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佐藤優 こうしてえん罪・国策捜査はつくられる〜えん罪を語ろうin八王子

ひらのゆきこ2008/05/28
冤罪を語るシンポジウムに参加し、344日間も拘留されたJR浦和電車区事件の被告や「国家の罠」の著者、佐藤優さんの講演を聞いて、国はもっと国民のために税金を使ってほしい、との感を強くしました。
日本 裁判 NA_テーマ2
佐藤優 こうしてえん罪・国策捜査はつくられる〜えん罪を語ろうin八王子| 講師の佐藤優さん。
講師の佐藤優さん。
 5月23日(金)午後6時30分より、いちょうホール(東京・八王子)で、えん罪を語ろうin八王子実行委員会主催による「えん罪を語ろうin八王子 〜なぜ、私が犯人!?」が開催されました。

 第一部は、冤罪を訴えているJR浦和電車区事件の被告人の方々のお話と、いわゆる国策捜査を世に知らしめた「国家の罠」の著者の佐藤優さんの講演がありました。第二部は、「人権と民主主義を大切にする社会を展望する」をテーマにシンポジウムが開催されました。

JR浦和電車区事件の被告人の方々の訴え

 02年11月、浦和電車区内でJR東労組組合員7名が、元組合員に対し、組合脱退・退職を強要したとして「強要」容疑で逮捕され、344日間長期拘留された「JR浦和電車区事件」は、管轄外の警視庁公安部が捜査・家宅捜索を行ったこと、被害届が出される2ヶ月前に捜査が着手されていたこと、家宅捜索64箇所、押収品1,094点などから、組合つぶしを狙った弾圧事件とされています。

 一審で有罪判決を受け、現在二審で係争中のJR浦和電車区事件の被告人のSさんは、事件について「警視庁公安2課が事件を作って逮捕した」と述べ、「本当に悔しい」との思いを訴えました。強要罪で344日間も拘留されたことについても、「本当に悔しい」との思いを重ねて吐露しました。

 Sさんは、02年11月1日、公安2課が自宅にきて、わけがわからないまま警視庁に連れて行かれた、と述べ、「一審で有罪判決を受けた。(強要は)一切していない」と明言しました。2審での勝利に向け、「頑張る」との決意と表明しながら、冤罪事件を認めるとどんどん冤罪が生まれる、と警鐘を鳴らしました。

 Oさんも、Sさんと同じように、02年11月1日、警視庁公安2課によって逮捕されました。Oさんは、逮捕されるまで、警察官は正義の味方だと思っていたそうです。しかし、今回の事件でその考えは一変しました。

 公安2課による取調べは、1日10時間、22日間に及び、事実関係については言及せず、ただ「お前は革マルか」と聞かれ続けたそうです。「争っていると、10年、20年出られないぞ」と脅され、当時2歳の子どもがいたOさんは、20年出られないと子どもが22歳になってしまう、いやだな、と思ったが、自分はなにもやっていないので認めることはできない。気持ちが揺れる中、取調べ中に気を失い、気がついたときは東京の警察病院にいたといいます。
 
 そのときOさんの右手には手錠がかけられ、左手には点滴が打たれていたそうです。翌日強制退院させられ、すぐに取調べが開始され、自白調書にサインをしてしまいました。しかし、弁護団の先生(松川事件の弁護人)に、「真実を知っているのは君自身だ」と言われ、20年かかる腹が決まったと、Oさんは語りました。

 60回の公判が開かれ、自白長調書については徹底的に警察官と争い、自白調書の正当性がないと判決では認定されたものの、有罪であったことについて、Oさんは「悔しい」との思いを吐露しました。判決は「懲役1年、執行猶予3年」。控訴については、最初、家族は反対したそうですが、自分は(強要を)していないので、認めるわけにはいかないと話し、家族の理解を得て控訴をしたと語りました。

 Oさんはこの事件が「広がらないことがもどかしい」と述べ、なぜ、広がらないのか、それは自分自身に問題があることに気づいたそうです。「町田痴漢冤罪事件について知らなかった。袴田事件についても新聞で読んで知っている程度だった。国策捜査についても、佐藤優さんの『国家の罠』を読むまで知らなかった」と述べ、「私自身が変わらなければこの事件は広がらない」と語りました。

