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特集

【洞爺湖サミット オルタナティブ】WATCH事務局長 海渡雄一弁護士に聞く

小池正春2008/06/02
4月11日、サミット人権監視弁護士ネットワーク「WATCH」が結成された。その事務局長を担う海渡雄一弁護士に同ネットワーク設立について聞いた。すでに海外からのG8関係者の入国拒否が出ている中で、弁護士有志が市民社会の権利を守るべく集まった。
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【洞爺湖サミット オルタナティブ】WATCH事務局長 海渡雄一弁護士に聞く | WATCH事務局長 海渡雄一弁護士。
WATCH事務局長 海渡雄一弁護士。
 4月11日、サミット人権監視弁護士ネットワーク「WATCH」が結成された。事務局長海渡雄一弁護士に話を聞いた。

 「『NGOフォーラム』『G8を問う連絡会』の両団体からほとんど同時に『海外から人が入国することについていろいろ問題が起きるのではないか』といった問い合わせがありました。そういうことについて警鐘を鳴らすこと、情報を共有すること、簡単に言うとそういうコンセプトでWATCHはできたわけです。だから、純粋に後方支援部隊のようなものです」 

 海渡弁護士によると、この間の動向から、基本的に海外で活動していたというだけでは入国は止められないが、何らかの刑事犯罪を犯して、懲役1年以上の刑に処せられたという事実がある場合は入国できないようだ。また、逮捕暦がある場合、裁判で懲役1年以上の刑を受けていないということの立証責任を課せられる場合があり、大きな問題のようだ。一方、香港で1度逮捕されたことがある人が韓国経由で2度入国できた例もある。

 「すでに問題が起きています。だいたい、相談されてきていますが、事前にこれだけは勉強しておいてもらえればと思います。自力でまず、このQ&Aを読んでもらって、弁護士を呼ぶ前に準備してもらおうということです。それでこの間、研究していて分かったことは、上陸を拒否する時の一番大きな理由は“上陸目的”が不明確な場合だということです」(海渡雄一弁護士)

 観光目的でノービザでG8サミットに参加する場合、拒否される可能性があるという。むしろ、G8の集会に参加することが目的であることを明らかにした方がいいのではないか、という。会議への招待状があればそれを見せるのがいい。

 「その人に上陸拒否事由がない限りは拒否できません。サミットの評価はさておき、世界中からやって来る人たちが止められてしまわないように、このネットワークを作ったわけです。ネットワーク活動はいくつかありますが、今度は、6月12日に山下幸夫弁護士の講演会があります。逮捕されたときの対策を議論します」(海渡雄一弁護士)

 以下、結成趣趣意書およびQ&Aを許可を得て転載する。

◇ ◇ ◇
 

結成趣趣意書

1 サミットをめぐる情勢
 本年7月に、洞爺湖サミットが開催されます。関連するG8の会合は、東京、新潟、神戸、横浜、青森、大阪、京都などでも開催され、全国的な会合が開催されます。

 最近になって、サミットに向けて活動を計画しているNGO事務所を公安警察官が訪ねてきて、このサミットに向けての動きについて尋ねるなどの動きが目立ってきています。昨年、日韓共催のピース&グリーン・ボート(参加600名)の準備のために八戸に滞在した韓国人がネットカフェでのインターネットの使用を断られるというような問題も発生しています。

 今後、入国時審査が強化されて、サミット開催について何らかの活動を予定している海外のNGOメンバーが入国できないケースの発生も懸念されます。既に、このような懸念を裏付けるように、本年3月7日には、韓国のNGOメンバーが日本での会議に出席するために来日した際に成田空港で入国を拒否されて一旦帰国させられた事例(その後の再入国の際には入国が認められた)や、ロシアから貨客船で小樽港に入国しようとしたドイツ人が入国を拒否された事例が発生しています。

