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新政権下で強まる記者クラブ批判

山本ケイ2009/11/25
新聞労働の現場から新聞労連・豊 秀一中央執行委員長に聞く



  政権交代により、首相会見や閣僚会見について記者クラブだけでなく外部のジャーナリストにも開放するか否かで議論が沸き起こった。その流れの中で記者会見と記者クラブの問題について全国紙も検証記事を掲載、インターネット上や雑誌ではフリーのジャーナリスト中心に記者クラブのあり方について様々な意見が発信されている。

 記者クラブで働く新聞労働者の側では今、記者会見や記者クラブについてどんな考えを持ち、どう対応しようとしているのか――。全国の新聞社の労働組合を束ねる日本新聞労働組合連合(新聞労連)の豊秀一委員長にこのほど、同労連としての対応や、豊委員長自身の考えについて聞いた。

新政権下で強まる記者クラブ批判 | 新聞労連・豊 秀一委員長(11月4日、大阪市内で)
新聞労連・豊 秀一委員長(11月4日、大阪市内で)
望ましい記者クラブについて議論
 ――新政権下で記者会見の開放について議論が沸き起こりました。こうした現状をどうとらえていますか。

 豊 記者会見のオープン化については歓迎すべきことだと思っています。新聞労連の立場としては94年にすでに提言をまとめており、記者クラブ加盟いかんにかかわらず、会見参加は自由にすること、記者クラブが要求した会見であっても同様であることなどを示しています。02年にも同じ趣旨の確認をしています。基本的には記者会見はオープンにし、知る権利に奉仕するためにもチャンネルが増えるという意味では歓迎すべきです。

 ――ところが首相会見ではフリーのジャーナリストは排除されました。その際に首相の意向ではなく、記者クラブ側の意向が働いたのではないかという批判があります。

 豊 前提となる事実を確認する必要があると思いますね。読売新聞の記事によると、<首相官邸では9月16日の首相就任会見に、首相官邸記者クラブに所属していない雑誌・専門誌記者10人が初めて出席した>とあります。また<この際、官邸側からネットメディアの記者やフリージャーナリストの参加について提案はなかった>としています。
  それぞれに主張と争いがあるのでコメントはしづらいですが、仮に記者クラブ側が排除したということであれば、オープン化の流れに逆行するものであり、参加させるのが筋だと思います。記者クラブ側が排除するというのは一般論としては受け入れられないでしょう。

 ――新聞労連としては記者会見や記者クラブについて今後はどんな対応をしていく方針なのでしょうか。

 豊 94年と02年の提言を踏まえ、新政権下で記者会見がオープン化されつつあるという流れの中で、記者会見や記者クラブ問題について新聞労連としてきちんとした対応を示すことが必要と考えています。10月31日に全国の新聞労働組合の新聞研究部部長会議があり、そこでも今後、議論していこうということになりました。
 具体的には在京の大手紙や通信社の新聞研究部のメンバーや、記者クラブ問題に関心がある全国の記者を集めて、この時代にどういう記者クラブのあり方が望ましいのか叩き台を作る方針となりました。月1回ずつの議論をしていき、来年の4月か5月にはシンポジウムを開いて叩き台を示しながら、市民にも参加してもらって公開の場で議論していきます。

権力に対する内視鏡の役割を果たすべき
 ――新聞研究部会議で出席者にアンケートを取ったところ、記者クラブのあり方について「記者クラブ自体は必要だが、何らかの改革は必要」とする意見が84%を占めたということですが、改革は進むのでしょうか。

 豊 これまでの新聞労連の提言の中でも抜本的改革を実は謳っているんですね。例えば記者クラブの構成については基本的に希望する全ての取材者に開かれるべきであるとか、加入についてもメディアの違いによって排除すべきでない、などです。記者室についても公権力の情報を取るためのアクセスポイントとして独占してはならない、他のメディアも使えるようにすべきだとしています。
 新聞協会もオープン化を言っていますが、にもかかわらず現場とのギャップが大きいということが最大の問題なのかなと感じています。新聞労連としてはメリハリのあるアピールをしていく必要があるのかなと思います。というのは現場に議論をどう下ろしていくのか、現場でやっている人たちとの乖離をどう狭めていくのかが課題になるということです。

