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寺澤有氏に聞く―「記者クラブ訴訟」判決の意味

清水直子2006/02/17
「記者クラブに加盟していないフリーランスのジャーナリストが記者席に座れなくても、差別でもないし憲法違反にもならない」このような判決が1月25日、東京地方裁判所民事第50部(奥田隆文裁判長)で、言い渡された。
日本 マスコミ NA_テーマ2
 裁判所が司法記者クラブ加盟社記者だけに傍聴席と判決要旨を用意したことが、日本国憲法第21条(取材・報道の自由)や同第14条(法の下の平等)に違反するかどうか争われていた裁判で、東京地裁は、原告の訴えをすべて棄却、以下のような判断を示した(1月25日、東京地方裁判所民事第50部・奥田隆文裁判長)。

 「裁判所が、法定内に記者クラブ加盟社のための記者席を用意し、加盟社の記者に判決要旨を配布しているのは、公的機関として国民への情報開示義務と説明責任を果たすためにしているわけではない。記者クラブ加盟社の報道の自由や取材の自由を保証するためにしているわけでもない。単なる便宜供与に過ぎないのだから、記者クラブに加盟していないフリーランスのジャーナリストが記者席に座れなくても、判決要旨を受け取れなくても、差別でもないし憲法違反にもならない」 

 原告は、警察の不正や腐敗問題を中心に取材執筆活動をしているフリージャーナリストの寺澤有さん(39歳/経歴は下欄をご参照ください)。寺澤さんは、記者クラブ加盟社の記者と異なる差別的な扱いにより不利益を被ったとして、国家賠償法に基づき国に248万円の賠償を求め、2004年10月12日、東京地裁に提訴していた。

 「国民の『知る権利』をないがしろにする極めて不当な判決だ」として、2月2日、東京高等裁判所に控訴した寺澤さんに、今回の判決の意味と記者クラブ制度の問題点について聞いた(聞き手:清水直子)。

――裁判所でのどんな扱いが憲法違反と主張されたのですか?

 まず、2003年4月21日、札幌地裁における稲葉圭昭被告(元北海道警警部)の銃刀法違反などの判決公判(小池勝雅裁判長)のときのことです。ぼくは、90年代半ばから「警察が暴力団の犯罪を見逃すかわりに、押収丁数アップのためにけん銃の提供を受けている」と告発してきたこともあって、これはぜひ傍聴しなければならない公判でした。

 そこで事前に傍聴席1席と判決要旨1部を用意してほしいと札幌地裁へ文書で申し入れたのですが、どちらも拒否されました。結局、当日は傍聴席の抽選の列に並んだものの外れてしまい傍聴できなかったのですが、記者クラブ用には23席が用意されていました。

 03年7月24日には、東京地裁でフィクサーの大塚万吉こと趙万吉被告の恐喝未遂の初公判(合田悦三裁判官)がありました。趙被告は、消費者金融の武富士が、フリージャーナリストの山岡俊介さんの自宅の電話を盗聴していたり、警察から大量の犯歴などの個人情報を入手していたことをマスコミへ情報提供していた人です。

 (※ 2003年11月14日、ジャーナリスト、山岡俊介さん宅の電話を盗聴した疑いで、消費者金融の業界最大手、武富士の元専務たち5人が、警視庁に逮捕された。参考:情報紙 ストレイ・ドッグ(山岡俊介取材メモ)「武富士」

 武富士は大手メディアに巨額のCM料や広告料を支払っていました。新聞やテレビは、大スポンサーについての趙被告の情報提供を黙殺し、山岡さんやぼくのようなフリーランスが雑誌で記事を書き続けていました。そのさなか、趙被告は警察と武富士との謀略ともいえる恐喝未遂容疑で逮捕されたのです。

 (※ 武富士は、独自取材に基づいて同社に批判的な記事を書いたフリーランスのジャーナリストや内部告発した元社員に対しては、次々に高額な損害賠償を請求する訴訟を起こした。参考:週刊金曜日「同時ルポ 武富士裁判」

 すでに警察と武富士との癒着が国会でも取り上げられていたにもかかわらず、不可解なことに、趙被告の初公判は、一般傍聴席15席、司法記者クラブ席5席という東京地裁最小の法廷で行われました。山岡さんとぼくが開廷約30分前に到着したとき、一般傍聴席はすでに満席で、「立ち見でもいい」という人たちが数十名もいる始末。我々が空いていた司法記者クラブ席に座ったところ、裁判所の警備担当者から実力で排除されました。(記事2ページ目につづきます)
◇ ◇ ◇
寺澤有(てらさわ・ゆう)ジャーナリスト
 1967年東京都生まれ。90年、中央大学法学部卒業。在学中から、自動車専門誌『ニューモデルマガジンX』(三栄書房)で、交通行政の問題を告発する連載を始める。以後、フリージャーナリストとして警察、検察、裁判所、会計検査院など、聖域になりがちな組織の腐敗を追及。主要週刊誌・月刊誌でスクープを連発してきた。警察問題を扱った著書に『警察庁出入り禁止』(風雅書房)、『おまわりさんは税金ドロボウ』『警察がインターネットを制圧する日』(編著、メディアワークス)ほか。製造物責任法(PL法)に関する著作では『PL法事始め』(共著、三一書房)、『欠陥商品のトラブル解決法』(風雅書房)がある。
 「共謀罪反対 THE INCIDENTS」編集長
 「共謀罪に反対する表現者たちの会」共同代表
寺澤有氏に聞く―「記者クラブ訴訟」判決の意味
2004年10月12日、第2次記者クラブ訴訟提訴当日に、 社団法人日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見したときの写真。「FCCJ機関誌より」
寺澤有氏に聞く―「記者クラブ訴訟」判決の意味
6月、ソウルでオ・ヨンホ『オーマイニュース』最高経営責任者と会ったときのもの(左から寺沢氏・オ氏)

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