井上ひさしさん
武者小路公秀さん
武者小路さんは、アピールの内容について説明しました。1つ目は、環境対策は弱者の視点から議論をしてほしいということ。2つ目は、「反テロ」に名を借りた戦争や人権の抑圧には反対であること。3つ目は、核兵器保有国は削減義務の履行をしてほしいこと。
武者小路さんは、サミットでの議論が、環境対策そのものより、技術的な問題を強調していると述べ、強者の視点ではなく、もう少し弱者の視点からみてほしい、と訴えました。
また、とくに強調したいこととして、核保有国であるG8の国々が、核拡散だけを問題にして、問題の本質である核保有については触れないことに言及し、「ただいけないと言うだけで、お茶を濁そうとしている」と述べ、G8の国々が自分たちの責任を自覚し、具体的な行動を通して自らの責務を果たすことを求めるアピールであることを明らかにしました。
次に、井上ひさしさんに発言を求めましたが、井上さんは「ありません」と答えました。井上さんが、「(言いたいことがいっぱい)ありすぎて…」とぼそっとつぶやくと、会場から笑いが起こりました。
小沼通二さん
小沼さんは、「戦争で世界の平和を維持するのはまちがっている」と述べ、(アメリカやロシアなどG8の国々が)核不拡散を言いながら、核をもっているのは矛盾している、と指摘しました。そのうえで、核をもっている国に依存しない国に切り替える必要があることを強調しました。
イタリアやドイツにはアメリカの核ミサイル基地があり、08年現在でヨーロッパに400発の核があるそうです。ボタン1つで核が飛んでいく危険な状況にある中、アメリカがやめると言い始めていることや、オーストラリア首相が来日したとき、最初に広島に行ったことや、核不拡散・軍縮国際委員会設置の提案をしたことなどに言及しました。
質疑応答
質問 世界平和アピール七人委員会として、これまでサミット開催のときアピールを出したことはあるのか。
答え なかったと思う。
質問 2000年の沖縄サミットのときは出したのか。
答え 沖縄のときもアピールすべきだったという反省がある。
質問 核不拡散だけでお茶を濁してもらっては困るというのはよくわかる。アピールの文面にそのことが書かれていない。
答え 文中に書いてある。サミット参加国8つのうち4つが核保有国。ドイツ、イタリアにはアメリカの核ミサイルの基地がある。核の傘に依存するのは日本とカナダ。核不拡散というだけでなく、自分たちはどうなのか。そのことを真剣に話し合ってもらいたい。やめた国務大臣とかやめた国防長官が言うのではなく、政府がちゃんと言うことが大事。これまでの91のアピールのうち、51が核と原子力に関するアピールだった。
質問 オーストラリアのケビン・ラッド首相が核不拡散・軍縮国際委員会の設立を提案したということだが。
答え ラッド首相の提案は我々と同じ考え。ぜひ、注目してほしい。
質問 洞爺湖サミットでアピールする動機について。
答え 環境問題だけでなく、核の問題も取り上げるというので、この際、日本政府にも、よその国にも(我々の主張を)伝えたいと思った。
答え G8が集まる以上、集まった国々が得意がるようなことを議論するのではなく、自分たちがつくりだしている問題について責任を感じてもらいたい。だが、いままでやっていたことを強化しているように見える。環境ビジネスは儲かると話し合っている。地球温暖化ははじまっている。一番困っている人のことをちゃんとやるべき。それだと儲からないので、環境ビジネス面ばかり見ている。核の問題と宇宙からの監視は関係がある。その問題についても七人委員会としてすでに取り上げている。宇宙からの監視も含め、テロが怖いだけでなく、監視の網の目をはる。核の問題、南北移住の問題、つながっている。責任をちゃんと認識したうえで議論をするなら支持するが、それをやらなければ支持できないよ、ということ。
質問 責任についてみんなで議論をしてほしいということだが、具体的にはどんなことか。