 Oさんは、「国策捜査は絶対に許せない。冤罪を認めたら、私たちの子や孫の代まで影響を及ぼす大きな問題。7人の問題でなく、自分の問題としてとらえないと冤罪はなくならない」と述べ、他人事と思わず、1人ひとりが自分の問題としてとらえ、事件に関心を持つことの必要性を強く訴えました。

佐藤優さん「こうしてえん罪・国策捜査はつくられる」

 佐藤さんは、「刑事被告人の佐藤です」と会場の笑いをとりながら、鈴木宗男さんがらみで(自分が)捕まったことなど、事件の経緯とその背景について話しました。

 2002年5月、当時、外務省主任分析官だった佐藤さんは、イスラエルの大学教授夫妻を日本に招待した費用と、イスラエルで開いた学会に代表団を派遣した費用を、外務省関連団体の支援委員会から違法に引き出したとして背任容疑で逮捕されました。さらに、国後島発電機供用事業の入札で三井物産に違法な便宜をはかり、支援委員会の業務を妨害したとして偽計業務妨害でも再逮捕されました。佐藤さんは一貫して無罪を主張。一審で有罪(懲役2年6ヶ月、執行猶予4年)、二審で控訴棄却、現在最高裁に上告中です。

 佐藤さんは、鈴木宗男さんの事件については、権力内部の抗争、と述べ、取調べの検事に、「運が悪かったね。これは国策捜査だ。鈴木宗男とつなげる事件」であると言われたことを明らかにしました。検事は、釣り針で狙った相手は100%有罪にする自信がある、これでやってきた、こっちは権力がついているからね、といった趣旨の発言をしたそうです。

 また、裁判をやると年数もかかるしカネもかかる、とも言われたと語りました。それは、事実で、弁護士費用など、2,000万円ちょっと使っていると語りました。しかし、鈴木宗男さんに三井物産からお金が渡ったという事実はなく、検察の贈収賄の見立ては間違っていたと述べ、それでも(自分が)起訴されたのは、検察の面子によるものであるとの認識を示しました。検察は、あなたを起訴しないと申し訳ないと言い、否認調書をつくって起訴したそうです。

 JR浦和電車区事件について、佐藤さんは「タチの悪い、特別な事件」との認識を示しました。この事件のことを知ったとき、直感的におかしい、と思ったそうです。「強要罪という非常に軽い罪で、どうして344日も監獄に勾留になるんだ。メチャクチャな話だ」と思ったと語りました。

 Oさんの話を聞き、取調べで気を失い、気がついたらアクリルの窓、右手に手錠、左手に点滴・・・。その話を聞いて佐藤さんは腸から血が逆流するようだったと語りました。こういうことをやるのは、ソ連の末期と同じであり、非常に弱い国家であると思ったそうです。佐藤さんはこの事件について勉強し、いろんなものが見えてきたそうです。背景にJR東労組をつぶしたいというシナリオがあり、国策捜査であるとの見方を示しました。

 佐藤さんは、また、「参議院のドン」と言われた村上正邦さんについても言及しました。村上さんは、(お金をもらって)請託を受け、国会で「ものつくり大学」について質問をしたとして、逮捕されました。先般、最高裁で刑が確定し、収監されました。しかし、村上さんにお金を渡したとされるKSDの古関氏は、二審の証人尋問で、嘘の供述をしたと法廷で証言したそうです。古関氏はKSD事件で取調べを受けており、高齢であったことなどから、検察に脅され、検察のつくった嘘の供述書にサインをしたことを明らかにしたそうです。

 村上さんの取調官は、「おい、村上。いままでの村上じゃねえ、俺の前で嘘は通用しないからな」とか、「地獄の閻魔さんに代わって俺が舌を抜いてやる」などといった、かりにも国会議員であった人に対し、信じがたいような口調で取り調べを行ったといいます。村上さんは死を考えたこともあったそうですが、このようなことを許してはいけない、この経験を話さないといけない、と思い、事実を伝える決意をしたそうです。村上さんは右翼と目されていたそうですが、右であれ、左であれ、権力を持っている官僚が「こいつだ」といえばやられる、と佐藤さんは語りました。

