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日中をビデオで繋ごう〜「東京視点」代表・可越さんに聞く
2006/09/25
「身近な日本を中国へ」、「身近な中国を日本へ」伝えることを目指し、日中双方のメンバーが撮影した映像を配信する民間団体
「東京視点」
は23日、東京・新橋のビクターホールで、結成5周年イベントを開催した。イベントには約150人が参加。プロモーション映像の発表や、優秀作品の上映、中国での新企画の説明、「餃子パーティー」などが行われた。
「東京視点」は、在日中国人の視点と日本市民の視点で、身の周りの日常を映像として捉え、日本語と中国語によりインターネットを通じて同時配信している。2001年10月の配信開始以来、2週間に1本のペースで10分前後の作品を発表。これまで配信した作品は120本以上になった。作品リストの一部から、テーマの広さと独特なアングルを垣間見ることができる。
・日本で暮らす中国人の日常:
「日本語学校」「在日中国人カラオケ大会」「劇団四季で頑張る中国人ダンサー」「ある中国系女性の日米体験」「中国帰国者を訪ねて」──など。
・身近な日本人の顔:
「中華学校の日本人生徒」「事実婚を選んだ家族」「日本の絵本作家」「義父は元国鉄機関士」「ある二人の戦後」──など。
・日本の社会側面:
「狂牛病騒動」「東京のケイタイ生活」「きょうは何ゴミの日?」「デモについての思考」「スマイルって0円?」──など。
・日本の文化:
「麻雀?麻将?」「日本の同人誌」「猫と元旦」「学園祭」「女形を目指す少年」「刹那の野外劇場」──など。
ビクターホール(東京・新橋)7Fにある会場の様子
イベントで上映された映像作品の一部リスト
「東京視点」代表・可越さん
左:下村健一さん 右:映像作品『きょうは何ゴミの日』の作者・陸宇輝さん。彼女は現在、北京で環境保護ビジネスを立ち上げている
可越さんに支えられながら、挨拶をする八木ヶ谷妙子さん(右)
映像作品『平塚七夕祭り』の制作スタッフ:撮影・構成=久米亜里砂さん(左)、アニメ制作=佐藤均さん(右)
「東京視点」の5年間は、代表の可越さん(33)をなくしては語れない。彼女の個人的な経験から「東京視点」の構想が生まれ、彼女の情熱が人々を惹き付け、次々と新しい参加者を巻き込んできた。5周年イベント前日の22日、可越さんにインタビューをした。
「東京視点」の誕生まで
可越さんは中国・吉林省長春市出身だが、日本との縁が深かったという。
「母方の祖父は、『司馬桑敦』というペンネームで文学活動をしていました。国共内戦後、彼は中国本土から台湾に渡り、大手紙『聯合報』の日本特派員として、1950年代から20年以上を日本で過ごし、激動と復興の日本社会を目撃しました。直接会うことはありませんでしたが、母親から祖父のことをいろいろ聞きました」と可越さんは語る。
母親の勧めと、祖父の足跡を辿ってみたいという気持ちに後押され、可越さんは大学で日本語を専攻。1994年に留学生として来日した。
来日してまもない頃、彼女は東京杉並区の安アパートで下宿していた。大家さんは外国人留学生を支援する民間団体
「もくれんの家」
代表である八木ヶ谷妙子さん(93)だった。「普通の大家さんではなかった。関係ないと思っていたところも、いろんなことを言ってくる」と可越さんは振り返る。
当初は生活習慣の違いもあって衝突することも多かった。が、八木ヶ谷さんに叱られて泣いたり、支えられて感動したりしたことで「人生の大先輩として、かけがえのない、自分のおばあちゃんとなっていった」と可越さんはしみじみ語る。八木ヶ谷さんとの10年にわたる交流から生まれたビデオ作品『私の日本人おばあちゃん』は、昨年の「第27回東京ビデオフェスティバル」で優秀作品賞を受賞した。
2001年、東京大学大学院学際情報学府修士課程に在学していた時に、可越さんは「自分達で番組制作を体験しながら、メディアリテラシーを学び、実践することができないか」と考え、「東京視点」を設立した。中国人留学と日本人大学生たちが中心となって、カメラを持って東京を回り、情報を発信するという新たな手法による国際交流の形を模索する。
可越さんは「最初は何人かの学生だけが集まる学内グループでした。1年目に先生たちの助けでカメラや編集室を使わせて頂き、2年目は企業のオーナーさんが私たちの情熱に共感して下さり、オフィスを提供してくれました。また
『人民網』
(中国の新聞『人民日報』ウェブ版)は無料でサーバーを提供してくださいました」と初期のドタバタを振り返る。
「東京視点」のスタイル
「“私もできる”というのではなく、“私だからできる”というような作品を作りましょう」。「東京視点」の成立以来、顧問を務める市民メディア・アドバイザーの下村健一さんは、そうアドバイスしてきた。