答え 地形でみると、南の方は、海底のすべて、宇宙空間のすべてが、核兵器を使ってはいけないと国際的に決まっている。もめているのは集まった国々。もう少し真面目にやれ、と。まず、自分たちのことを反省するサミットになってほしい。海流の関係で、カルフォルニア州の西太平洋に、大きなゴミ捨て場のようなところができている。世界中のビニールとかが、いまのところ分解する微生物がないものが世界の海流の関係で、6カ所ぐらいものすごいゴミだめができている。大量の分解できないごみが集まっているゴミ捨て場が海に6カ所あって、そのなかからかろうじて波の力で粉々になったものを魚が飲み込んでいるという悲惨な状態。そういうことをもうちょっと考えてもらいたいということ。サミットが南半球の非核条約を結んだ国からも参加できるような組織であってほしい。みんな、なんか危ない人ばっかり・・・。もう少し、自分のことを真面目に討論してくれということ。自分たちがやっていることを反省し、そういうところから世界全体のことを考えてほしい。今度こそ、8月に広島と長崎でサミットをやれる時代になればよい。
答え 広島と長崎に招待しているが来ない。
答え 日本を占領していたとき、アメリカは広島にだけは行かなかった。呉、尾道などには行っているのに、広島に入れなかったのは、自責の念にとらわれるからではないか。広島に行って仕返しをされたら怖い。長崎も同じ。まずいな、という感じ。あんなひどいことをしておいて、広島に行くのはまずいな、と。サミットに参加した人たちも、自分たちはまずいな、と思ってくれれば光明がある。
質問 オーストラリアのラビン首相が広島を訪問したということだが、広島にはこれまでほかの国の元首はきていないのか。
答え 正確にいうと、我々が調べた範囲では、連合国のなかできた人はいない。念のために広島で調べてもらっている。
答え 日本は47カ国と戦争をしていた。聖ヨハネ・パウロ2世が広島にきたときは、1年かけて日本語を学び、日本語で講演をした。素晴らしかった。(世界平和アピール七人委員会を)八人委員会にしても良いと思った。あのときも新聞の扱いは小さかった。全文を載せたいぐらいだった。読者は載っていないことはなかったことになる。20世紀は戦争と暴力の時代だったが、たくさん条約をつくって話し合いをしている。新聞やテレビや雑誌だけを読んでいると、ひどい世の中だと思うが、素晴らしいこともある。秋葉原で若者がおばあさんの手を引いて歩いていた、というのはニュースにならないが、明るい記事を載せると、読者も、世の中捨てたもんじゃないと思うのではないか。
答え 七人委員会は現実離れをしているという人もいるが、世の中変わった。冷戦も終わった。核兵器をなくすなんてとんでもないという固定観念にとらわれすぎている。アメリカも変わりつつある。日本だけがそのままだと足をすくわれるのではないか。我々は夢だけを語っているのではない。
答え 武装しないと国を守れない。これこそ夢。私たちは現実的。70,000あった核がいま29,000に減った。世の中、少しずつ前に進んでいる。女性の地位向上や、中曽根のころから労働組合の力がなくなったが、いまフリーターの人たちが組合をつくっている。長い目でみれば、世の中決して後退しているばかりではない。新聞はそういう記事を載せることで、読者に希望を与えることも大事なのではないか。
答え アメリカは核を4,000発、ロシアは5,000発、年々減っている。イギリス、フランス、中国は200〜300発。核は減ってきたが、ヨーロッパの400発の核がボタン1つで飛ぶようになっているのは異常だ。
答え 70,000発が29,000発に減ったのは、日本の被爆者や市民の力が大きいのではないか。日本人が大きな流れをつくり、良い方向に変えたのではないか。
答え 日本は京都議定書あたりで注目され、環境問題で国際社会の信用を獲得してきた。良いことだが、どういう形で環境を大事にするのか。開発途上国のCO2問題をどう解決するのか。企業に得になるような環境ビジネスだけを支持する。高収量の品種の改良ビジネスの議論はするが、農業が疲弊して困っている人のことをぜんぜん取り上げていない。いいことをやっても得になるいいことをやって、得にならないいいことはやらない。(メディアは)いいことの裏にいろいろにあることを伝えてほしい。
答え 最後に報告したい。今日10時、首相官邸やGサミット参加国の大使館にアピールを届けました。
小沼通二さん
◇ ◇ ◇
「北海道洞爺湖サミット参加国首脳への要望書」
2008年6月27日
世界平和アピール七人委員会
委員 武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野
井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了
