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原子力空母機関士にきく 本当に安全なの?

海形マサシ2009/02/17
 横須賀を母港とする米海軍の原子力空母ジョージ・ワシントンの原子炉担当部署に属する乗組員と知り合った。日本人ならだれでも持つような素朴な疑問をぶつけたところ、彼は極めて率直に答えてくれた。一言でいえば、「危険は全くない」だ。しかし、そもそも米軍がこれ以上、日本に居座ることは双方のためによくない。引き揚げるよう説得することこそが日本政府の役割ではないのか。
日本 安全保障 NA_テーマ2
 東京湾に米海軍原子力空母ジョージ・ワシントンが入港し母港として横須賀基地に停泊して、はや9ヶ月が経とうとしている。筆者は、この空母の配備にずっと反対の立場である。最近、その空母の原子炉を扱う乗組員と接する機会があり、その人物とメールや、また直接会って話しを聞く機会があったので、原子炉に直に接している人から安全性などについて問うてみた。

 その乗組員にとって筆者とのやりとりは、ややリスクのある行動だといえる。筆者のような反対派と触れ合うことは上官が許可したがらないことであるし、誤って軍事機密に触れることを言えば、軍法会議にかけられてしまう。あくまで「機密に抵触しない範囲で質問に答える」という条件で承諾してくれた。本名や詳細な素性は記事内では公表できないので、彼を「ミスター」と呼ぶことにする。

 艦船の乗組員というので、一見、皆、戦闘の訓練を受けた兵士だと思いがちだが、実際、乗組員のほとんどは護身以外の訓練は受けていない人ばかりである。「ミスター」は、艦船の中でも2番目に大きい原子炉担当部署に属する乗組員で、そのための実習や訓練を専門に受けてきたという。

 勤務は1日10時間近くあり、また週に1度は24時間勤務もある。そんな過酷な勤務で大丈夫なのかと聞くと、軍では、3、4時間の睡眠で3、4日間の勤務をこなすのが常識で苦痛には感じないという。気になる給与を聞いたが、それが驚くべき金額だった。その上、生活費はほとんどかからないというから貯まり放題。まあ、疲労によって士気が落ちる心配はないと思える程だ。

原子力空母機関士にきく 本当に安全なの? | 昨年12月の一般公開日に筆者が撮影した空母ジョージ・ワシントン。
昨年12月の一般公開日に筆者が撮影した空母ジョージ・ワシントン。
 以下はその「ミスター」との質疑応答である。

 筆者:停泊中は原子炉を停止していると聞いた。だが、炉は冷却し続けなければならず、そのため地上から電力を引いて冷却装置を動かし続けていると聞くが、もし地震などで地上の電力供給施設が破壊を受けたら、冷却が出来ず、メルトダウンが起こってしまうのではないか?

 ミスター:まず、そのようなことは起こらない。艦船は世界中のあらゆる状況を想定に入れて設計されている。当然、地震にも耐える設計がされている。電力が供給されない場合も、艦内のディーゼル燃料を使った電源で冷却装置を動かし続けられる。仮にそれも機能しなくなっても、現状では空気だけでも十分冷却は可能だ。

 念のため、原子炉は24時間、1秒たりとも人の目が離れることはない。原子炉担当のスタッフは皆、2、3年以上、少なくとも2、3カ所の原子力施設での実習の経験があるプロたちだ。

 筆者:過去に冷却水が漏れたり作業員が被ばくするような事故が起こっているようだが、米海軍は「事故はない」と主張している。理解できないが?

 ミスター:海軍の事故の定義は、核分裂物質が炉から漏れるような事態をいう。指摘したような事例は事故にはあたらない。

 筆者:艦船に飛行機が上から、または横から激突するようなことがあっても、原子炉は大丈夫なのか?

 ミスター:原子炉は海面より下の底部にある。魚雷の攻撃を受けたとしても、何重にもシールド(防護隔壁)がしてあるので、炉が被害を受けることはない。

 筆者:かなり高濃度の核燃料を使用しているようだが?

 ミスター:それは原子炉が通常のものに比べ小さいためだ。破壊されたとしても、流出する核物質の量は大して変わらないだろう。

 筆者:乗組員として、(日常的に)被ばくを受ける恐怖は感じないのか?

 ミスター:全くない。艦内には測定器が設置してあり、艦内の被ばく量は、日光から受ける量の3分の1ぐらいでしかない。

 筆者:現在、5月まで空母はメンテナンス期間に入っていると聞いた。原子炉の修理や核燃料の交換などはしているのか?

 ミスター:規定により外国ではそんなことはしないことになっている。また、メンテナンスのための部品交換はあるが、それらは汚染物質なので厳重に保管され、基地外はおろか、艦船の外にも持ち出さず、本国へ返送されることになる。

 筆者:昨年、米国籍を持たないナイジェリア系の軍人がタクシー運転手を殺害する事件が起きた。士気の方は大丈夫なのか?

