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「生活保護申請を記録して逮捕って何だよ!?」抗議集会開かれる

 大阪府柏原市福祉事務所の水際作戦に対して、窓口で様子をビデオ撮影したAさんが、逆ギレした福祉事務所に訴えられ、逮捕・起訴された事件。
水際作戦の福祉事務所「逆切れ」、生活保護申請者不当逮捕

 この不当逮捕に抗議して、「生活保護申請を記録して逮捕って何だよ!?生存権を求めたA君は無罪だ」が12月23日、東京都新宿区の大久保地域センターでありました。

■Aさんの自立を踏みにじった福祉事務所に怒り

 事件の経緯については「ユニオンぼちぼち」の橋口委員長から報告をいただきました。事件の詳しい経過は、以下のリンク先をご参照ください。
A君が不当に逮捕されるまでの詳しい経緯

「生活保護申請を記録して逮捕って何だよ!?」抗議集会開かれる | 「自立を支援するはずの福祉事務所が自立を邪魔した」と怒る橋口委員長。(撮影すべて筆者)
「自立を支援するはずの福祉事務所が自立を邪魔した」と怒る橋口委員長。(撮影すべて筆者)
 8月18日、Aさんは、生活保護申請書を受け取ろうとしない職員に対して、証拠保全のためにビデオを回し「公務員でしょ。申請させてください。ちゃんと対応してください」「生存権を保障してください」「ユニオンチューブ(労働組合の動画サイト)っていうのがあるんですよ」と抗議しただけです。

 抗議を受けた職員は、即座に警察を呼び被害届を出します。それに対してAさんはユニオンぼちぼちの組合員に電話をしました。そして、第三者が間に入ることで職員も誠実に話を聞くようになりました。そして翌日、Aさんが14日付の申請の取り下げと再申請を行った結果、8月31日に保護決定がなされます。

 決定前の27日に、組合員が同行して福祉事務所を訪れた際、職員は被害届の取り下げを検討する旨を伝えていました。

 また無事に保護決定がなされたこともあり、取り下げは行われたものだと判断していました。当たり前です。違法なことをさせたわけではないと福祉事務所も認めているのですから。しかし福祉事務所は、Aさんの言動が脅迫的な行為にあたるということで「職務強要罪」で刑事告訴をしていたのです。

 10月27日に「職務強要罪」で突然、逮捕されたAさん。同時に、組合の事務所も、大阪府警の暴力団担当課に捜索されます。そしてAさんは、11月16日には大阪地検により、起訴されてしまいました。

 起訴状では、「保護開始申請書の受理及び保護決定の処分をさせるために脅迫を加えたもの」とされています。しかし、申請書の受理は法律で定められた義務です。受理しようとしなかった福祉事務所職員こそ、違法行為をしています。また生活保護自体は逮捕後も廃止されていません。不当な決定はなかったと福祉事務所自体が認めています。もちろん撮影された映像の公表もされていません。

 にもかかわらず、今なお、勾留が続いています。そして、12月11日には職業訓練校から退校を命令されてしまいました。拘留されている為に授業に出席できない。そこで、「正当な理由なくして授業の2割以上を欠席した」として退校命令が出たのです。

 せっかく自立へ向けて歩んでいたAさんの生活は無茶苦茶になりつつあります。
 橋口委員長は「市民の自立を助けるべき福祉事務所が、警察に解決を任せ、A君の自立を踏みにじった」と憤りました。

■「無理筋」に近い職務強要罪適用で弾圧

 その後、山本志都弁護士から「職務強要罪」適用の問題点について報告がありました。

「生活保護申請を記録して逮捕って何だよ!?」抗議集会開かれる | 「労組への弾圧が増えている」と指摘する山本弁護士。
「労組への弾圧が増えている」と指摘する山本弁護士。
 職務強要罪とは「刑法95条2項」で「『公務員』に、『ある処分をさせ、若しくはさせない』『ために』、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。

 山本弁護士によると、職務強要罪の適用自体が非常に珍しいことらしいです。最近では、成田空港問題で、過激派が土地収用委員に辞めろと脅迫して全員辞めさせた事件が該当するくらいで、あとは明治や大正など大昔までさかのぼれば、何件か判例がある程度だそうです。

 たしかに、Aさんが行ったこと自体は外形的には、構成要件に該当します。しかし、公務員に「明白に違法な処分」をさせない行為については、職務強要罪は適用されない。すなわち、Aさんがした行為が水際作戦=違法な処分の阻止のためなら、強要罪が適用されない可能性があるのです。

 また、Aさんが行った行為が「暴行または脅迫」にあたるかどうかについても、死ぬか生きるかのときに大きな声が多少出るのは違法性がないのではないか?など検察への疑問が指摘されました。

 ただ、最近、労組に対して暴力行為法などによる刑事弾圧が増えているということです。また、経営者が「組合活動で会社に損害が出た」などと民事提訴するケースも出ているそうです。

■依然ひどい生保申請現場、事件で悪化の恐れ

 その後、今回の事件のバックグラウンドとなった、「誰かが同行しないと、水際作戦で追い返されてしまう」生活保護申請の現場の実情を、稲葉剛・自立サポートセンターもやい代表理事(湯浅誠さんの「上司」になる)が報告。そして伊東市・熱海市の福祉事務所から「たらいまわし」にされたKさんについて、台東区の山谷労働者福祉会館活動委員会の方から報告がありました。