 最近の報道によると、サミット時の警察の厳戒態勢があたかも既定事実のように報ずる報道が目立つようになっていますが、これに対する批判的な考察はまだまだ乏しいように見受けられます。近時のサミットでは警察機関による暴力的な取締りも行われており、日本のサミットが世界的にも大きな注目を浴びることを考えると、今後、サミットに関連する市民活動が制限されたり、さらにはサミットに関連していなくても、それにかこつけて活動を制限される可能性があります。
このように、G8関連大臣会合やサミット開催時に少しでも過激な市民活動があったときに過剰な警備と取締りが行われる危険性が高まっていると考えざるを得ません。

2.サミット開催をめぐるNGO、民間団体の状況
環境や貧困開発、人権平和問題などに関わるNGOは、2007年1月に「2008年G8サミットNGOフォーラム」を結成し、このNGOフォーラムには、それぞれ違う分野で活動する団体100以上が集まって、政府への申し入れ、政策提言作り、シンポジウムなどの開催による普及啓発活動を行っています。サミットが開催される北海道の現地においても、2007年9月に「2008年G8サミット北海道市民フォーラム」が結成されて活動が始まっています。

 他方で、G8開催そのものに批判的な諸団体も「G8を問う連絡会」を結成し、既に活動を開始し、集会やデモなどを計画しています。この連絡会には日本平和委員会や平和フォーラムなども参加しています。

3.サミット人権監視弁護士ネットワークの趣旨
私たちは、以上のような情勢を踏まえて、本日、「サミット人権監視弁護士ネットワーク」”Watch Human Rights on Summit”を結成しました。私たちは、情報共有のためにウェブページ(ブログ)を作成し、人権侵害的な事件について法的なアドバイスと、必要に応じて弁護活動を提供することにしました。

 現在、この監視弁護士ネットワークには、北海道、青森、仙台、東京、広島、福岡の弁護士が参加しており、今後、さらに、北海道、京都、大阪などの弁護士にも声をかけて、ネットワークの輪をさらに広げていきたいと考えています。特に、海外から参加される方々の入国などに関連する問題が大きく関係しますので、入国管理問題に造詣の深い弁護士が参加しています。

4 ネットワークの活動の概要(予定)
(1) 情報交換のためのウェブ(ブログ)の開設
入国拒否や逮捕などについての最新の情報を随時提供する。
(2) NGO団体への法的なアドバイスの提供
海外から来るNGOのメンバーへの入管での対応や逮捕後の刑事手続続についてのマニュアルを作成し、英語版をウェブ等で提供する。
(3)市民活動に対する過剰規制に反対するアピール活動
警察による過剰な規制や警備が行われないように、様々な機会をとらえてアピールを行う。

5.体制

●代表
中村順英 (弁護士)
●事務局長
海渡雄一 (弁護士)
●事務局次長
市川守弘 (弁護士)
田場暁生 (弁護士) 
寺中誠  (アムネスティ日本事務局長)     
難波満  (弁護士)       
日隅一雄 (弁護士)
山下幸夫 (弁護士)
●事務局員  
亘理興  (司法修習生(ドイツ))
岡田健一郎(一橋大学院)
木下ちがや(一橋大学院)

●参加弁護士
中村 順英(静岡)
海渡 雄一(東京)
鬼塚 忠則(東京)                        
難波 満(東京)
日隅 一雄(東京)
寺中 誠(アムネスティ)
山下 幸夫(東京)
浅石 紘爾(青森)
阿部 潔(仙台)
市川 守弘(札幌)
松本 隆行(神戸)
大谷 美紀子(東京)
武藤 糾明(福岡)
足立 修一(広島)
和田 聖仁(東京)
田場 暁生(東京)
只野 靖 (東京)

◇ ◇ ◇


入管Q&A
(なお、入管に関する詳しい説明は、入管マニュアルをご覧下さい)
Q1:サミット関連で日本に入国し、滞在するためにはどのような手続が必要ですか?
Q2:ビザは必要ですか?ビザが免除されている国はどこですか?
Q3:入国手続の流れはどのようなものですか?上陸審査のときには何を聞かれますか?
Q4:上陸の条件に適合していることはどうやって証明しますか?
Q5:滞在先を決めておく必要はありますか?
Q6:前科・前歴がある場合は入国拒否されますか?
Q7:招待状は必要ですか?
Q8:入国拒否されたらどのようになりますか?

