目 次
(P.1)小泉政権「骨太の方針」から出た社会保障費の削減
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「50年の経験でも異例」だった裁判長の発言
「原告がお述べになったことを踏まえ、私どもも対応してゆきます」。――生活保護に上乗せされていた「老齢加算」を廃止するのは、憲法25条で保障された「生存権」を侵すものとして、高齢の生活保護受給者が社会福祉事務所長を相手取って東京地裁に「廃止の取り消し」を求めた裁判は24日、大門匡裁判長の異例の発言で結審した。中立を求められる裁判所の原告寄りとも取れる「意思表示」で、法廷に軽いどよめきが走った。
◆小泉政権「骨太の方針」から社会保障費削りが出てきた
70歳以上の生活保護受給者に月々1万7,000円を上乗せする「老齢加算制度」は、1960年から42年間も続いてきた。ところが「小泉改革」を受けて、厚生労働省は2003年に制度の廃止を決め、06年には全廃してしまったのだ。
入廷する原告(東京地裁前で、筆者撮影)
そもそも高齢の生活保護受給者は、この上乗せにより辛うじて生活を維持していたのだった。老齢加算を打ち切られると東京都で1人暮らしの場合、支給額は月々7万5,000円となる。この中から家賃、食費、光熱費、水道代などを捻出しなければならない。
これでは命綱を切られたに等しい。東京の12人をはじめ、京都、秋田、広島など全国7都市で約100人の高齢受給者が原告となる集団訴訟となった。「平成の朝日訴訟」とも呼ばれるのは、1957年に朝日茂さんが起こした生存権裁判を受け継ぐもの、と意識されているからだ。
この日、東京地裁で行われた最終弁論では、原告1人と弁護士が陳述した。新宿区に住む横井邦雄さん(79)は次のように述べた。
「老齢加算があった時も節約に節約を重ねてきた。この老齢加算が廃止され、生活してゆくには食費を削るしかない。食費を削ることは自分の命を縮めていくものと実感している。都営住宅で孤独死が増えているのは、(生活保護費が削られ)外出できなくなったからです。私もそうなるのではないかと恐怖を感じている」
続いて渕上隆弁護士が、これまで準備書面で述べてきたことを念押しした。「『生活保護法第56条』は、被保護者は正当な理由がなければ、すでに決定された保護を不利益に変更されることがない、としている。老齢加算の廃止は、この56条に違反する」
原告の高齢化は進む一方だ。
最後に、生活保護の歴史的裁判となっている「朝日訴訟(※)」で原告代理人を務め、今回の裁判でも法廷に立ってきた新井章弁護士が陳述した。憲法25条の持つ意味と、それを判断する裁判官の重い役割を問うものだった。
――「そもそも10万円に満たない生活保護費から1万7,000円の『老齢加算』を奪うむごたらしい措置は、社会保障費を削る小泉さんの『骨太の方針』の中から出てきた。財政上の都合で最初に削減ありきだった。朝日訴訟の1審判決は『憲法25条が保障する最低限度の生活を財政の都合で値切ることは許されない。健康で文化的な生活の保障が財政を仕切らなくてはならない』としたもので、歴史的な判決だった」。新井弁護士は今回の裁判の原点を敢えて裁判長に示すように語った。
前回の弁論で証人となった原告らは「同じ食品を何度も温め直して食べている」「新しい服が買えない」「風呂は無料の老人施設で入る」などと証言した。どの原告にも共通していたのは、親戚や友人の葬式に行く交通費にも困っていることだった。
新井弁護士はこうした原告の生活実態を受けて続けた。――「原告の方々のつましい生活は『これが同じ日本人か』と思うような生活だ。多くのこのような方々に苦痛を強いる行政が、許されてはならない。戦後の裁判は戦前と違い、憲法に踏み込んだ判決を言い渡すことができる。裁判官はステーツマンだ。大門裁判長もステーツマンとしての気概を持った判断を示して頂きたい」。新井弁護士は一度もメモを見ることなく、約15分間、淡々と語った。
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