「生活保護申請を記録して逮捕って何だよ!?」抗議集会開かれる | 生活保護申請現場の惨状を報告する湯浅誠さんの「上司」稲葉剛さん。
生活保護申請現場の惨状を報告する湯浅誠さんの「上司」稲葉剛さん。
 家を失っていたKさんは、伊東市の福祉事務所で相手にされず、熱海までの電車代を渡された。住所がないからと言って追い返すのは違法で本当は「現在地」で保護しないといけないのにです。そして、電車で熱海まで行くと、今後は「住民票がある横浜まで行け」と言われたわけです。そもそも、Kさんは、横浜に昔住んでいましたが、家は失っているわけですから、行っても仕方がないのですが・・・。そこで、途方にくれて、稲葉さんたちに連絡し、都内で保護決定を受けたそうです。ただし、ここでも、結構不当な扱いがあったそうです。

 皆さん、今回の事件で、生活保護申請そのものが抑制されてしまうのではないか?という懸念を共通してもっておられました。

 「今、成果をあげている『同行申請』も、威圧とみなされかねない」「そもそも、同行者がいないと生活保護申請が難しい実情がおかしい、という認識」でも一致しました。

■行政行為の不透明化招くカメラへの弾圧

 さらに、フリーター全般労組・ムービーユニオンの根来祐さん、Media Champonの山川宗則さんからは「カメラと公共性」ということで問題提起がありました。

 根来さんは、フリーター全般労組が主催するデモなどでカメラを担当しておられます。「(公安刑事など)公務員の違法行為を抑止する機能をビデオ撮影は持っている」。「生活保護でも、水際作戦により死を選ぶしかない状況の予防につながる。カメラがあることで、心の持ちようも違ってくる」と指摘しました。

 そして、「一人の偉大なジャーナリストより、100人の市民がカメラを回して表現することが大事ではないか」と提起しました。

 山川さんも、「今回の事件で、行政行為が不透明化」しかねない、と懸念しました。

■「公務撮影」で「隠し撮り」橋下知事は喝采、「堂々」のAさんが逮捕

 わたしからは行政職員として、
 「大阪府警の暴力団担当がユニオンぼちぼちにガサ入れをしたそうだが、おそらく、『行政対象暴力』への対応として、通報したのではないか?暴力団員の人口比が全国平均に比べて2倍程度(筆者注:ただし地場の暴力団が強く、山口組は存在しない)と高い広島県(県庁)でも、ヤクザが押し寄せてきた際の訓練を年1回実施している。わたしの勤務する庁舎でも遠くない過去にヤクザが逮捕された例もある」。
 「ただ、今回のように、市民の正当な要請とヤクザの脅迫を意図的にごちゃ混ぜにしているのはおかしいと思うし、公安が担当でないからといって「政治的弾圧ではない」とはいえないと思う」。
 「公務員の仕事は天下に恥じないものであるべきだから、撮影されても構わない。昨年、橋下徹・大阪府知事が府立施設を隠し撮りした際も同じ理屈で喝采を浴びている。ただ、隠し撮りした橋下知事は拍手喝さいを浴びる一方、Aさんは逮捕された。同じ大阪府内で起きたことなのに、こんなに扱いに違いが生じたのは不公平だ!」と申し上げると拍手をいただきました。

■犯罪防止のための記録に過ぎない!

 その後、「集会宣言」を採択しました。
 宣言では、事件の経過に触れた上で、「同行申請が習慣化されるまでに『水際作戦』が横行し、生活保護申請者の生活が軽んじられる中」で、Aさんは「違法な措置を加えられないよう、犯罪防止のために記録を行なったに過ぎない」と指摘。

 そして、今回の不当逮捕について、「申請者の身体を何十日も拘束し、起訴までするのは明らかに非常識であり、生活の危機に瀕した人が生活保護申請することを今後とも恐怖により抑圧し『水際作戦』を助長する横暴でしかない」と非難しました。

 また「福祉事務所は公共の場なのだから撮影されるのをやましがるのはもってのほか」と指摘。行政に抗議するとともに、Aさんの即時釈放を求め、集会を解散しました。

■「政権交代だけ」では人権は守れない

 今回起きたことは、結局、行政(憲法遵守義務がある)生活保護申請をなかなかさせないでおいて、憲法25条の生存権を侵害する。それはおかしいと、国民が声を上げたら、「職務強要罪」などとこじつけて逮捕する。

 結局、「人権を保障できないものだから、力で押さえつけるしかない」今回の事件はそういう構図で捉えられます。この事件は、どこかほかの貧しい国ではなく、日本でのことなのです。

 そして、逮捕要件は政権交代前の事件であるにしても、逮捕自体は政権交代後に起きている。このことに、わたしは現与党第一党の一員としても衝撃を受けています。

 政権を変えた「だけ」ではだめなのだ。そのことは残念ながら認めないといけない。まずは、Aさんの釈放を勝ち取らないといけません。生存権を求めることを、押さえつけるようなことを許してはいけない。

 それと平行してマクロ的な課題にも取り組まないといけない。自治体が水際作戦に打って出る背景にある地方の財政難を打破せねばならない。小泉政権による地方交付税のカットなどによるダメージを回復しないといけません。そういう政策を現政権が取るよう内部から求めるのも義務だ、と感じます。
◇ ◇ ◇
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なぜ生活保護申請に同行者が必要なのか? (海形マサシ)2009/12/25
http://www.news.janjan.jp/living/0912/0912244745/1.php

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