◇ ◇ ◇

Q1:サミット関連で日本に入国し、滞在するためにはどのような手続が必要ですか?
A:
 日本に入国するには原則としてビザを取得した上、パスポートコントロールで上陸許可を受けることが必要です。ビザとは、在外日本大使館や領事館により発給されるもので、外国人が日本に入国し滞在することが適していることを「推薦」するものです。ビザがあったとしても、上陸許可を受けられないと上陸できないことに注意が必要です。上陸許可は、パスポートコントロールで入国審査官の上陸審査を受けて、上陸の条件に適合していると認められた場合に与えられます。

 入国後、日本に在留し一定の活動をするためには「在留資格」が必要であるとされています。上陸許可の際、入国審査官が外国人の入国、在留目的に応じ、在留資格、在留期間を決定します。外国人は、在留資格が許容する範囲内の活動と通常の社会生活上の活動をすることが可能です。サミット関連で日本に入国する場合は、通常、「短期滞在」の在留資格に該当することになると考えられます。

Q2:ビザは必要ですか?ビザが免除されている国はどこですか?
A:
 原則的に必要であり、上陸する前に在外日本大使館や領事館で取得しなくてはいけません。ただし、「短期滞在」の在留資格については、60か国以上の国でビザが免除されています。ビザが免除されている国・地域のリストへのリンクは以下のとおりです。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/annai/visa_2.html
これらの国のパスポートを有する外国人は、「短期滞在」の目的の渡航にはビザは不要となります。

Q3:入国手続の流れはどのようなものですか?上陸審査のときには何を聞かれますか?
A:
 パスポートコントロールで入国審査官にパスポート、ビザ、出入国記録カードを提示し、上陸許可の申請をします。入国審査官は、パスポート及びビザが有効で、上陸の条件に適合しているかどうかをチェックします。入国審査官が、上陸の条件に適合すると認定すれば、指紋と顔写真を採取した後(拒否すると入国できません)、パスポートに上陸許可の証印をし、在留資格が与えられます。

上陸の条件とは、
(ア)パスポート及び、ビザが必要な場合には、ビザが有効であること。
(イ)申告した活動が虚偽のものではなく、
(ウ)在留期間が法務省令の規定に適合し(「短期滞在」の在留資格の場合は、90日、30日又は15日となっています)、
(エ)上陸拒否事由に該当しないこと。

 上陸拒否事由とは、例えば、以下の事由が挙げられます。

• 政治犯罪以外により刑に処されたことのある者(回答6参照)、
• 国際競技会や各国の首脳又は閣僚級の代表が参加する国際会議に関連して殺人、傷害、暴行、脅迫や建造物・器物損壊により日本又は第三国の法令に違反して刑に処され、若しくは日本から退去を強制され、若しくは第三国から退去させられ(退去・出国を命ずる処分を受けて自主的に退去・出国した場合や、入国・上陸を拒否された場合も同じ)、日本で行われる国際競技会・会議の経過、若しくは結果に関連して、又はその円滑な実施を妨げる目的をもって、当該国際競技会等の開催場所又はその所在する市町村の区域内若しくはその近傍の不特定若しくは多数の者の用に供される場所において、殺人、傷害、暴行、脅迫や建造物・器物損壊のおそれのある者、
• 法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行動を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者。

 入国審査官からは、特に、入国目的と滞在期間を尋ねられることが多いと考えられます。また、その他の上陸条件が満たされているか疑問がある場合には、それらについても質問がされます。

 なお、法務省は、警察庁・外務省と連携しながら、他国から情報収集を行っており、過去のサミット、APEC、WTOなどの国際会議の関連で他国で処分を受けた者の情報は蓄積されていると考えられます。入管実務上、過去に開催された国際会議の関連で他国で処分を受けたことがあれば、上陸拒否事由に該当するとされる可能性が高いと考えられます。