 ミスター:原子炉を担当する乗組員は皆、米国籍保持者だけだ。あの事件には怒りを感じている。事件のため、我々の評判が悪くなったからだ。

 筆者:横須賀の人々から歓迎を受けている気はするか?

 ミスター:艦の配備がこんなに論争になっていることに驚いた。歓迎と不歓迎、どちらも感じる。面白いことに、昨年11月に寄港した韓国では、打って変わって大歓迎だった。韓国は安全保障上の切実な問題があるからだろう。

 筆者:横須賀に空母を配備する理由をどう教えられたか?

 ミスター:まず第1に抑止力、第2に自然災害の救済、第3に、実際これが最も重要だと思うが、米国の影響力を誇示することだと聞かされた。

 筆者:オバマ大統領が就任したことをどう思うか?

 ミスター:軍部の大半は共和党員だ。それは共和党が軍拡支持の立場だからだ。だけど、個人的には黒人初の彼の就任にはわくわくしている。もう人種偏見の時代ではない。

 筆者:原子力技師として見る限りで、原子力はエネルギー源として推進すべきだと思うか?

 ミスター:すべきだと思う。事故についての懸念がよくなされるが、チェルノブイリなどは、管理が全く怠慢だったため起こったことだ。風力や太陽熱は、小さなコミュニティには適用できるが、大都市向けの電力供給には不適切だ。ブッシュの政策の中で支持できたものは、国内に20基ほど原発を新設すると決めたことだ。

筆者の感想

 インタビューに応じてくれた機関士は典型的なナイス・ガイだった。私も個人的には、アメリカ人でいい奴は多く知っている。何せ筆者はアメリカに5年以上も住んでいたのだから。

 ジョージ・ワシントンが現実に事故を起こすのかは分からない。起こるときは起こる時だ。だが、実際のところ原子炉の危険性が主眼ではないという議論も分かる。問題なのは、我々の税金を使ってまで他国の強大な空母に母港を提供していることだ。米軍部も「思いやり予算」で安くつくという理由で日本に軍を配備していると議会で証言しているではないか。

 安全保障の観点からいえばやむを得ないという意見を聞くが、実際のところ、米軍は不要であると見る方が正解だ。すでに日本には自衛隊という領土防衛に関しては十分すぎるほどの実力がある軍隊が存在する。よく「中国からの脅威」が聞かれるが、防衛省の想定では、中国軍が攻撃したとしても、自衛隊なら数時間で撃破できるという。

 もちろん、これはあくまで想定に過ぎない。しかし、仮に日中が紛争状態になっても、中国が米国債の世界最大の保有国である事実を考えれば、アメリカが日本の味方になってくれる可能性は極めて低い。北朝鮮に関しては「テロ国家指定解除」をした程だから、あまり熱心でないことは明白だ。

 こんな情勢にかかわらず米軍に基地を使わせている。国際社会の常識からすれば、「好んで属国になっている」としか見られないだろう。

 米軍がこれ以上、居座り続けることは、日米両国にとって利益になることではない。筆者を含めアメリカに対する日本人の印象は、基地問題のため日に日に悪くなっている。アメリカも、金融危機以来、日米関係を特に重要視していることを考えれば、そろそろ潮時と感じているのではないか。

 もう「思いやり予算」などやめて、在日米軍を大幅に縮小して、横須賀の海軍基地は自衛隊の基地として運営して、原子力空母は母港ではなく、寄港地としてのみ使用を許可するという形でいいのではないか。もちろん、原子炉は停止して、安全査察の権限を強化するように地位協定などを改正すればいい。

 そうすることこそが、日本人のためでもあり、ミスターを含めたアメリカ人のためにとっても利益になることだ。そのように米国を説得することこそが日本政府の役割ではないかと筆者は考える。

ご意見板

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[41412] とても参考になりました
名前:藤重典子
日時:2009/02/18 13:00
原子力潜水艦なんて「ある」ことだけしか知らなかった。その問題に興味を持ち、現地に行き、すぐれた質問を英語ででき、その答えに対して論評するなんて、なんとすぐれた記事だろうと思いました。
[41363] これはいい記事ですね
名前:田中秀郎
日時:2009/02/17 21:26
なんと。
この記事は値打ちありますね。
実際に、原子炉関係の担当者のコメントを取れたのは
貴重なことと思います。

ただ、確実にソースを秘匿する必要があるとは
思います。
例えば、今の自衛隊など、現役の隊員のHPなど
もどんどん閉鎖に追い込まれています。
実際、秘密事項に触れるようなケースが
でたこともありますから(掲示板に、潜水艦●●の
航海士の彼が、どこそこの港に来るから、、
とかいうような書き込みがあった場合などもあります)

なんせ戦時中の海軍のこと、とかく神経質なところも
あろうかと思いますからぜひ。
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