 なぜJR東労組が狙われたのか。7人は鉄道マンで、電車の運転が好きな善良な市民でした。佐藤さんは、官僚が考えるきれいな社会について言及しながら、自らも官僚をしていたので、官僚の考えが皮膚感覚でわかる、と言います。佐藤さんは「JR総連は革マルではない」と述べ、「JR総連、東労組は革マルというのは眉唾もの。虚心坦懐に聞いていれば人権基準としてもおかしい。おかしいことに気づかないのはなぜか。そのことに思考を進める必要がある」と指摘しました。

 また、西岡研介氏には賛同しない、と述べ、その取材手法に疑問を呈しました。西岡氏は、「週刊現代」に、JR総連・東労組と革マル派を関連付けるような内容の記事を連載しており、JR総連・東労組に訴えられています。佐藤さんのお話によると、鈴木宗男さんとの関連で週刊誌などに書かれるようになったのは、週刊文春の「鈴木宗男の運転手をする男」という記事が最初で、その記事を書いたのがこの西岡氏であったそうです。そのことは本人から聞いたそうですが、情報源が公安であることも教えてくれたといいます。

 佐藤さんは、「私は運転免許を持っていません。免許を持っていない人間がどうやって車を運転するんですか?」と苦笑しながら、本人に取材すればすぐにそれが嘘であることがわかるのになぜしなかったのか、それは、否定されると記事を書くことができないからだと述べ、その取材手法には大きな問題があることを指摘しました。佐藤さんによると、週刊新潮の記事はもっと巧みで、佐藤さんについて誰かがなにかと言っているといった論調で、抗弁が難しい書き方をしているそうです。

 佐藤さんは、このようなジャーナリズムのあり方は問題であるとし、放置していてはよくない、と警鐘を鳴らしながら、「西岡氏が私や鈴木宗男さんに対してやったことはわかる。国家権力を持っている人をスキャンダルで暴くのはかまわないが、権力をなにも持っていない人をスキャンダルで暴くのは問題がある」と述べ、国民のスキャンダルを持っている官僚(警察、検察、税務署)が特定の人をやっつけるために情報を流し、マスコミが官僚と一緒になって民間の人をやっつけるようなやり方は大きな問題がある、と強く訴えました。

 JR東労組は権力がないとはいえないが、国家権力に比べると圧倒的に弱い、とした上で、この事件で7人のうち6人が解雇されたことに言及しながら、官僚は、国家に頭を下げて許してくださいと言わなければ安心できない、と述べ、ODAなどで日本に対して擦り寄ってくる国は可愛いが、批判的な発言をする国は可愛くないと(官僚が)思っているように、官僚の言うとおりになる国(人間)が可愛いという本質を持っていると語りました。

 佐藤さんの事件についても、ちゃんと事務次官の決裁を受けており、通常の手続きを踏んでいることは、佐藤さんの当時の上司の東郷氏も法廷で証言しています。外務省は、決裁書はなくなったと言っているそうですが、「(事務次官の決済印がある書類が)なくなっていることはありえない」と佐藤さんは明言しました。

 今回の事件について、佐藤さんは、JR総連やJR東労組が「俺たちは革マルじゃない」と言っても警察や検察にそれを理解させることは困難であるとの認識を示しながら、司法も類似の行動をとることから、「この裁判は非常に難しい」との見方を示しました。その上で、「我々の法廷はあの裁判所だけではない」とも述べ、次のように訴えました。

 「344(みよし)会(7人の被告人の会)は嘘を言っていない、私も嘘を言っていない。344日間、独房に閉じ込め、職を奪った。動物でも怖い相手と一緒におしっこはしない。人間も一緒。(元組合員は)トイレに入ったら怖い人がいたと言っているが、怖い人がいたらトイレに入って一緒に並んでおしっこをする人間はない。司法も国家官僚。税金で飯を食っている。その人たちが見ているものが市民と違う。そういう人たちは、こういう集会が大嫌い。封じ込めたいと思っている」

 また、344会のこの事件については、検察が求刑した量刑の半分の判決であることから、有罪でも実質は勝っている、との見解を示しました。

 また、光市事件の安田好弘弁護士について、安田弁護士が、少年が書いた手紙(テレビなどで公開された手紙。反省がないとされた)を事前に周囲は読んでいるはずなのに、なぜ指導をしなかったのか、そういう社会があのような事件を起こした少年を生み出したと語っていると述べ、安田さんのような人を国家は嫌い、早く弁護士バッジを外して追い出したいと思っている、との見方を示しました。

