前回記事:
(1)柏崎刈羽原発を直撃したのは想定約4倍の揺れだった 東井怜 2008/05/25
関連記事(震源など)
柏崎刈羽原発を襲ったキラーパルス(破壊的強震動) 東井怜 2007/08/16
関連記事(行政訴訟)
柏崎刈羽原発事故を教訓として 近藤正道 2008/01/04
関連サイト:
「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震」の震源断層モデルを更新(国土地理院)
「想定外の揺れに襲われた」と言われた柏崎刈羽原発、いったいどれだけ超えられたのか。去る5月22日ようやく発表された分析結果によれば想定450ガルに対して1699ガルとのことであった(注 これは地表での大きさではない。末尾参照)。
東電はこうした分析に続けて、新たに見直した想定(これが2280ガル)を臆面もなく試算してみせた上、「今後の対応」と称して耐震補強するなどと報告した。
しかしちょっと待ってほしい。
東電が原発の設置許可申請をした1975年3月、サイトに想定される揺れは最大で450ガル、これを超えることはないとしていた。また国がこれを許可したのは77年9月1日、関東大震災の日だった。
「450ガルを超えることはない」として申請し許可されたものが、4倍近い見積もり違いが判明した。これは偽装か詐欺ではないのか。
遊園地で50人乗りと言って営業してきた遊具が、じつは計算間違いをして15人の強度で設計していたとしたら、たとえ事故が起こらなかったとしても結果的に暴利を貪ったことになる。
同じく東電は計算間違いによって、膨大な不当利益を享受したことになるではないか。意図的か否かを問わず、少なくとも不法行為ではないのか。許可した国の責任はさらに重い。
ここで東電や国の言い分は、当時の知見では正しかった、「間違い」ではなかった、というものだ。
間違いと知らず間違えたからといって無罪放免とはいえないと思うが、柏崎刈羽原発については、当時から間違いを指摘する専門家もいたということが判明している。
しかもその専門家とは、国の審査委員であった。
その審査会の議事録を、国はなくしてしまう――例によって証拠隠滅ではないか。結局東電の倉庫からコピーが見つかったとされている。
こうした事実を洗い出したのは新潟日報の取材班、記事は
「第1回 突然の辞意断層権威の警告無視」の見出しで今年元旦の紙面トップに掲載された。
新潟日報 2008年1月1日
【これほどの激震に襲われた場所になぜ、原子炉の設置が許可されたのか−。】との疑問を抱え31年前の安全審査を追い、8回の連載を組んだ。
(揺らぐ安全神話 第4部 はがれたベール 2008年01月01日〜01月09日)
【1号機の安全審査書では、気比ノ宮断層で起きる可能性があるM6.9の地震を考慮することが妥当と結論付けられた。
審査書には松田の主張が結論とは関係のないただし書きという形で残された。「気比ノ宮断層の北北東に同一の断層系に属する別の断層が配列する可能性は否定できない」。 松田にとっては事実上、無視されたのと同じだ。
松田の見解は82年にまとまった2、5号機の設置審査でも「一連の断層と考える必要はない」と否定された後、残りの号機の審査書では記述すら消された。】
(第1回 突然の辞意断層権威の警告無視)
これでは公文書偽造にもなろう。
気比ノ宮断層の北北東に配列する断層を、東電は、気比ノ宮断層のさらに南の片貝断層まで含めて、長さ91km、マグニチュード8.1の「長岡平野西縁断層帯」として、今回の見直しで考慮した。
緑の丸で囲われた部分が中越沖地震の震源域
黄色の丸で囲われた部分が気比ノ宮断層など「長岡平野西縁断層帯」
「柏崎刈羽原子力発電所における平成19年新潟県中越沖地震時に取得された地震観測データの分析及び基準地震動に係る報告書」(概要)東京電力、より
「柏崎刈羽原子力発電所における平成19年新潟県中越沖地震時に取得された地震観測データの分析及び基準地震動に係る報告書」(概要)東京電力、より
設計値450ガルと比較すべき想定外の値がようやく公表された今、これまであちこちでくすぶっていた国の責任に対する大きな疑いがここへ来て一気に燃え上がる気配を感じる。原発の<耐震偽装>といってもいい。
折から柏崎刈羽1号機の行政訴訟が最高裁で係争中だ。1、2審とも敗訴した原告住民側が2005年12月3日に上告したもの。まだ弁論の再開は決まっていない。しかしここで法的判断を示さなければ、最高裁の、司法の、存在意義は消え去ってしまうだろう。
しかし、再び新潟日報によれば、とうてい期待はできそうにない。4月26日から5月4日まで連載された「揺らぐ安全神話 第6部 断層からの異議」は、柏崎刈羽1号行政訴訟の経過を追う。
【最高裁事務総局が柏崎刈羽訴訟1審判決が出る3年前、1991年にまとめた「行政事件担当裁判官会同概要集録」。そこにはこんな項目があった「原発などの安全性の審理方法をどう考えるべきか」。
そして次のような“見解”が記されていた。「裁判所は、高度な専門技術的知識のあるスタッフを持つ行政庁のした判断を一応、尊重して審査に当たるべきである」。】(2008年5月4日掲載)
「べきである」ときた。
記事は、下級審に対する最高裁からのプレッシャーを証言する元裁判官らのことばも紹介している。この連載・第6部はまだWEB版には登場していない。司法だけはいまだに聖域ということだろうか。この意欲的な連載を応援すると同時に、WEB版への掲載を強く希望する。
(つづく)
【注 原発における想定地震動――設計用基準地震動】
原発設計の最大想定地震動が450ガルとはずいぶん小さいのでは、と思うかもしれない。これは地表面での揺れではない。
通常地表面は、軟らかい堆積物などにより地震の揺れは増幅すると考えられている。逆に地下の岩盤では地表の2〜3分の1くらいしか揺れないものとされ、とくに原発関係ではその点が強調されてきた。450ガルということは、地表での900〜1350ガル程度に相当すると説明されてきたのである。
こうして改訂前の耐震指針では、原発は直接岩盤に設置することとなっていた。その岩盤は一定レベルの固さを持つことが要求されるので、その深さは原発サイトごとに異なる。
(関連サイト)
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「柏崎刈羽原子力発電所における平成19年新潟県中越沖地震時に取得された地震観測データの分析及び基準地震動に係る報告書」について(原子力安全・保安院)
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「柏崎刈羽原子力発電所における平成19年新潟県中越沖地震時に取得された地震観測データの分析及び基準地震動に係る報告書」(概要)PDFファイル
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「柏崎刈羽原子力発電所における平成19年新潟県中越沖地震時に取得された地震観測データの分析及び基準地震動について」(東京電力 2008年5月22日) PDFファイル・115ページ
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