 ――記者クラブ問題を論じる際にその功罪が議論されます。その点についてはいかがでしょうか。

 豊 功罪を考える際に基本的な視点として、報道機関になぜ報道の自由や取材の自由について憲法上の保障が与えられているかを抑えておく必要があります。報道機関が多様な情報を流し、それに基づいて市民1人1人が理性的な判断をしつつ、こういう社会、こういう政府を作っていかなくてはならない、政策がおかしければ別の政府を作るという民主主義を支える土台となる情報を流すことが知る権利に奉仕することになります。
  それでいうと、先輩の記者の言葉を借りれば記者クラブは権力の内視鏡であるべきということではないでしょうか。各省庁、国会を含めて権力に組織ジャーナリストが24時間張り付いている、常に中に入っていることが重要です。
 罪の部分で言いますと、当局との関係でミイラ取りがミイラになってしまう恐れもあるわけです。官僚の論理、政治の論理に支配され市民にどう伝えるかを見失う危険性もあります。それは公共空間をゆがめることになりますから問題です。あとフリーの人たちを排除するということになれば、情報にアクセスする自由を奪うことになり、言論の多様性をも奪うことになるので大きな問題です。

記者クラブ批判はオープン化で解消
 ――記者室についてですが、行政の中の空間を無償で提供を受け、場合によっては通信インフラまで税金でまかなっていることが、市民の理解を得られないのではないでしょうか。その上、外部の取材者を入れないということになれば公平性を欠くのではないですか。

 豊 本来、負担すべきところは各社で負担すべきだと思います。先ほどの権力に対しての内視鏡という観点で見れば、市民の知る権利に奉仕し、公共の福祉に合致するというのであれば、行政や政治の側が情報を提供することは責務ですから、公共のスペースを割くというのは民主主義のコストとして必要なのかなと思います。

 ――インターネットや雑誌などであふれている記者クラブに対する洪水のような批判、意見についての反論はありますか。

 豊 個々の記者クラブ批判について全て見ているわけではありませんが、基本的にオープンにして競争すればいいのではないでしょうか。決して敵対するものではなく、チャンネルが広くあればいい話しなのであって、組織でやっているメディアと、フリーの人、雑誌ではそれぞれ視点が違うのですから、誰にでもアクセスできるようにしながら、切磋琢磨すればいいのではないかと思いますね。
 ことさらに記者クラブ側が閉鎖的になるほど既得権を擁護しているという風に見られてしまう。そこはオープンにしてそれぞれが何をやっているのか見えるようになれば、批判の中で当たっているものもあれば、当たっていないものもあるでしょうし、そこはオープンにして全てさらけだすことで解消していけばいいのではないでしょうか。

 ――新聞労連ではこれまで、フリージャーナリストの上杉隆さんや、記者クラブや警察批判で有名な寺澤有さん、上智大学の田島泰彦教授ら様々な方々を招いて意見を聞いたり、勉強をされていると思いますが、それがどう組合員たちにフィードバックされているのか、また、新聞労連としての意見や考えは市民に向けてどう発信されているのかお聞かせ下さい。

 豊 上杉さんに関しては今年6月の新聞研究部中央集会にお招きしましたが、その様子は冊子にまとめて組合員に配布しました。その他も含めて具体的に改革の運動にまで届いているかというと、そこには至っていません。そういう議論を周知しているということに止まっています。
 予定している記者クラブに関するシンポジウムについては、できれば閣僚クラスにも来ていただき、記者クラブを批判している方々、必要性を感じている方も招いて、どういう記者クラブのあり方がふさわしいのか、きちんと議論できる場になればと思っています。シンポジウムの様子や、これから新聞労連として出す意見や提言は、市民誰もが見られるようにホームページで公開していきます。

