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「認認介護」という言葉を耳にした方は、あまりいないかもしれない。 去る11月12日、NHK総合テレビ「ニュースウォッチ9」で、この問題を取り上げていた。番組では、認知症の夫を介護をしていた妻も認知症になってしまったケースと、その逆のケースを取り上げていた。「老老介護」とは別に、深刻な問題になりつつある。 実際、私も今年、目の当たりにしたのである。現在、団地の棟の管理をしているが、今年の8月の猛暑時、かねてからご夫婦とも軽い認知症なのかなと思っていたが、そのお宅の向いに住んでいる方から「奥さんの様子がおかしい」との連絡があった。行ってみると、言動に脈絡がないため、救急車を呼んだ方がいいと判断し、通報した。確認のため、なんとか説得し、室内に入ってみると、既にご主人は亡くなっていた。 不審死として司法解剖。所轄署からすぐに連絡があり、「死後3日」で「あまりに何もなさ過ぎ、室内がきれい過ぎるのが不思議だ」と刑事の話。実際、冷蔵庫の冷凍室にアイスキャンデーが1本あるだけだった。奥様もその間、水以外何も摂っていなかったようだ。 お向いの方が気付かなければ、奥様の命もあぶなく、ご主人は残念だったが奥様だけでも救えた、とほっとしたものだ。区の職員の話では、急激な精神的ショックで食べることを忘れ、健康状態も体力も落ちたことが一層、認知症を進行させたらしい。 奥様は「一時シェルター」と呼ばれる施設に保護されたが、今はグループホームにいて、どこまで認知症が改善されるか、1人暮らしのための様々な訓練をしている。先のテレビ番組でも伝えていたが、「2人で孤独死」の1歩手前であったわけだ。 私の住んでいる団地は昭和40年代に建てられ、それ以来の入居者が多い。1番多い例は、当初、家族で入居し、子供は独立、夫に先立たれた独り暮らしの女性、というケースだ。年齢はほとんどが80代前後である。 違う階にも軽い認知症の方がいて、その方は兄弟の死でまた少し症状が進んでしまった。これから本格的な冬を迎えるにあたって心配なのは、火事である。毎年、お年寄りが料理を作っている時、袖に火が入り、事故になるというニュースをよく聞くが、認知症の方は安全な電磁調理器・携帯ベル式緊急通報装置・室内用火災報知器が出ても「新しい機器」の使い方を覚えられない。 私は夏の経験から、独り暮らしのお年寄りのため「訪問販売お断り」のプレートを使い、これを「表」「裏」と本人の安否を確認する方法を考えたが、ご家族の方から「多分出来ないと思う」といわれ、諦めた。しかし、ご本人の安全はもとより、同じ建物に住んでいる他の方たちの安全にもかかわることで、実際に頭をかかえているのが現状だ。 認知症の方と話してみると、共通点として近所付き合いがほとんどなく、外出せず閉じこもっている方が多い。話し始めると、止まらないほど良く話す。本当は話相手が欲しいのだ。しかし、ご本人の人生の来し方と性格的なものにも関係があるのかもしれない。 そして家族と距離が離れているため、物忘れがひどくなった程度の認識しかなく、自分の親が「認知症」であることすら気付かないし、気付いていても長い時間一緒に過ごしていないため、認知症の度合いも分からない。NHKの番組でも、介護ヘルパーが介護される当人の介護をしていて、その夫の認知症に気付かない例もあるという。ごく初期では、冗談も言い、普通に会話する。しかし、冷蔵庫をみると、賞味期限の切れた食品だらけ。部屋があまりに乱雑で、往診の医師が初めて気付いたという。 75歳以上のお年寄りは戦時中に育った方たちだ。戦前は、国が国民に行政サービスをするという考えはなく、むしろ国民は国に尽くせという時代である。これが、この世代の方に「お上にご厄介をかけちゃいけない。お上の世話にはならない」という思いをさせているのではないだろうか? また、戦後の厳しい世の中を生き抜いてきたプライド、さらには戦後高度成長期を支え、家族のつながりを決定的に変えた。子供には子供の生活と人生がある。「子供の世話にはなれない。子供には迷惑をかけたくない」という思いも強いのではないか。 独り住まいの認知症の方や夫婦ともに認知症の方をサポートするにも、各自治体は介護ヘルパーなど圧倒的な人手不足に悩まされている。これに対処するケースとして、NHKの「ニュースウォッチ9」は、東京・練馬区のケースを取り上げていた。 周囲に住んでいる人の注意を喚起し、夫婦とも認知症が疑わしい場合に行政に通報するか、説得し、連れて行くというものであった。しかし、これも実際を考えると、他人の家庭のプライバシーという厚い壁があるように思う。ご近所であるだけに、その後もお付き合いをする上でのトラブルになりかねない。 「本人の日常生活やプライバシーと命 」「 近隣住民とのコミュニケーション」……。 あまりにも重く難しい。私には、今これという解決策がまったく浮かばない。 ◇ ◇ ◇
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