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文芸社・新風社の盛衰と自費出版(3)自費出版を装った「協力・共同型出版」に横行する水増し請求

松田まゆみ2006/10/27
自費出版と「協力・共同型出版」は契約内容が相当に違うが、ほとんどの素人「著者」は、それを理解していない。それれをいいことに業者は、「協力型」で契約し、水増し金額を請求するケースが多い。
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 自費出版の場合、制作会社や印刷会社が著者と制作請負契約を交わします。制作費は印刷や製本、編集者などの人件費、また会社の維持経費などに、会社の利益を加えた代金です。会社と顧客である著者との間で合意が成立した価格であれば、そこに多額の利益が含まれていたとしても契約違反とか詐欺にはなりません。訪問販売で高額な布団を買ったとしても、本人がその値段に合意して買ったのであれば、詐欺にはならないのと同じです。

 しかし、商業出版や協力・共同型出版の契約では、出版社が自社の所有物をつくるのですから、制作費というのは出版社が印刷所や人件費、諸経費として実際に支出する経費などの合計です。自費出版の場合は、印刷や製本の費用は原価ではありませんが、この場合は原価ということになります。

 もう少しわかりやすく説明しましょう。洋服を製造販売する会社が商品のジャケット100着をつくるとしましょう。その制作費というのは、材料費や縫製の人件費など制作に要する実費です。会社は制作実費に利益を上乗せした価格でジャケットを販売します。ところで、あなたが同じジャケット100着をその会社に注文したとしましょう。その場合は、実費の制作費を請求されるのではなく、利益を上乗せした販売価格を請求されることになります。商業出版や協力・共同型出版における制作費は前者の制作実費に相当し、自費出版の制作費は後者の利益込みの価格にあたります。

 昨年の記事にも書きましたが、私と文芸社との契約では、請求された制作費は実費ではなく、多額と推測される利益が含まれていたことが明らかになっています。つまり契約上は実費でなければならないにも関わらず、制作請負契約と同じ利益込みの請求になっていたわけです。多田文明氏の著書でも、制作原価よりかなり高い費用を請求されていたことが指摘されており、こうした契約違反の水増し請求が横行しているものと推測されます。

 もっとも、業界では協力・共同型出版の制作費に出版社の利益が含まれているということは、以前から知られていたことです。著者には実費かどうかわからなくても、出版業者は実際の印刷費や編集費などがわかっているので、実費ではないと判断できるのです。

 文芸社は、渡辺勝利氏を名誉毀損で提訴した裁判 の中で、協力出版では商業出版の契約書のひな形をベースにしており、本の所有権は文芸社にあることを認めています。文芸社は自分の所有物をつくるのですから、その制作費は実費以外にありえないことは当然認識しているでしょう。ところが筆者に請求した制作費は一般的な自費出版の相場と同程度なので正当だと主張したのです。高額な制作費を正当化するために、利益込みの自費出版の制作費と対比させて何食わぬ顔をしていたのです。ところがこの矛盾を問題視する人はほとんどいません。

 多くの著者が自費出版における制作費と協力・共同型出版における制作費が違うことを理解せず、どちらも大差ないと思い、契約しています。出版社は実費を上回る制作費を請求する一方、編集で手を抜くなどして制作費を切り詰めるとかなりの利益を得ることができます。こんな契約内容に合わない負担金が許されるのでしょうか?

 そもそも著者の支払った制作費の算出根拠を明らかにせず、それが実費であるか否かが著者に判断できないシステムであることが問題であり、疑惑を生みます。著者は印刷所の請求書などの証拠提出を求め、自分の支払った金額が実費であるかどうか、確認すべきでしょう。利益が加算されているのであれば、利益分の返還を求めるべきです。編集費やデザイン費などのソフト費用が適正であるかどうかの判断は難しいのですが、編集者がどの程度手をかけたかは、修正原稿やゲラでおおよそのことは分かるでしょう。

 文芸社は私の要求した見積明細の提示を「印刷会社との取引価格は教えられない」との理由で拒否し、全額返金での解約を申し出ました。後に、この見積金額には多額と推測される利益が含まれていることが分かったのですが、全額返金で解約してまで見積明細の提示を拒否したのは、費用について追及されることを避けたかったため、と思われます。

 制作費が利益込みになっている自費出版の場合は、著者に印刷会社との取引価格を教える必要はありません。しかし、出版社の商品の制作費を負担するという契約をした以上、取引価格を示さなければ請求金額が適切であるかどうか判断できないのですから、教えられないなどということ自体がおかしいのです。印刷会社の取引価格は秘密にしなければならないものではありません。印刷・製本代や人件費が公開できないのであれば、「制作費を著者負担」などとすべきではないのです。

 著者自身が見積もり費用の中味を問い、実費であるかどうか確認するという姿勢をとらなければ、適正な負担金など望めないでしょう。


前回の記事:
文芸社・新風舎の盛衰と自費出版(2)出版契約とはどんな契約なのか
文芸社・新風社の盛衰と自費出版(3)自費出版を装った「協力・共同型出版」に横行する水増し請求
写真はイメージです。記事の内容とは関係ありません

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