 佐藤さんは、もし鈴木宗男さんと自分が事件に巻き込まれなければ北方領土の2島は返還されていた可能性があることや、ほかの2島についても具体的な交渉が進んでいた可能性があること、それが実現しなかったのは、北方領土が返還された場合のお金の問題や、日本のエネルギー資源は全部アメリカの影響下にあり、ロシアとの関係が良好になることを好まない関係者(アメリカベッタリの人たち)らの意向などがあることに言及しました。佐藤さんは、「鈴木さんや私はなにかの虎の尾を踏んだ」と述べ、安田さんや村上さんも「なにかの虎の尾を踏んだ」と語りました。

 村上さんは、資源のない日本で唯一の資源は人間だとの考えから、職人を育てるためにものつくり大学をつくることを自らの公約に掲げていました。中小企業の発展にも力を注ぎ、極端な金持ちはよくない、子どもは同じスタート地点に立つチャンスを与えなければならない、ハンディキャップを持っている人も生きていけるような社会を築くことが大事だと考え、実践していた人だと述べました。村上さん自身、ダウン症の娘さんの介護をずっとやってきたそうです。

 村上さんは右翼の政治家と目されていたが、福祉にも力を入れてきた政治家でした。また、赤旗の号外を配っていた人が住居侵入罪で捕まって、ピザのチラシを配った人はなぜ捕まらないのか。そこには国家の論理があるからだと、佐藤さんは指摘しました。ピザのチラシはいいが、政党のビラは国家にとって汚い。市民と交わらず、国家を清浄化して、強化する。それが官僚の目指す社会であるとの見方を示しました。

 佐藤さんは、ニュースはそのまま鵜呑みにせず、自分の頭で考えてみることの必要性を強く訴えました。そして、そこから見えてくるものをしっかり見据えることの重要性を説きました。「裁判にはカネもかかるし、時間もかかる。それでもやっているのは、筋を通すことが大事だと考えるから。こうやって話をすることで、いままで知らなかった人たちを知り、仲間が広がった」と述べ、JR総連に対する見方についても違ってきていると語りました。

 事件の背景に動労つぶしや国労つぶしがあり、メディアの対応も変わりつつあることに言及しました。「344会は被害者であり、国家が加害者。逆転するのが国家の謀略。外交に対して使うのはいいが、自国民に対して使ってはいけない。たとえ(自分が)つぶされても化けて出て、344会の人たちを助けてあげたい」と述べ、JR浦和電車区事件の被告人のみなさんに力強いエールを送りました。

佐藤優 こうしてえん罪・国策捜査はつくられる〜えん罪を語ろうin八王子| パネラーのみなさん。
パネラーのみなさん。
シンポジウム

 パネラーは、「堀越事件」主任弁護人の石崎和彦さん、袴田事件再審支援委員会 委員長の新田渉世さん、ライターの熊谷伸一朗さん。コーディネーターは、月刊『マスコミ市民』編集長の石塚聡さんです。

 石塚さんは、冤罪事件について、思い込みによる冤罪(袴田事件や狭山事件など)と、捏造やデッチ上げによる政治的冤罪事件があるとし、国家公務員法違反事件・「堀越事件」の主任弁護人の石崎さんに意見を求めました。

 石崎さんは、30余名の弁護団がこの事件に関わっていると述べました。この事件は、社会保険事務所職員のHさんが、休日、共産党のビラをまいて逮捕され、一審で有罪判決を受け、現在、二審で係争中の事件です。石崎さんのお話によると、国家公務員はあらゆる政治的な行為を禁止され、禁止されていないのは投票行為だけとする規定が、人事院規則120条1項に規定されているそうです。

 この規定は、占領下マッカーサーの指令によってつくられ、占領が終わったときほかの法律が廃止になったのに、この法律だけが残ってしまったそうです。法務省でさえ、この法律に対しては表現の自由などを保障した憲法に違反するとして法律的に問題があるという意見書をあげており、運用についても、人事院が「社会的常識に従って」という通達を出しているような法律で、今回の裁判については、憲法学会などから強い批判を浴びた1974年の猿払事件最高裁判決が見直されるかが注目されていました。

