(「白バイ事件」の経過)
2006年3月、春野町(現・高知市)の国道56号で、停車中のスクールバスに高速走行中の白バイが激突。白バイ隊員が死亡。スクールバスを運転していた片岡晴彦さんが業務上過失致死罪に問われた。
2007年6月、高知地裁が禁固1年4ヶ月の実刑判決。弁護側は控訴。
2007年10月、高松高裁で控訴審公判。弁護側の証拠・証人をすべて却下し、即日結審。弁護側は上告。
2008年1月、上告趣意書を最高裁に提出、審理の差し戻しを求める。
2008年3月、証拠隠滅、虚偽公文書作成等で、片岡さんが高知県警を告訴。
2008年6月、高知地裁の和解勧告に応じ、仁淀川町は遺族側に総額1億円支払いに合意。片岡さんは和解勧告に応じなかったが、遺族側は片岡さんへの民事訴訟を取り下げた。
2008年8月、最高裁が片岡さんの上告を棄却。
2008年9月 片岡さんの高知県警告訴を高知地方検察庁が不起訴処分とした。
建物は立派な高知県警察本部
(吹き荒れる逆風)
8月22日の最高裁の上告棄却に続いて、片岡晴彦さんの人生にまた、逆風が吹きました。9月11日、高知県警に対して行っていた告訴が、不起訴処分となりました。
理由は「証拠の価値がない」とのことですが、地検は1度として、その証拠を見ようとも聞こうともしなかったのです。どうして、見ても聞いてもいないことを価値がないと言えるのでしょうか。片岡さんは裁判をして欲しいのです。しかし、裁判が、証拠・証言を拒み続けているのです。裁判は、まだ1度も開かれていません。
(告訴状)
3月10日、片岡さんの提出した告訴状はおよそ以下のような内容でした。
告訴の趣旨
被告訴人の以下の行為は、刑法104条(証拠隠滅等)に該当すると考えますので、被告訴人を厳罰に処することを求め告訴します。
立証資料
@ スリップ痕等解析書(日本自動車事故解析研究所所長)
A バス走行実験映像
B テレビ各局報道(放送ビデオ:DVD)
C 交通街頭活動中の殉職:受傷事故防止対策の推進強化について(通達文書)
(不起訴処分通知書)
9月12日、高知地検から片岡さんに届いた処分通知書は、以下のような内容です。
貴殿から平成20年4月15日付で告訴のあった次の被疑事件は、下記のとおり処分したので通知します。
記
1 被疑者 不 詳
2 罪 名 証拠隠滅
3 事件番号 平成20年検第000000号
4 処分年月日 平成20年9月11日
5 処分区分 不 起 訴
逆風が続く片岡晴彦さん
(片岡さんのコメント)
9月10日、地検から、告訴に対しての捜査が終了したとの電話連絡がありました。通知書は、数日後郵送で配達される、とのことでした。不起訴にされた理由が全く分からない私は、すぐに地検に電話をし、担当の審議官に「わかるような書面を、もう一度送ってください」とお願いしました。すると、通常はこのような内容の書面で送っているとのことでした。
9月11日、直接地検に出向き、不起訴になった理由を聞きました。理由は、「証拠の価値がない」「主張が認められない」「根拠が明確でない」というような理由でした。このような説明で納得できない私は、事故解析人の先生に、詳しく説明させてくださいと伝えましたが、「その必要はありません」と言われました。
今回の経験から、告訴しても真剣に対応してくれないことがわかり、この国には、信じられる司法機関があるのか、疑問に感じています。憲法では「人権尊重」をうたっていますが、私の印象では「人権無視」です。
今後は、検察審査会に申し立て、親身になって調べていただきたいと願っております。
(筆者の感想)
事故当時、22名の中学3年生がスクールバスに乗っていました。立派な目撃者たちです。しかし、彼らの証言は、裁判ではことごとく不採用になりました。片岡さんの悔やしさはもちろんですが、彼らの悔やしさも、いかばかりであったでしょうか。
22名のうちの20名が、片岡さんのために、昨年10月、仙波敏郎さん(現職警察官として警察の捜査費横領を告発)の講演会の日に、片岡さんの無実を訴えました。それは、講演会の主催者には、寝耳に水のハプニングだったのですが、皆が彼らを温かく見守りました。
仙波さんはあの日、「この子たちがこうしてここにいることが、片岡さんの無実を証明しているとお思いになりませんか?」と、会場の150名に訴えました。とても非科学的で、精神主義的な言葉ですが、証人になれなかった彼らは、生涯、仙波さんのこの温かい言葉を忘れないでしょう。
あのことがきっかけになって、「高知白バイ事件」は全国的に知られるようになっていきました。彼らは現在、高校3年生に成長しています。親や教育関係者は、彼らが警察や裁判を信頼しなくなるのでは、と心配しています。しかし、それは話が倒錯しています。信じられないものを信じないのは、人としての正しい態度です。
今回、高知地検が、片岡さんの高知県警に対する告訴を不起訴にしたのは、かつて片岡さんを業務上過失致死罪で起訴したからです。その意味で、日本の裁判に「一貫性」はあるのです。
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