記者クラブについての新聞労連と新聞協会の主な対応
  記者クラブ問題は数十年にわたって様々な場で議論されてきたが、政権交代によってインターネット上やフリージャーナリストの側から、そのあり方について疑問や課題を指摘されている。記者クラブ問題全体についての考証は改めて行う必要があるが、今回、豊委員長のインタビューに際して、批判・指摘される側の立場である日本新聞協会と新聞労連の主な動きをまとめてみた。

*1994年6月:新聞労連が記者クラブ改革についての提言をまとめる。主な点は(1)市民の知る権利に奉仕するために記者クラブ、記者室は必要(2)記者クラブは公権力に対して情報収集権の集団的行使を行うための自治組織である(3)記者室は原則、取材者だれもが利用できる(4)情報公開制度の確立が求められ、記者クラブ改革の実効は同制度実現とも密接な関係にある−の4点。

*2001年10月:長野県の田中康夫知事(当時)が「脱・記者クラブ宣言」を行うなど記者クラブ問題が再浮上、新聞労連は同宣言を考えるシンポジウムを開催し、記者クラブ改革の方向性について案をまとめる。

*2002年1月:日本新聞協会が「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」を発表。記者クラブは「取材・報道のための自主的な組織」とした上で「より開かれた存在であるべき」とし、記者会見の開放を訴える。

*2002年8月:新聞労連が「21世紀の記者クラブ改革にあたって−私たちはこう考える」を発表。希望する取材者が平等に使用できる「取材センター」の設置や記者会見を取材者すべてに開くことなどを提言。

*2006年3月:日本新聞協会が見解の一部を改定。「新たなメディアからの記者クラブへの加盟申請や記者会見への出席要請に対して、報道という公共的な目的を共有し、報道倫理を堅持する報道機関、記者クラブの意義・役割を理解・尊重し、運営に責任を負う報道機関には、クラブは開かれた存在」であり続けることを確認。

*2009年9月:新聞労連の新聞研究部で記者クラブ問題についての意識調査を実施、記者クラブのあり方について「記者クラブ自体は必要だが、何らかの改革は必要」とする意見が約8割を占める。新聞労連は記者クラブのあり方について叩き台を示す方針固める。

ご意見板

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[55606] フォロー取材しています
名前:山本ケイ
日時:2009/12/07 09:57
奥秋さま
コメントありがとうございます。
ご指摘の件、的確に指摘していただいた部分もあり、かつ私なりにも考えのあることがあります。実は今、記者クラブについてのフォロー取材を進行させています。その過程で長野県政記者クラブについてフォロー取材するかもしれませんので、その節はブログにあるメール宛に連絡させていただきますので、よろしくお願いします。
[55546] 脱記者クラブ宣言の事実誤認について指摘します
名前:奥秋昌夫
日時:2009/12/06 00:55
たまたま拝見しましたが、事実と違うことが書いてあるので見過ごしにもできず、指摘だけします。
名前:浅野健一さんが書いているこれ↓は事実と大きく違います。
<長野県庁でも実現して何の支障もない>
私は長野県で田中県政を長年取材しました。田中知事の会見のほとんどに出席し発言も数回しましたが、問題大有りでした。浅野健一さんはこの会見に、というか長野県庁に何回取材に来たのでしょうか?私は見かけたことがありません。事実を知らないで思い込みで書いていると思います。

脱記者クラブ宣言は田中康夫知事の情報操作の小道具でした。まったく評価できないものです。田中知事は一部のお気に入りのメル友記者を使って情報操作を何度もしていました。自分に都合の悪い質問をしそうな私などには何度挙手しても指名しないことが恒常化していました。