 この法律が37年間、使われなかったことからも問題のある法律であることがわかります。実際、公務員の政治活動については、特定郵便局長の政治活動は当たり前であり、これを問題にする人はいませんでした。今回の事件がなぜ起きたか。Hさんを逮捕するため、3ヶ月以上にわたって10名以上の公安警察が毎日尾行し、33本のビデオを撮ったそうです。

 裁判では9本だけ提出され、テレビにも提供したそうですが、石崎さんは「見ればビックリする」と述べ、鞄に穴を開けて撮影、車5台を使って追い回したそうです。一審判決は、罰金10万円、執行猶予2年。罰金に猶予がつくのは異例であり、双方が控訴しました。石崎さんは、国家公務員法が37年ぶりに復活したのは大問題であるとし、いままで適用されなかった法律が突然適用されたことに対し、「警視庁公安部は不退転の覚悟で公安事件を広めようとしている。その先駆」との見方を示しました。

 次に、新田渉世さんが袴田事件について発言をしました。

 新田さんは、ボクシング協会として袴田事件を世の中に知らせることの必要性にいま気づかされている、と語りました。この事件は、1966年に静岡県で一家4人が刃物でメッタ刺しにされて殺害され、放火された事件です。元プロボクサーだったことから目をつけられ、袴田巌さんが逮捕されました。袴田さんは1日12〜17時間の拷問のような取調べを受け、それが19日間続き、自白しました。

 新田さんは取り調べの不当性、証拠の不当性(事件の1年後に発見された5点の衣類は、ズボンが小さくて袴田さんには履けないことなど)を知ったとき、憤りがこみあげてきたといいます。この事件についてはボクシング協会全体として支援活動を広げていることや、今年3月、袴田さんの再審請求が最高裁で棄却されたのちも、第2、第3の再審請求を行い、袴田さんを救出するためにボクシング協会も取り組む決意であることなどを語りました。

 次に、熊谷伸一朗さんが発言しました。

 熊谷さんは、立川で自衛隊の官舎に反戦チラシを配った市民運動家が逮捕され、長期間勾留された事件(最高裁で有罪が確定)に言及し、いつ八王子でもこのような弾圧を受けてもおかしくない、と語りました。八王子では1年に一回、平和のお祭りをやっており、10万枚チラシをまいているので、人々に伝える重要な手段をもぎ取られ、危機感を感じていると語りました。

 小泉・安倍政権下で多くの弾圧が行われたと述べ、一般には知られていないが、これらの政権下では多くの弾圧が起こっており、平和活動をしてきた熊本さんの友人も、転居先にペンネームで送ったら「私文書偽造」で逮捕されたそうです。八王子は50万都市で、集会などではかなりの人が集るが、その力を分散するとやられやすいので、なにかあったらみんな協力しあうような関係をつくることが大事であると強調しました。

 石塚さんは、警察は公安事件をつくりたがっている、と述べ、今日の集会に公安の人が来ていることにも言及しながら、リークされた側が検察庁や警視庁を国家公務員法違反(守秘義務違反)でなぜ訴えないのか、と質問しました。その問いに対し、石崎さんは、平成16年に、「堀越事件」「立川反戦ビラ事件」「板橋高校事件」「葛飾ビラ配布事件」などの事件が相次いで起こったことに言及しながら、なぜこれらの事件が起きたのか、その理由について次ぎのように語りました。

 「国家公務員法が発動されたとき、私が声をかけると弁護団が集った。37年間凍結していた法律が適用された。これはなんだ。小泉内閣と石破防衛庁長官。憲法改正に向け、事態が大きく変わりつつある。9条の改正と戦前の特高警察の復活。戦争体験のない二代目、三代目世代の小泉や安倍などが総理大臣になり、世の中のことを知らない世代が政権中枢を担うようになった。公安警察がこの情勢をみていた。戦争時代、特高は行政の上にあった。再び公安警察の時代をつくりたい」

 また、リークされた側が訴えても、相手はリークしたことを否定するので、(公安とメディアの)癒着の追及の1つにはなるが、それを立件するのは「難しい」との認識を示しました。