その言葉に、可越さんは大きく頷く。初心者でもチャレンジできる敷居の低さは、「東京視点」の魅力のひとつだ。そして、そこからもう一歩進み、独自のものをつくる。マスコミの手法にとらわれ、プロの真似をしない。ノンプロならではの目線と感性を生かし、個人の色を前面に出すことが重要だという。
制作チームの編成にも工夫を凝らしている。「なるべく日本人と中国人を一緒に入れるようにしています」と可越さん。日本人と中国人の感覚と考えの違いから、けんかすることもしばしば。しかし「けんかもコミュニケーションのうち。本音でぶつかり合いながら、相手を知る」と前向きにとらえる。「東京視点」での異文化コミュニケーションは、完成した作品を観て意見を出し合うだけではなく、作品を作る段階から始まっている。
取材して編集したビデオは、編集会議で試写する。「この試写会こそ、東京視点の最大の魅力だ」と、可越さんと下村さんは口を揃える。試写会でメンバーたちとアドバイザーの意見をもらい、後の編集に反映させる。再度編集したものを再び試写にかけ、意見を受けて再編集をする。作者がメンバーの「愛のむち」に激しく打たれることもあるが、受ける刺激とインスピレーションも強い。試写会での白熱した議論に鍛えられ、みるみるうちに作品の完成度が高くなっていく。
「東京視点」でめざすもの
可越さんは、「東京視点」の活動で「2つのことを追求したい」と語る。1つは、日本人と中国人が本音を語り合う場を作って理解し合う方法を模索したい。来日して12年、それは可越さんにとっては切実な大問題で、取り上げつづけてきたテーマである。
そしてもうひとつの目的は、メディアリテラシーを理解し、実践したい。「メディアを使いこなす能力。メディアが流す情報を取捨選択する能力。適切な手段で自分の考えを他者に伝達する能力。メディアリテラシーを構成するこの3つの能力を、ビデオを製作するプロセスで培う」と可越さんは考えている。
最近、「東京視点」の代表として、可越さんのマスコミでの「露出度」が増えてきたという。この半年だけでも、6月にNHK総合テレビの番組「東京いま人」に生出演。7月にフジテレビの番組「オナジソラノシタ」に取り上げられ、9月には朝日新聞の「ひと」欄にも紹介された。ブレークの予感もするが、本人の反応は冷静だった。
「マスコミに取り上げてもらえたことは素直にうれしいのですが、テレビに映っているのは本当の自分なのか?と疑問を感じることもあります。番組や記事の長さの制限もありますので、自分の良い一面だけが描かれていたと思いますね」
「9月上旬の市民メディアサミットに参加した時に、知り合いの皆さんに『テレビ、新聞に出ているのを見ましたよ。すごいですね』などと声を掛けられましたが、圧倒的に強いマスコミの影響力を前に、“マス”メディアと市民メディアの区別化をどうはかればいいのか?『東京視点』をどう位置づければいいのか?改めて考えさせられました」
映像での日中交流を広げたい
映像での日中交流に対する可越さんの熱意とパワーは、「東京視点」にとどまらない。03年の大学院卒業後、「日中映像コミュニケーション株式会社」を設立し、日本と中国の映像コンテンツの交流に本格的に取り込んでいる。
05年、彼女の会社のコーディネートにより、TBSの番組「世界遺産」の中国での放送が実現した。また、中国のテレビドラマなども日本のテレビ局にも売り込もうと頑張っている。
可越さんは「中国のテレビドラマ、特に現代の作品は、社会や文化を反映するだけでなく、人々の感情や感動も映し出す。これからは、もっとたくさんの中国のテレビドラマを日本に紹介し、日本と中国の庶民レベルの理解を深めてもらいたいです」と語る。
しかし、作業は順調とはいえない。著作権の問題や高い放映権料などが絡んで、番組が敬遠されてしまうこともしばしばあるという。また、すっかり冷え込んだ政治の「空気」に影響され、両国の国民感情も重く曇っている。こうした状況は、文化交流にも微妙な影を投げかけ始めている。
映像による日中交流。まだぶつかる壁は高いが、可越さんは「難しいけれど、だれかがやらなければいけません。時間をかけてゆっくりやるしかない」と、使命感を感じている。今後は「北京視点」と「上海視点」の設立も計画。中国メディア大学(北京市)の学生や、中国で暮らす日本人たちを中心に、身近な中国の映像を日本に伝えていきたいという。
資金、機材、人材の確保などの困難にも直面しているそうだが、映像での日中交流を拓くために、地道な努力を続けてもらいたい。
関連サイト:
「東京視点」
(日本語版)
(曾理)
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[21708] 日中ビデオ交流、すばらしい!
名前:安住るり
日時:2006/09/26 10:40
9月9日の朝日新聞の「ひと」欄は切り抜いていましたが、この記事で、どういうことなのか、よく分かりました。
「北京」と「上海」からの日常の映像が流れるようになったら、中国嫌いのひとたちに、まず観てもらいたいですね。