民主党の会見オープン化はぜひしてもらいたいことですが、その際、田中康夫知事の脱記者クラブ宣言をいいことであるかの例証にあげるのは間違いです。

また、山本ケイさんという方も、「脱・記者クラブ宣言」についてはうわべのことしか知らず、問題意識がないようです。
以前も、ここで間違ったこと書いているので、ついでに指摘しておきます。
記者クラブ改革、主婦が知事会見に出る長野県
http://www.news.janjan.jp/media/0809/0809066453/1.php
<長野県では記者クラブは無くなり、取材や報道の自由が強固になっていた。知事会見を完全開放したことで、これまで際立った問題も起きていない。>
記者クラブはマスコミ各社の任意でつくっている組織なので、なくなることはありえません。ただ、記者クラブが会見を独占的に仕切ることが問題で、それがなくなっただけです。かわりに田中知事が情報工作をして、以下のような問題のほか、多くの問題がありました。

山本ケイという方は一度行っただけなので実態を知らないのです。
上の記事に出てくる鈴木さんという主婦も私はよく知ってはいますが、この問題について語るなら私のほうがより適任だったでしょう。

田中知事はSBCの水野記者とグルになって特定の県議2人を名指しして選挙で落選させようと画策していたこともあります。

スクープ SBC記者が、議員名挙げて選挙で”落とせ”と田中知事にメール
http://blog.livedoor.jp/tuigeki/archives/13385387.html

記者クラブ制度の改革を望むあまり、事実と違うことを例に取り上げるのは改革から遠ざかることです。
脱・記者クラブ宣言の問題点について聞きたいなら私のブログからメールしてください。会うか電話で話しましょう。
[54951] 違う場での議論を
名前:山本ケイ
日時:2009/11/26 17:31
>明石さま
私の記事でのコメントありがとうございます。
少しお願いがあります。記者クラブ問題という
本質の点についてここで議論することは歓迎ですが
その他のことは別の場で問題提起いただければ幸いです。
[54950] 有名人登場ですか
名前:明石晶
日時:2009/11/26 17:18
これはこれは。
大阪経済法科大学の吉田康彦教授とともに、一貫して北朝鮮擁護の
論調を垂れ流して叩かれまくった、同志社大学の浅野健一先生では
ないですか。
先生のお名前を検索すると色々と出てきますね。
最近は、朝鮮新報に寄稿しないのですか?

[54949] 「開放」では解決しない、記者クラブ解体を
名前:浅野健一
日時:2009/11/26 16:09
豊さんの見解を読みました。貴重な意見ですが、一言注文があります。
 「記者会見」や「記者室」のありかたが問題ではなく、世界中で日本にしかない、「記者クラブ」(kisha-club)制度が問題です。同制度は、一種の職業(人種)差別であり、そのあり方、原理が誤っているのです。ある企業のある社員だけが公的なスペースを独占している原理が間違っているのです。
 あるジェンダーの人はだめ、ある国籍・宗教・肌の色の人はだめと排除しているのを、少しづつオープンにしても問題は解決しません。昔(入れるかどうかをクラブが決めている)、女性や外国人を排除していた企業メディアに、「優秀な人なら女性でもいい」とか「東京6大学など有名大学卒だけはOK」などと枠を広げろというのではだめでしょう。性差別を廃止して、男女同権を要求しなければなりません。
 韓国でも、長野県庁でも実現して何の支障もない「記者クラブ」廃止を議論すべきであって、どこまで広げるかを論じていても、本質的な解決になりません。
 それと、記者クラブ擁護の学者に意見を聞いてもむだでしょう。記者クラブ解体を主張する研究者からも真摯に意見を聞いてほしいと思います。
 労連が記者クラブ廃止を提起することを望みます。記者クラブ制度の「改革」を言うのは言葉、論理の矛盾です。間違った原理(ファシズム、人種差別主義、カルトなど)に“改革”はないのです。やめるしかないのです。
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