東京・品川の名門、京品ホテルは経営者の60億円の借金返済のため130人の従業員の解雇を条件に土地と建物をリーマン・ブラザーズの子会社のサンライズファイナンスに売買する事になり、従業員がそれに対抗して生活とホテルを守るため労組を結成して自主営業をしているが、その「存続闘争」が10月31日の明け渡し要求日からすでに11日が過ぎた。
由緒あるたたずまいの京品ホテル。署名に応じてくれるサラリーマン、地域の人が多い。(11月11日、矢本真人写す)
今も存続の署名運動は続き、すでに1万人を超えた。玄関前で組合の幹部が「昨年は1億円以上の利益が出ていた。放漫経営で60億円の借金をし、その返済のため私達を犠牲にし、このホテルを売却しようとしている。おまけに小林社長は、分け前として5〜6億円もらうことになっているという。こんな反社会的債権回収は許されない」と反対署名を訴えていた。
こんな短期間に1万人を超える署名が集まったのは、サラリーマンが米ハゲタカ資本に相当な敵意を持っていること、そして昭和5年に建ったこの由緒ある建造物を保存して欲しいという地域住民の気持ちの表れだという。
「立ち退きの件はどうなったのですか」と筆者が聞くと、「ホテル、飲食店は自主営業を続けているが、次にどういう手をつかってくるかは分からない」という。
ホテル前に張られた檄文、スローガンなど。支援組合も必死だ。
京品ホテルの親会社である京品実業が11月5日に立ち退きを求める裁判を起こし、その審理が17日に始まるようだ。それが一つのヤマになるかも知れない。退職金は法務局に供託され、裁判所から各人へ通知があったという。従業員の地位保全の裁判は11月4日に6,388人の署名を裁判所に提出した。次回裁判は11月28日に決まった。
10月20日の団体交渉の時、経営者は鍵を変えようとしたが、組合員らで阻止できた。これだけの事実が明るみになっては、もう鍵を変える手は使えないだろう。
経理だって疑問だらけだ。1億500万円の利益があり、経営者側はそれは利息の返済に充てたというが、実際には1,900万円しか返済に使われておらず、残りがどうなっているかは不明だとも言う。場合によっては特別背任の疑いも出てきたそうだ。
ところで、この由緒ある建物は港区の「歴史的建造物」の指定を受けているはずで、地域住民は区に応援を頼んだらどうかという話も出てきている。だが、指定されている書類が見あたらないと責任者は苦笑いする。勤続33年の年配者が言うのだから間違いないだろうとも言う。
ピカピカに光る廊下、絨毯を敷いた廊下を歩くとミシミシ音がする。答えられない風情だ。日光金谷ホテル、奈良ホテルに並ぶ重みがある。
「中を見せてくれませんか」と頼むと、「どうぞ、どうぞ」と2階のフロント、ホテル部門に案内された。ほの暗い絨毯の敷かれた階段を上がると、年期の入った廊下はピカピカに光っている。責任者の男性も「どうですか」と自慢顔だ。規模は大きいが、日光金谷ホテル、奈良ホテルのような雰囲気がある。予約のお客さんがいて、2泊の予約をしていた。宿泊料金は自主営業のため1人1室7,000円、2人1室11,000円、カンパして頂くことになると書かれている。雰囲気、接客も良く、かつ交通の便も良く、根強い顧客がいるようだ。
飲食店部門も「さが野」「いの字」「トンカツの七兵衛」が営業を続けている。「七兵衛は込んでいますよ」と言う。カンパも込めてトンカツのロース重を注文した。結構量もあってうまい。午後1時を過ぎていたが、17人のお客で埋まり、7人ほどの従業員がテキパキ働いていた。立ち退きを迫られている雰囲気など微塵も感じられない。「がんばってください」と一声かけると「ありがとうございます」という返事が返ってきた。
支援組合の激励も多い。「米資本の横暴を許すな」「力を合わせてハゲタカファンドをやっつけよう」「経営者の責任を労働者に押しつけるな」「勝ち抜いて私達が社会の主人公になろう」など檄文が続く。
土地、建物の売買代金から分け前をもらう約束などとんでもないことだし、従業員が一生懸命働き、生み出した利益の不明朗な経理処理など経営者の責任を全く感じていない無責任経営者には驚く。従業員の方が、余程プライドを持った仕事をしている。民事再生法はこの事例では適用が難しいのか。兎に角、従業員の生活を確保することが大事だ。裁判所の判断が注目される。
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