 石塚さんは、今年3月、袴田事件の再審請求が最高裁で棄却されたことについて、免田事件では第6次の再審請求でやっと無罪が確定したことに言及しながら、望みを持って活動を続けている新田さんに意見を求めました。

 新田さんは、この事件は政治的な事件ではないが、今日にいたるまでの経過をみると、事件が解決していない背景に、先輩が下した判断を後輩の裁判官が覆すことは難しいといった、司法の体制(タテ社会)があることが考えられることから、この事件も政治的なものと考えてもいいのではないか、との見解を示しました。

 現在、袴田さんは72歳で、30歳のとき逮捕されてから42年間獄中にあること、長期勾留による拘禁症状で精神を病み、肉親との面会もできなかったこと、一時面会が可能となっていたが、最近は面会もままならないことなど、厳しい状況にある袴田さんを救い出すために、再審請求をすることと同時に、ほかにもなにかいい方法はないか、その手段を考えている、と語りました。

 石塚さんは、新田さんや輪島さんらボクシング界が一丸となって袴田事件に取り組んでいることに対し、「敬意を表したい」と賛辞を送りました。

 熊谷さんは、市民運動をやっていて思うことは、団体の中に不信感があることだと語りました。相互不信については「公安が噛んでいる」との見解を示しながら、運動の中に(公安が)スパイを送り込んでいることに言及しました。我々の税金を使って市民を監視・弾圧する公安警察の存在に対し、「こんなものは要らない」という世論を高める必要があると述べ、平成16年に起きた事件についての印象は、公安のねらいはオウムの事件以後変わってきたのではないか、との見方を示しました。

 石崎さんは、暴走しているのは警視庁公安部であり、適用範囲をどんどん広げている、と語りました。警察庁が組織的にやっているのではなく、現在は様子を見ている段階であることが、裁判の過程で明らかになったとし、このやり方がうまくいくかどうか見ていて、これが成功すると、警察庁は全国的にこれを使うのではないか、との見方を示しました。

 最後に、パネラーのみなさんから一言ずつ発言がありました。みなさんが一様に強く訴えていたのは、冤罪事件を広めていくことと、公安警察が市民に対し、どのようなことをしているのか、その実態を伝えることの必要性でした。

 また、自白の問題について、熊谷さんは「だれでもやられる可能性がある。弾圧のもとに、僕もいつかやられるかもしれない。相手は自白をとる天才。仲間は認めた、と騙して自白をとろうとするが、絶対に自白をしてはいけない。(やってもいない)罪を認めてはいけない」と述べ、騙されないために仲間が信頼関係を築くことが大事であるとし、団結し、連帯することをふだんの活動を通してやることが必要、と呼びかけました。

飯沼勝男さん「7人の人間は無罪である」

 最後に、「えん罪を語ろうin八王子」実行委員会 代表世話人で、元国民救援会東京本部事務局長の飯沼勝男さんから、閉会の挨拶がありました。

 飯沼さんは、JR浦和電車区事件は特別な事件ではない、としながら、次のような趣旨の発言をしました。

 「どこの組織でも仲間と協調できない人間がいる。浦和の運転手にも1人いた。一緒にやろうよ、と仲間が言ったことが強要罪で逮捕された。一審で有罪。強要罪は刑法第223条。生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。だが、だれも脅迫したり、暴行を働いていない。罵声も浴びせていない。これで強要罪は成立しない。一審判決は成立しない。7人の人間は無罪である」

筆者の感想

 今回の集会には、「町田痴漢えん罪事件」の当事者の方もお見えになるということだったので、この事件を知らなかった筆者はインターネットで調べて行ったのですが、残念ながら、当事者の方の都合で急に参加できなくなったとのことで、お話を伺うことができませんでした。

 途中、10分の休憩をはさみ、3時間に及ぶ集会は大変内容が充実しており、途中で席を立つ人はほとんどいませんでした。若い人たちも多く、司会の女性は、冤罪を訴えている人たちがいることをはじめて知りました、と話していました。佐藤さんたちのお話によると、この集会にも公安の人が来ているということでしたが、そのようなことに税金を使わず、もっと国民のためになることに税金を使ってほしい、との感想を強く持ちました。

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