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「更生保護法」施行 運用面で葛藤する現場

山本ケイ2008/06/12
6月1日から施行された「更生保護法」は、全国で仮釈放中や保護観察期間内に凶悪犯罪を行ってしまうケースが発生したため、社会の処罰感情や被害者感情を考慮して、保護観察官らの指導や監督権限を大幅に強化する内容となっている。だが現場の保護観察官や日本弁護士連合会からは運用上の懸念も指摘されている。
日本 行政 NA_テーマ2
 犯罪をした人や非行のある少年の社会復帰を支援する「更生保護」。今年6月1日から、従来の犯罪者予防更生法と執行猶予者保護観察法を統合した「更生保護法」が施行されてから、保護観察対象者に対する扱いが大きく変わった。

 10日夜に大阪市西成区内で開かれた、釜ヶ崎のまち再生フォーラムで西成区を担当する法務省大阪保護観察所の保護観察官、西原実さんが同区での事情や、新たな法律の運用面での課題などを語った。新法では再犯防止に力点が置かれ、場合によっては仮釈放や執行猶予が取り消されるなど厳しい措置も定められており、更生と再犯防止のバランスをどう保つか、扱いによっては諸刃の剣となる危険性もはらんでいる。

「更生保護法」施行 運用面で葛藤する現場 | <center>保護観察の流れ(法務省パンフレットから抜粋、一部修正)</center>
保護観察の流れ(法務省パンフレットから抜粋、一部修正)
 更生保護法は、全国で仮釈放中や保護観察期間内に凶悪犯罪を行ってしまうケースが発生したため、社会の処罰感情や被害者感情を考慮して、保護観察官らの指導や監督権限を大幅に強化する内容となっている。保護観察対象者の遵守事項を「一般遵守事項」と「特別遵守事項」に分け、従来からあった住所の届出に加え、交友関係の報告、再犯防止プログラムの受講を義務付けるなどしている。守らなかった場合には仮釈放や執行猶予が取り消されることもある。

 日本弁護士連合会では「更生保護法は、再犯防止をも同法の目的に掲げたことから、ともすれば犯罪を犯した者を改善更生することよりも隔離する方向での運用が危惧されるので、 被害者の意見等が仮釈放や仮退院を遅らせ、改善更生の支障とならないような運用を強く望む次第である」などとする「仮釈放、仮出場及び仮退院並びに保護観察等に関する規則の一部を改正する省令の制定に関する意見書」(07年8月31日)を提出、慎重な対応を求めている。

 西原さんの報告によると西成区釜ヶ崎(あいりん)では、逮捕される前は簡易宿泊所などで暮らしていた保護観察対象者が、仮釈放されたり、執行猶予刑を受けた後、就労が困難なためホームレス状態になるケースもあるという。新法では、このように連絡が取れずにいた場合には、たとえ罪を犯していなくても仮釈放や執行猶予が取り消されて再収監されてしまう恐れもある。

 現在西成区を担当する保護監察官は西原さん1人で、保護観察対象者約150人の更生を支援している。「ボランティアで活動されている保護司の方の協力を得て、更生保護を行っていて、地元の事情に詳しい保護司の協力が欠かせません」としており、保護観察は全国に約5万人いる保護司に頼っているのが現状だ。

 身寄りがなく、引き受け手のいない人の場合の更生には困難がつきまとう。頼る人がいない場合に全国に101カ所ある「更生保護施設」で一定期間、過ごすことになるが高齢だったり、身体や精神に障害を持つ人の場合には就労も難しい。杓子定規に遵守事項を押し付けられると、更生の意欲があっても仮釈放や執行猶予が取り消されてしまうという本末転倒な結果になりかねず、法律の運用に更生保護の現場は葛藤しているのが現状のようだ。
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