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奈良大和路・スローな旅(16)いにしえの奈良の都の八重桜
2007/04/29

 いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重に匂ひぬるかな 伊勢大輔(いせのたいふ)

(古い都があった奈良の八重桜は、献上された今日、ここ平安京の九重の宮中で色美しく咲き匂うのだなあ。)

 ご存じ『小倉百人一首』に登場する歌だ。もとは『詞花集』に収められていて、伊勢大輔は(「だいすけ」ではなく)女流歌人で、三十六歌仙の1人である。歌に詠まれた元祖「ナラノヤエザクラ」(=品種名)は東大寺知足(ちそく)院の裏山に植えられている。国の天然記念物で、奈良の県花に指定されている。奈良県内に咲く八重桜の多くは、この木を原木としている。


奈良ホテル(07年4月20日)




法華寺(奈良市 06年4月29日)



奈良公園(07年4月23日)



奈良県庁北(07年4月17日)



同左の落花(07年4月23日)



同左




 それにしても、奈良には八重桜が多い。ソメイヨシノはパッと咲いてパッと散る(ただし07年はちょっと様子が違った。参考記事:「関西の桜異変」)。八重桜は「ぼたん桜」とも呼ばれて数多くの園芸品種があり、ソメイヨシノが咲いた後で徐々に花をつけ、散るときもゆっくりと散る。色も白っぽいのから紅色まで、とりどりである。

 大阪・造幣局の「桜の通り抜け」に見られるように、八重桜はゴージャスで、「桜の女王」の風格がある(参考記事:「正しいお花見」)。その割に「日本列島さくら便り」にもあまり登場しないので、ここで紹介することにしたい。

 ご覧の写真は、奈良市内でごく普通に見られる八重桜である。私の好みでピンク系を撮ったが、知足院や県庁東のナラノヤエザクラは真っ白である。八重桜は長期間咲くので、今日現在でも、奈良公園では咲き残った八重桜とみずみずしい若葉とのコントラストが楽しめる。

 先日、所用で県庁近くを歩いていると、桜の周囲一面に花びらが散っていた。「落花風情」という言葉があるが、これもしみじみと心を打つものだ。以前「吉野山の桜(シロヤマザクラ)は、朝の5時頃、前の晩に散った花びらの上を静かに踏みしめながら歩くのが最高や」という人がいたが、その気持ちがよく分かった。

 奈良で八重桜を楽しむなら、近鉄奈良駅から歩いて回れる「奈良公園」が最も手軽でお勧めだ。来年のシーズンには、ぜひお訪ねいただき、いにしえの奈良の都の風情をお感じいただきたい。


筆者ブログ:日々ほぼ好日

(鉄田憲男)

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