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地域からのエネルギー政策転換をめざした飯田市のモデル事業(上)日本の自然エネルギー導入政策の普及効果は疑わしい

桐生広人2008/09/13
化石燃料からの二酸化炭素排出削減はいよいよ急務だ。日本政府が提唱しているのは2050年までに世界での50%削減だ。地球温暖化を前に手をこまねいているわけにはいかないと考える人たちが、国の補助金を活用してモデルとなる事業を築くことに取り組み始めた。
日本 エネルギー NA_テーマ2
グリーン電力もなく値上がりばかりの日本の電気

 8月下旬のゲリラ豪雨は、熱帯のスコールを越えるといってもいいほど凄かった。南北に長い日本列島は南と北の海の温暖化に大きく影響されているのではないだろうか。日本の南の太平洋の海の水温上昇で発生する水蒸気が台風でもないのに大量に日本に運ばれ、北では北極海の海氷が凄まじい勢いで溶ける温暖化が進んでいる。こうした現象と日本の豪雨や豪雪との間に因果関係がありそうだが、これまでにないパターンの気候変動、異常気象に年々恐怖は募るばかりだ。

地域からのエネルギー政策転換をめざした飯田市のモデル事業(上)日本の自然エネルギー導入政策の普及効果は疑わしい | <center>ゲリラ豪雨の前触れ、巨大な積乱雲(筆者撮影)</center>
ゲリラ豪雨の前触れ、巨大な積乱雲(筆者撮影)
 化石燃料からの二酸化炭素排出削減はいよいよ急務だ。よく「日本がCO2を全く出さなくなっても世界の排出量は5%しか減らない」ともっともらしく言われるが、日本政府が提唱しているのは2050年までに世界での50%削減だ。一人当たり排出量の多い日本は70〜80%の削減が必要だともいわれ,のんびり構えてはいられないのだ。

 今世紀に入ってから化石燃料依存から抜け出すために、先進国は自然エネルギーの導入に本格的に取り組み始めた。が、日本は遅れを取っている。特に太陽光発電では導入量で世界でトップだった日本が05年度に政府の補助金での普及支援が止まるとドイツに抜かれ伸び悩んでいる。現在ヨーロッパでは自然エネルギー(電力)の固定価格買い取り制度が各国に導入され、太陽光の爆発的な普及が進んでいる。

地域からのエネルギー政策転換をめざした飯田市のモデル事業(上)日本の自然エネルギー導入政策の普及効果は疑わしい | <center>おひさまエネルギーファンドのマスコットも作られた<br>(写真提供:おひさまエネルギーファンド)</center>
おひさまエネルギーファンドのマスコットも作られた
(写真提供:おひさまエネルギーファンド)
電気料金500円アップでCO2排出が減ったドイツ、800円アップでも増やしている日本

 早くから日本で固定価格買い取り制度の日本版「自然エネルギー促進法」づくりに取り組んできた環境エネルギー政策研究所スタッフの竹村英明さん(2003年まで参議院議員政策秘書)は、国会での法案制定に大きな壁があることを感じて、環境エネルギー政策研究所(ISEP)に転じ、地域からのエネルギー政策転換をめざした。

 長野県飯田市の「おひさま進歩エネルギー(株)」(設立時には有限会社、現在は「おひさまエネルギーファンド株式会社」)の設立に参加し、省エネと太陽光発電をメインにした自然エネルギー導入事業を進めてきた。この事業は「低炭素社会に向けた社会的的実験の実践報告」でも紹介したが、事業の推進者として取り組んだ竹村さんに世界の太陽光発電の現状や、事業の意義や経過などについて聞いた。

 「ヨーロッパの爆発的な太陽光発電の普及は、法律に基づく固定価格買い取り制度が導入されたからだ」と竹村さんはいう。「ドイツでは太陽光で発電した電気を80円(kW/h・キロワットアワー)程度で売ることができる。高価な太陽光発電を購入し発電原価が50円としても、通常の電気代の4倍くらいの価格で売れることが法律で保障されており初期投資の回収が早く確実にできる。だから銀行がお金をどんどん融資するので補助金がなくても普及が進むのだ」と竹村さん。  

 その結果、ドイツでは1世帯当たりの電気代が1月約500円アップした。この値上げをドイツ国民は文句を言わず受け入れたのでこの制度は成立し、また太陽光発電のインストールが世界1位になり07年には風力などをあわせた再生可能エネルギーの利用で1億1500万トンのCO2が削減された。

 一方日本では、石油を初めとする化石燃料価格の高騰と地震で止まった原発のせいで、東京電力は来年1月から1世帯あたりの電気代を月800円(平均的な使用量世帯)も値上げする予定だ。その電気の大部分は化石燃料で再生可能エネルギーからの電気(これをグリーン電力ともいう)はほとんどない。

 「1世帯500円の支出増でグリーンの電力だらけにしたドイツと、化石燃料を使うために800円も負担させられグリーンがほとんどない日本とくらべどちらがいいか? と問われればもう歴然と結果は出ている」と竹村さんは日本の政策の失敗を嘆く。

地域からのエネルギー政策転換をめざした飯田市のモデル事業(上)日本の自然エネルギー導入政策の普及効果は疑わしい | <center>竹村英明さん(筆者撮影)</center>
竹村英明さん(筆者撮影)
日本の自然エネルギー導入政策はマインドに依存、普及効果は疑わしい

 固定価格買い取り制度が実現しなかったことから、日本の家庭で太陽光発電に投資しても回収するのに30年以上かかると予想され、まだ儲かるレベルの話ではない。発電して自家消費する分は電気を買わなくてすみ、余った電気は電力会社に売ることもできるが、とても10年や20年ではペイしないという。

 「いま家庭などに太陽光発電が設置できているのは、排出を減らし地球環境を守りたいというマインドを持っている人達に依拠してるんです。ですから『環境なんてどうでもいいや』と思っている人でも設置するようにならないと環境はよくならない。そのためにも高価な太陽光発電システムの普及に補助金は必要なんです。太陽光で発電した電気を使えばその分化石燃料を燃やさなかったわけですから,間違いなくCO2の排出は減っています。太陽光発電が増えればCO2排出量は減るのです」。そもそもいまの太陽光発電のいちばんのニーズは、儲けることよりもCO2の削減にあることを忘れてはならないだろう。

 先日の記事「電力の100%を自然エネルギーで自給している市町村がある」で千葉大学の倉阪秀史さんは、「一気にすべての地域が自然エネルギーで経済をまかなえるようにはならない」と言っている。すべての人と地域が自力で自然エネルギーの導入ができるようになるとは限らず、条件が揃うまでには時間がかかりそうだ。しかし、進む地球温暖化を前に手をこまねいているわけにはいかないと考える人たちが、国の補助金を活用してモデルとなる事業を築くことに取り組み始めた。

(つづく)
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