「雨の早苗と屋敷林」(宮城県) 陸羽東線、車窓より 2008年5月31日 撮影:荒木祥
価格高騰する石油で米作る危うさ
問1.日本だけでどれくらいの食料が生産できますか?。
答.石油が安価に手に入るなら、なんとか9,000万人分くらいは大丈夫かも知れません。1960年代は食料自給率が非常に高かった(カロリーベースで79%=1960年=)時期ですが、その時代が、このくらいの人口でした。しかし、石油が高騰するなどで手に入りにくくなれば、3,000万人も難しいかも知れません。
問2.なぜ石油と食料が関係あるのですか?
答.肥料や農薬を作るのに石油が必要です。農業機械などの動力もそうです。
問3.どのくらい石油が必要なのですか?
答.化学肥料を使う現代農法では収穫物の2.6倍(1970年)ものエネルギーを投入しなければなりません([1]:参考文献。
タイトル一覧は記事末尾に)。1キロカロリーのお米を作るのに石油を2.6キロカロリー使うのですから、化学肥料・農薬・トラクターで育てたお米は石油でできている、といってよいでしょう。
農業全体では国内の収穫が519000億キロカロリー(2000年)になりますが、石油は1450000億キロカロリー(1998年)使用しています[2]。収穫の2.79倍も石油エネルギーを使うわけですから、「エネルギーベース食料自給率」を計算すれば、マイナス279%です。現代農業は、石油漬けになっています。
ちなみに、まだ化学肥料の使用が比較的少なく(約7.2kgN/10a、[8])、有機農法的な栽培が残っていた1955年には投入エネルギー(労働など)の1.11倍の収穫が得られていました[1]。
問4.では、有機農業にすれば食料問題は解決ですね?
答.そう単純にいきません。有機農業に必要な有機肥料は国内でまかなえません。現在の日本には生ゴミがあふれかえっていますが、これは海外から大量に食料を輸入しているからです。牛糞も、元は海外からの輸入飼料です。食料や飼料の輸入がなくなれば、有機肥料は国内から消えてなくなります。
問5.山や海も恵まれているのですから、国内だけで有機質肥料をまかなえるのでは?
答.その前例として、江戸時代を考えてみましょう。江戸時代は鎖国だったのでほぼ完全な自給自足でした。人口は享保の頃(18世紀半ば)に約3,000万人に達し、その後は明治維新まで100年以上も人口が増えませんでした[3]。江戸時代は5年に1度ほどの頻度で飢饉があり、山林の下草から糞尿、カマドの灰まで、肥料としてリサイクルを徹底していたのに、3,000万人以上養えなかった。有機質肥料は、日本の国土だけでは確保が難しいでしょう。
問6.江戸時代よりも技術が発達しているでしょうから、食料をもっと生産できるのでは? 。
答.江戸時代より進歩した技術は、石油エネルギーが前提になっています。化学肥料も農薬も農業機械もそうです。石油がなければ使えない技術です。また、バイオ燃料も代わりになりません。トウモロコシからバイオエタノールを作って得られるエネルギーは投入エネルギーの1.3倍です[11]。つまり、6ha以上を燃料用に準備して初めて食料用に1ha耕せる勘定です(トラクターのエネルギー効率50%の場合)。食料以外の原料でバイオ燃料を作っても、事情はあまり変わりません。
人力だけで耕す場合、人間1日分の労働は石油コップ一杯程度(0.086〜0.26リットル)ですから[4]、たいして耕せません。
問7.しかし、江戸時代より耕地面積が広がっていますよね。
答.確かに広がっています。江戸時代が約300万ha、2002年は476万haです[8]。しかし、いくら耕地が広くても肥料をまかなえなければ収量は落ちます。江戸時代と比べて山林はスギなどの針葉樹ばかりで、肥料に適しません(スギ堆肥は植物に生理障害を示すことがある)から、国内でまかなう肥料もその分少なくなり、江戸時代より厳しいかも知れません。
また、石油がないと広い面積を耕せません。一人で耕せるのは江戸時代同様、0.14ha程度だとすると、今の農業就業人口は330万人ですから、現在の耕地の一割、46.2万haしか耕せません。現在、農家の69%が60歳以上で高齢化が進んでいますから、耕せる面積はさらに狭いでしょう。
機械動力を使わずに広い面積を耕すには牛馬が必要ですが、いまの日本に農耕用の牛馬はいませんし、扱い方も分かりません。農水省は現在、農業の大規模化を図っています。この政策は石油が安い間は正しいし、推進すべき理由があるのですが、石油がなくなると耕せない耕地が大量に出るおそれがあります。
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