.日本捕鯨協会の指摘で判明した、沿岸捕鯨業者・イルカ業者の困窮
2.調査捕鯨の規模拡大と、沿岸小型捕鯨業者の困窮


2.調査捕鯨の規模拡大と、沿岸小型捕鯨業者の困窮

 次にご覧いただくのは、鯨肉の値段のグラフである。

 調査捕鯨によってもたらされる副産物(鯨肉)のうち、収量の多い赤肉の1kgあたりの卸価格を折れ線グラフで示したものである。卸価格は鯨研が決め、販売を委託された共同船舶が実務を担っている。これを見ると、調査鯨肉の生産量が増えるに従って、価格は引き下げられてきた。鯨種による価格差も、現在ではほとんどなくなっている。

 そこに、沿岸小型業者が捕獲するツチクジラの、1頭あたりの売り上げを重ねた。日本小型捕鯨協会がWebSiteで公開している業績のデータから、1頭あたりの売り上げが読み取れる水揚げ地・年だけを重ねたのだが、調査鯨肉との差が鮮やかに現れた。
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 調査鯨肉(赤肉)がkgあたり4000円から2000円弱に価格引き下げをした間に、ツチクジラの値段(1頭)はというと、函館の場合は900万円台から300万円台へと、7年間で3分の1近くに下落した。網走でも、1000万円台から500万円台に落ち込んだ。江戸時代からツチクジラを捕ってきた勝山を近くに控え、長年ツチクジラを揚げてきた和田(南房総)はさすがにある程度持ちこたえているようだが、全体としては、下落ははっきりしている。

 調査捕鯨で主として捕獲されているヒゲクジラ類と、現在沿岸小型捕鯨業者が商業的な捕獲を許されているハクジラ類とでは食味があきらかに違うとされており、調査鯨肉の供給量が少なかった時代にはそれなりに値の付いたツチクジラも、ここへ来て価値が下がったということだろう。

 調査鯨肉は“増産”に合わせて価格引き下げを進め、“薄利多売”に邁進している。鯨研の収支報告には常に安定した「副産物販売収入」が計上されている。しかし沿岸小型捕鯨業者に割り当てられているツチクジラの捕獲枠は水産庁遠洋課捕鯨班が決めており、調査捕鯨が拡大していく中で、捕獲頭数の増加はほんの数頭でしかない。そこへもってきて1頭あたりの売り上げが落ち込んでいるのだから、収益が上がるはずがない。公表データは2005年までだが、ここに燃料費の高騰が絡んでくることになる。

 最後にご覧いただくのは、沿岸小型捕鯨業者の損益を示したグラフだ。1987年に日本政府がIWCによるモラトリアムの実施を受け入れたことでミンククジラの捕獲ができなくなり赤字となるが、その後、ヒゲクジラの肉の僅少化にあわせるように価格が上がり、いったんは持ち直した。しかし、2001年からふたたび経営が赤字に転落している。時期的には、2000年から北西太平洋での調査捕獲が規模を大幅に拡大した時と一致している。
捕鯨問題・鯨肉はさばけているのか(2・終)官製の調査捕鯨が民間の小型捕鯨業を圧迫している |
 官製の調査捕鯨が民間の小型捕鯨業を圧迫しているとみていいだろう。共同船舶の1人勝ちを、日本政府が後押ししている。ツチクジラの捕獲枠を増やしたり、2002年に沿岸域の調査捕獲を始め、沿岸小型捕鯨業者を船ごと雇用したのは、こういった事情による小型捕鯨業者の不満に応えるものなのかもしれない。

 ただし、根本解決を目指しているとは思えないのは、以前「やってる「ふり」だけ?の沿岸小型捕鯨再開提案〜国際捕鯨委員会・2007総会ウォッチ(5)」で紹介したとおりだ。

 いるか漁業も、小型捕鯨業者の現状から類推すれば思わしくないとみていいだろう。そもそもイルカが寄りついてくれないと、追い込み漁はできない。また太地のように、一部を生け捕りにして水族館に販売し始めたところもある。肉にするよりも高く売れ、効率的だからだ。

 日本捕鯨協会は、「順調に売れている」「在庫は減っている」と、配布文書のなかで繰り返し述べている。ただし同協会が指す「鯨肉」は調査鯨肉なのだ。すでに紹介したように官・産・学・政の努力量が並々ならぬものなのだから、それはある程度あたりまえだろう。

 そこで語られていないのは、沿岸小型捕鯨業者やいるか漁師の捕っているツチクジラやゴンドウ、イルカの肉売れ行きだ。「調査鯨肉が好調に捌けている」その裏で、イルカや小型鯨類やイルカの肉がどうなっているかについては、まったく言及していない。

 なお、日本捕鯨協会が配布文書の中で、「読者をミスリードするタイトル群」として朝日新聞記事の「供給増えたが流通広がらず」「在庫6000tまで増加」「鯨肉 さばけぬ悩み」の3つを挙げている。確かに1年半前の在庫量を見出しに持ってくるのはやや強引だとは思う。ただ、その他の見出しは鯨食ラボの苦戦を紹介する見出しととらえれば、記事に書いてあることを見出しにしたまで、ともいえる。

 なにしろ同協会がここに含めなかった唯一の見出しが「国策販売会社、赤字続き」なのだ。これまで鯨食ラボを紹介する記事では、「水産庁が後押し」という表現はあったものの「国策販売会社」とずばり書いたのはこの記事が始めてではないだろうか。その見出しには、ミスリードの要素がないと、協会が太鼓判を押したわけだ。その国策会社が鳴り物入りで登場したものの苦戦しており赤字続きであることを報じた記事なのだから、上記の見出しはミスリードとはいいきれないだろう。

 鯨食ラボの苦戦については同協会は、「鯨肉普及PRでは成果を挙げております」と評価している。「販売会社としてはダメだがPR会社としてはGood!」と誉められる販売会社も忸怩たるものがあるだろう。

 日本捕鯨協会は、共同船舶(株)の社内に事務所を置く任意団体だ。主力スタッフは同社社員である。同社は鯨食ラボにも2名の社員を出向させているし、鯨食ラボは現在、同社と同じ建屋に入っている。火災を起こした日新丸は同社の所有船であり、同僚がこの火事で命を奪われている。

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-[33079] 知りませんでした。  河野剛大 (2008/03/08 09:09)


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