世界アピール七人委員会は、北海道洞爺湖湖畔に集まるG8首脳各位に対し先進工業国の責任を自覚し、問題の根幹を捉えた的確な決定をくだされることを切に望みます。
いま世界は、拡大するグローバル市場経済のもと、原油などの価格高騰や食糧不足が現実化し、国家間でも各国内でも経済的社会的格差が広がり、社会不安や軍事紛争の危機を招いています。
世界の不安を取り除くには、民主的で公正な国際関係と市民社会の積極的な関与が必須であり、そこでの先進工業国の責務は重大です。今回の協議において、地球環境の保護、国際金融の規則ルール、国際的な人権の擁護、核兵器の禁止などについて、積極的な決定をくだされることを期待し、次のように要望します。
1)環境対策は弱者の視点から
私たちは、今回の協議が地球温暖化対策に対処しようとしていることを高く評価します。環境においても強者であるG8には、地球上のすべての弱者の視点に立って対策を講じる責務があります。
しかし、CO2削減などの技術的な施策に力点が置かれ、環境問題の根底にグローバル経済の影響があることへの認識があまり感じられないことに対して、違和感をいだかざるをえません。
たとえば日本はホスト国として、地球温暖化問題と食糧問題の不可分の関係を主要議題にしようとしています。それは評価しますが、提案の中心は、高収量の品種の開発・普及や農業技術の移転などです。もっぱら技術面を強調することで、原油や穀物価格の高騰を招いている投機マネーや、貧困層の食料を奪うことになるバイオ燃料の問題から目をそらすことがあってはなりません。
環境保全と開発の両立をうたい、開発途上国の協力を得ようとしていることは理解します。しかし報道によると、準備会議では、途上国への技術開発援助などが突出して議論されたようです。すでに温暖化の被害を受けている、そして今後ももっとも受けやすいのは、開発途上国の貧困層や、先住民など伝統的な生活を送っている人々、なかでも女性や子どもです。脆弱な社会経済状況を克服しようとしている人々や、その支援に当たっている国際的な市民運動が進めている、被害を未然に防ぐことができる国際的な仕組みつくりを支援するために、サミットにおいて真剣に議論されることを希望します。
CO2排出権取引については、環境保全に一定の効果はあるものと認めますが、国際投機マネーの流入が金融開発途上国への種々の阻害要因になりかねない危険に留意し、この制度が本来の目的を果たすべく配慮されるよう要請します
2)「反テロ」に名を借りた戦争や人権の抑圧に反対する
私たちは、今回の協議において、テロをはじめ国際組織犯罪の防止策が協議されることにとくに注目しています。「反テロ」戦争が、問題の文化社会的、政治経済的な根本原因の除去よりも、処罰と排除、監視と抑圧といった対症療法的な軍事的・警察的対策を重視していることに強い危惧を覚えます。
いまや監視体制は街角から宇宙までひろがり、テロ容疑者の尋問のための秘密収容所や、グローバル格差が生み出す難民・「非合法」移住労働者などの収容所が、南北格差の境界線に乱立して、新たな 「鉄格子のカーテン」をつくりだしている観がります。先進工業国の利害を優先するあまり、開発途上国の貧困層の不安と絶望を増大させるこうした対策は、先進工業国内の格差拡大とともに社会不安を助長し、テロと犯罪の温床となっている可能性すら見受けられます。
今回の協議では、「反テロ」戦争という発想を脱し、世界のすべての人々が平和で生存できる世界を構築する責任を確認されるように強く希望します。
3)核兵器保有国は削減義務の履行を
私たちは、核兵器保有国が未だに核兵器使用を否定していないことを大いに危惧しています。いかなる理由であれ、もし核兵器が使用されれば、人類史上最大の環境破壊になることに疑いの余地はありません。その意味で、今回、核兵器の拡散防止が協議されることを全面的に支持します。
しかし、核の平和利用と軍事利用の境界があいまいになっている今日、核兵器を保有したり、自国内への配備を容認したり、核の傘に依存するなどの安全保障政策を保持する国がある限り、核兵器不拡散を徹底させることは不可能です。
サミットの全参加国が、核軍備の縮小など核兵器不拡散条約6条に明記された約束をあらためて想起し、各国がただちに明確な具体的計画を策定し、速やかに実施に移すことを要望します。その意味からも、最近京都でオーストラリアのケビン・ラッド首相が発表した核不拡散・軍縮国際委員会の設立提案をサミット参加国が積極的に支持し、協力されることを要望します。