ドヤ(簡易宿泊所)街に同和地区、在日外国人、高齢者、ホームレス――。大阪市西成区は様々な人々が集まり多彩な顔を持つ個性豊かな地域である。その西成をカメラで追ったドキュメンタリー映画「未来世紀ニシナリ」が21日から劇場公開される。それに先立ち15日、同市天王寺区の應典院でプレミア上映会が開かれ、監督や登場した人たち、それに主催者の予想を大きく上回る約120人の観客が、それぞれの「ニシナリ」に思いを馳せた。
田中監督がこだわった後半17分の1シーン(株式会社フルーク提供)。
「ニシナリ」は同和地区に対して根強く残る差別意識に挑む主婦や、日雇い労働の街である釜ヶ崎での野宿者の自立支援を中心に、それに関わる人々のドラマがメーンに描かれていた。主婦は古着ビジネスで雇用の創出をねらい、野宿者支援に取り組む男性と、それをサポートする清掃会社の専務は人のつながりを重視する。2年間にわたって密着し、西成で生きる喜びや葛藤、自立支援の難しさを浮き彫りにしている。その日常が飾りの無い言葉で綴られていく。ロンドンのスラム街への視察も取り込まれ、共通した課題があることを伺わせた。
上映会で田中幸夫監督は「格差や貧困が世界共通のテーマであることを認識させられました。68分の構成がいびつになっていると思われるかも知れませんが、私としては後半17分のシーンに、ある程度の思いを込めています」と話した。その17分には清掃会社に度々、迷惑をかける若者と支援する側の率直なやりとりが納められている。なおこの映画では、ドキュメンタリーから劇映画、企業PR映画などを手がける山田哲夫氏も共同で監督を務めている。
挨拶する田中監督(右)と山田監督(左)。(15日、應典院で)
トークの時間では、映画に登場する野宿者支援に取り組んだ株式会社ナイス・くらし応援室の佐々木敏明さんと、自立支援に向けて清掃作業を世話した株式会社美交工業の福田久美子さんが、この映画について語った。
佐々木さんは「撮影時には野宿者支援を中心にやっていましたが、お世話していた方は遁走されていなくなりました。施設の家賃の滞納があって活動資金が枯渇したこともあります。ともすれば社会的にいいことをやっているように見えがちですが、都合のいい解釈はせずに見ていただきたいです」とその後の状況を説明し、その言葉からは支援の難しさが感じ取れた。
映画に登場した佐々木さん(左)と福田さん(右)。
福田さんは「映画に出てきた若者について、従業員から『会社に迷惑をかけているのに、なぜ受け入れようとするのか』と言われることがありますが、やり直しのきく、どこかに戻れる場所のある社会であって欲しいという思いがあります」などと話し、現在は西成区内で花店の経営にも乗り出し、新たな地域興し事業にチャレンジしていることを明かした。
筆者はこの映画では、同和地区への根強い差別について、主婦が映画の中で「韓国ではお酒がうまいというんです」という意味の言葉を話すシーンが印象に残った。それは、日本であれば「どこに住んでいるの」という質問に大阪と答えれば大阪のどこ? と聞かれて、西成と答えると、西成のどこ? と聞かれるのだが、韓国なら「日本、大阪」で通じてお酒を酌み交わすことができる。それがとても楽だと話していたシーンだ。
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「未来世紀ニシナリ」
監督・脚本/田中幸夫 山田哲夫
プロデューサー/北川修二 酒井邦一
企画・制作/株式会社フルーク 風楽創作事務所
芸術文化振興基金助成事業
(68分作品)2006年11月完成
6月21日からシネ・ヌーヴォ(大阪市西区九条)で公開
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