「揺れの想定5倍に」「東電が耐震補強へ」「国内最大2280ガル」……この発表に対するマスコミ各社の見出し。またもだ。実に余計な情報をくっつけて、目くらましを謀る。えっ、浜岡原発の2倍以上?!そんな補強できるんだ!……と思わせてしまう。
事実の報道を、と言われる。だがこれらはいまだ事実ではない。単に想定して見せただけであり、目標に過ぎない。まんまと東電の宣伝の片棒を担がされてしまったのだ。
◆5月22日、中越沖地震による世界初の原発被災事故を審議している経産省原子力安全・保安院の委員会で東京電力の長い報告があった。地震を起こしたのはどの断層か。いったいどれだけの揺れに襲われたのか。なぜそのように大きな揺れになったのか。なぜそれが想定できなかったのか。
公表するべきは、まずそういうことだったはずだ。世論はその発表を首を長くして待っていたのである。昨年7月16日の地震以来、実に10ヶ月も待った。
しかし当日、東電の報告はそこにとどまらなかった。今回地質調査をやり直した。揺れの想定をやり直した。それは、建設時の想定450ガルの約5倍、2280ガルとなった。したがって補強しますと。そこまで言った。
補強するということは、運転再開するということが前提ではないか。口には出してこそ言わなかったが、保安院の前でそこまで意思表示したことになる。
◆原発に限らないが、政府のやってきたことはいつもこうだ。原発の事故・不祥事然り。やっと露見しても、「悪いことだ。しかし安全性には影響がない」という余計な評価を必ずつけた上で発表するのだ。対策が手当てできるようになってからようやく表に出す。それまでは何のかんのと言って引き延ばす。
今回もまさにそうだった。むしろ規制する側であるはずの保安院の方から指導して、巧みに焦点をはずすことに成功したのではないか。なぜなら審議会で保安院は、東電が用意したそのすべての報告を全うする時間を保証し、質疑・審議の時間をほとんど設けなかった。
誰にも疑問をさしはさむ余地を与えずに、分厚い既成事実を机上に置いて審議会は終わってしまった。もちろんこれからおそらく延々と審議を重ねていくのだろう。しかし、次回はいったい何日だ? いつもながら忌々しい。
東京電力・柏崎刈羽原発
待たれていた数値――それは1699ガル
これが、現在もっとも重要な数値、柏崎刈羽原発がどんな揺れに襲われたかを示すものだ。そしてこれと比較すべきは設計時の想定値(基準地震動)であって、それは450ガルであった。
1699÷450=3.776
東電の設計は約4倍も外れていたことを、ついに白状したのである。
したがって22日の報道は「設計値450ガルの4倍近い揺れ」「1699ガルが直撃」「1.7Gの恐怖」などとすべきであった。
これは穏やかではない。なぜなら設計時に想定された揺れの大きさというのは、こと原発に関する限り限界値であって、それ以上の大きな揺れに襲われることはまずあり得ない、と国や電力は主張してきたからだ。なかなか発表したがらなかった理由がわかろう。
当初、設計値を超えたと大きく報道されたのは、原発の建物内の揺れであって、680ガル(観測値)対273ガル(設計値)、すなわち約2.5倍という数値であった。これでも相当なショックであったに違いない。
ことは柏崎刈羽原発だけの問題ではない。設計時の揺れの想定は、原発のサイトごとに異なる。全国でもっとも大きい想定がされたのは中部電力浜岡原発で600ガルであった。それをもはるかに凌ぐ1699ガル。もっとも小さい想定では180ガル。10倍近い!
だからこそ必死で分析したのであろう。今回ようやく公表された解析結果を前提に語るとすれば、柏崎刈羽原発は1699ガルの揺れに襲われ、その結果1号炉の建屋基礎版で680ガルが観測された、ということになる。
これはまたずいぶんと減衰したものだ。東電の解説によると「建物が地盤に埋め込まれている影響により」減衰したのだそうだ。そして埋め込みの深さ45mとしてある。
図1 地震動が大きくなった要因の概念図
柏崎刈羽原子力発電所における平成19年新潟県中越沖地震時に取得された地震観測データの分析及び基準地震動に係る報告書(概要)より
◆そうしてこれらの原因を探り、図1のような結論を導き出した。要因1・2・3と3段階で増幅していったものとした。その後上部表層地盤内で減衰した、というストーリーだ。
ここでは他の原発にできるだけ影響を及ぼさないように、精一杯この地に特有の要因を求めようと試みている。しかしその要因の1つ1つは、決してこの地に限定できず、同類の地質構造を持つ地点はいくらもありそうだ。
柏崎刈羽原発ではこの間、必死で地質構造の調査が重ねられてきた。陸域・海域とも対象にされ、国の審議会にも再三提示されてきた。他の原発サイトではまだそこまでやられてはいない。建物の埋め込みも10m前後だ。おそらく45mなどという原発の方が少ないだろう。
推定された地震動は号機ごとにさまざま
ところで、解析結果によれば1699ガルの揺れが減衰して建屋内では680ガルになったということになるが、東電は実は観測値680ガルから1699ガルを逆算したのである。同様に、2〜7号機においても逆算して、それぞれの原子炉建屋を襲った揺れの大きさをはじき出した。
その結果が図2にまとめてある。上段が建屋内の観測値、下段が逆算による地下の揺れの値だ。ずいぶんと大きくばらついているが、そもそも解析のもとになる観測値がばらついているのだ。
しかし設計の時点では全部一律に450ガルとされたのである。
同一の地震に対して、隣り合う地点で、隣り合う原発でこれだけのバラエティ。振動・波動というのはその伝わる媒質によって、また干渉によってさまざまに変化する。さあ他の原発はどうか。
まずは東電の解析が正しいのか、その検証がしっかりなされなければならない。
(つづく)
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