館長雇止め・バックラッシュ裁判の控訴審は9月18日、大阪高裁で第3回口頭弁論が開かれました。豊中市の議員や市民をはじめ全国からの支援者で74号法廷は満席でした。
大阪弁護士会館で開かれた弁護士解説つき交流会
被控訴人の豊中市と財団が直前に準備書面を提出してきました。そこで、これまでと重複する内容が多いため、控訴人・三井マリ子さん側は、次回、まとめた書面を提出することにしました。今回は、財政当局を飛ばして行われた財団予算案手続きについて絞って準備書面を出し、さらに豊中市に釈明を求めました。
今回の目玉は、早稲田大学院法務研究科教授の浅倉むつ子さんの意見鑑定書です。浅倉さんは、労働法、ジェンダー法の専門家です。「労働者が人格を尊重されながら働くことができるように職場環境を保持することは、使用者の契約上の義務」だという観点で書いています。
浅倉意見書に感動した、と語る宮地弁護士
さて、地方自治体の財源は、市民の税金です。時の権力の恣意的運用を防ぐため、二重、三重に法で縛りをかけています。豊中市の場合は、地方自治法、同施行令、豊中市財務規則です。ところが、豊中市は、「すてっぷ」の2004年度予算を、財政当局には2003年度のままで要求していました。三井さんをクビにして常勤館長を迎えるには予算が必要ですから、予算編成過程で財政に要求しなければならないのに、それを飛ばしていました。それを、原審の判決は、予算要求額の決定過程が通常と異なっているが、それは「手続きを急いだことによる」ので不自然とはいえない、などとしていました。
ところが、控訴審になって、豊中市側は、「2003年10月中旬、市長の内諾を得たので予算確保のめどがついた」と主張してきました。ちなみに03年10月20日には極秘で作成してきた次期館長候補者リストを市長に見せて、「それで当たれという了承のもとに」、本郷部長らは候補者に次々と打診していたのです。
豊中市側は、控訴審で、予算の専決者は市長であり、「実務では、新規施策や政策的変更を伴う予算要求を行う場合」に、よくあることだとしています。そのうえで、三井さん側を「実務を知らない」と開き直ってきました。
市長の内諾を得るために、03年10月に使ったとされる文書が、三井マリ子館長を排除する組織変更案「乙8号証」です。控訴審で、豊中市側は「市長に対して乙8号で組織変更を説明し、予算措置について内諾を得た」としています。この主張は、「乙8号は、財政当局に『考え方』を理解してもらわないと、その後の予算額の折衝に進めないので作成したもの」と主張していた第一審とまったく異なります。
浅倉意見書を解説する長岡弁護士
大阪弁護士会館で開かれた弁護士解説付き交流会で、「乙8号証」のコピーが参加者に閲覧されました。A4版1枚の用紙で、三井さんのクビを斬ることだけが非常に明快に書かれているものでした。
この乙8号を、03年10月30日には高橋叡子理事長に見せたと豊中市が主張してきたのですが、三井さん側は今回「見せてない」と反論しています。理由は、高橋理事長は04年2月1日の臨時理事会で、「10月30日には全体の機構改編をこれから考えていくと」「大きな体制をお聞きした」「館長を含む事務局がどう考えられるかということがまず第一義ですよと」と何度も言っています。もしも乙8号を見ていたら、三井館長排除がはっきりしているので、こんな発言にならないからです。
さらに高橋理事長に見せたと豊中市が主張する、その翌日、すてっぷで事務局会議が開かれています。その会議に山本事務局長が配布したのは、03年度の人員体制の予算要求説明書でした。半月前に市長の了解を得て、非常勤館長職(三井さんの職)が消えることは決まっていたのに徹底して秘匿し、非常勤館長職が記載されたままの03年度予算案を出したのです。手がこんでいます。
豊中市が開き直ったおかげで、余計にうそがわかったと言えます。
宮地光子弁護士は「浅倉先生の意見書に感動しました。ジェンダー法学の専門家という立場を超え、ご自身の実体験から書いてくださっています。住友裁判のとき、浅倉先生に鑑定書を何度かお願いしていたが、書いていただけなかった。今回、『浅倉先生が書いてくれそうだ』と聞いたときも、本当なのだろうかと心配していました」と述べました。
「裁判長が、浅倉先生の意見書は主張ではなく証拠ですね、と言っていましたが、これで、すでに裁判長は浅倉意見書を読んでいるとわかりました」と、裁判長の言葉を引用して説明し、この意見書が裁判の流れを変えるかもしれないとおっしゃいました。
浅倉むつ子早稲田大学教授の意見書ですが、三井さんに豊中市のしたことは、人格権侵害である、としています。豊中市がバックラッシュに遭った三井さんに何ら対策をとらなかったことは、職場環境保持義務違反ではないか、と厳しく指摘しています。
さらに、全国と豊中市のバックラッシュについて記述があり、自治体への影響が、実感として伝わるような構成になっています。「被控訴人にも同情すべき点がある」とし(だからといって豊中市が三井さんにしたことを免責はされないとしていますが)、バックラッシュの怖さにおののく行政の実態を強く印象づけています。現役の男女共同参画担当の公務員の私にも、すんなりと受け入れやすかったです。
バックラッシュの怖さがわからないと、この事件がいったい何なのかわからないですから、この意見書は、控訴人の主張を補強しています。
次回口頭弁論は、大阪高裁で12月11日午後1時半からです。
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