加藤三郎さんの指摘
シンポジウム
「危険な気候変動を防止するために…… 〜『気候保護法』の実現に向けて〜」で、加藤三郎さん(
環境文明21・共同代表)は、「日本の対策が遅れた結果、近い将来、3,800〜6,300億円ものツケ(温室効果ガス対策費用)が回ってくる可能性が大きい。本来、温暖化対策は前倒しし、他国の排出権を買うのではなく、国内の技術革新などに投資すべきだ」などと指摘した。
植田和弘さん(京都大学教授)は、「2007年に日本政府が公言した『美しい星50』は、温室効果ガスの排出量を2050年までに全世界で半減することをうたった。途上国の排出量が増えないとすれば、先進国は排出量をゼロにしなければならない。文明史転換が求められていることになる」と語り、「消極的な『対策』ではなく、積極的な『環境経済戦略』が求められている」という。経済や社会の構造を変える戦略を立てないと、気候変動(地球温暖化)の対策は厳しいのだ。
対策の1つに、炭素に価格をつける方法がある。今のように「炭素は出すだけ出してもタダ」な状態では、企業などには排出削減に向けて努力するインセンティブ(誘因)が働かない。価格をつける方法の1つが環境税(炭素税)だ。税制は、削減量が不確定などのデメリットも抱えているが、「排出量を削減しなければならない」というメッセージ性は企業などに対して強烈なものとなる。
もう1つの方法が排出権取引で、無料だった排出権が富になってしまうなどのデメリットはあるものの、欧米で現実化しつつある。2005年1月1日から始まった「EU−ETS」(欧州連合温室効果ガス排出枠取引)は、第1期(〜2007年)には問題点も抱えていたものの、第3期(2013年〜)から大きな改善が予定されている。低炭素社会を実現し、経済の持続可能性を確保するために、排出権取引は重要な手段となりうるのだ。
和田重太・弁護士(日本環境法律家連盟)は、米・連邦議会での「リーバーマン・ウォーナー法案」の、審議・修正状況を紹介した
末吉竹二郎さん(国連環境計画金融イニシアチブ特別顧問)は、温暖化対策をめぐる金融市場の世界の動向を紹介した。地球温暖化、貧困の拡大、安全な水問題、感染症の拡大、生物多様性といった地球的課題の深刻化は現在、金融市場や世界経済にとって大きなリスクとして顕在化している。と同時にさまざまな課題は、欧米では新しいビジネスチャンスとも見なされるようになった。
環境がダメになったら、ビジネスや市場の持続可能性も失われる。このため、米国では年金基金などの機関投資家が投資判断の際、環境、社会的責任、ガヴァナンスを重視する責任投資原則(PRI)が反映されるようになった。現在では、シティバンクやモルガン・スタンレーなど(の金融資本グループ)が、温室効果ガスの排出量の多い石炭火力発電への融資を厳しくするなどの動きになってきている。
欧米の気候変動への取り組みと比べて、日本経済や企業の取り組みは大きく後れをとってしまっており、日本経済界は環境税へも排出権取引へも頑迷な反対を続けている。末吉さんは「米国では、NGOのキャンペーンに銀行などが応えた。日本では市民の働きかけも弱いのでは。日本の市民も年金の運用などにはもっと関心を払うべき」などと指摘、植田さんも「今の産業を守れても、将来の産業の芽をつぶしているのでは」と語った。
このほか、12日のシンポジウムでは、英国で「気候変動法」を成立させた
NGO・FoEの
「BigAskキャンペーン」が紹介され、
気候ネットワークは、英「気候変動法」や、米国「リーバーマン・ウォーナー法案」などを参考にした、「気候変動保護法案」の素案を明らかにした。気候変動保護法案は、今後の気温上昇を2℃以内に抑えるため、温室効果ガスの削減目標などを定める。気候ネットワークは今後、国会への働きかけなどを強めていく予定だ。
気候ネットワークの指摘と提案
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