Q4:上陸の条件に適合していることはどうやって立証しますか?
A:
 入国審査官から上陸の条件に適合しているかについての立証を求められた場合に備えて、あらかじめ以下のような書類を用意し、必要に応じて入国審査官に提示することが考えられます。

1)日本から出国するための交通機関の切符又はこれに代わる運送業者の発行する保証書(例えば、航空便又は船便の復路の切符)
2)日本以外の国に入国することができる有効な旅券
3)在留中の一切の経費の支弁能力を明らかにする資料(事案によって異なりますが、例えば、公的機関が発給する所得証明書、預金残高証明書の原本を準備しておくことが望ましいです。なお、必要な経費については、日本での活動の内容や滞在期間によって異なるものと考えられます。)、
4)その他参考となるべき資料(例えば、招待状、参加する会議その他の会合関係の資料、滞在予定表など、日本での活動の内容を証明する資料であり、個別の事案によって異なります。)
 
Q5:滞在先を決めておく必要はありますか?
A:
 あらかじめ滞在先を決めた上、入国審査官から尋ねられた場合に答える必要があります。

Q6:前科・前歴がある場合は入国拒否されますか?
A:
国際会議に関連する前科・退去強制歴:
 入管実務上、過去に開催された国際会議に関連して、日本若しくは他国で、殺人、暴行、脅迫、建造物・器物損壊により、刑に処されたり、退去強制されたり、上陸を拒否されたりしたことがあれば、G8サミットに関連して、上陸拒否事由に該当するとされる可能性が高いと考えられます。

 それ以外の前科:
• 麻薬犯罪により刑に処されたことがある者、
• 日本又は日本以外の国の法令に違反して、1年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。ただし、政治犯罪により刑に処せられた者は、この限りでないとされています。また、「刑に処せられた」とは、刑の執行を受けたか否か、刑の執行を終えているか否かを問わず、執行猶予期間中の者、執行猶予期間を無事経過した者も含まれるとされています。何が政治犯罪に当たるかは議論のあるところですが、入管実務上、いわゆる純粋政治犯罪以外の政治犯罪、例えば、政治的目的から出た行為であっても、殺人、放火等の普通犯罪を構成するものは、「政治犯罪」には該当しないとされています。

Q7:招待状は必要ですか?
A:
 会議その他の会合に参加するため、ビザを取得する場合は、ビザの申請に招待状が必要とされています。上陸の申請では、必ずしも招待状が必要というわけではありませんが、日本での活動の内容を証明するために必要になる可能性がありますので、会議その他の会合に参加するために入国する場合は、招待状を準備しておくことが望ましいと考えられます。

Q8:入国拒否されたらどのようになりますか?
A:
 入国審査官が上陸の条件に適合していないと判断した場合は、直ちに特別審査官に引き渡され、口頭審理を受けることになります。この審理には、代理人及び親族又は知人の1人が立ち会うことができるほか、証拠の提出や証人尋問も可能とされています。

 特別審査官が上陸の条件に適合すると判断した場合は、上陸許可が付与されますが、特別審査官が上陸の条件に適合しないと判断した場合、その認定に服し出国するか、あるいは、その通知を受けた日から3日以内に 法務大臣に対し異議を申し出ることになります。

 法務大臣が異議の申出に理由があると判断したときには上陸許可が付与されますが、理由がない場合でも、「特別に上陸を許可すべき事情」があると認めるときは、その者の上陸を特別に許可(上陸特別許可)することができるとされています。

 異議の申出から裁決までの期間は事案に応じて異なっており、直ちに裁決がされない場合は、その間、空港であれば、ターミナルビル内の上陸防止施設又はその付近のホテルなどにとどまることになります。その費用は、自身で支出することになります。

 法務大臣が異議の申出に理由がないと裁決したときは、退去命令がおり、出国日・出国便が指定されます。退去命令を受け、遅滞なく日本から退去しない場合、退去強制手続が開始され、入国管理局収容場に収容されることになります。

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