トップ > 特集 > G8洞爺湖サミット オルタナティブ特集 > 【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】「中古品」に化ける輸出ゴミ、途上国で健康被害も−NGOフォーラム・環境ユニット「3Rイニシアティブ」イシューリーダー・安間武さん(化学物質問題市民研究会)に聞く
特集

【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】「中古品」に化ける輸出ゴミ、途上国で健康被害も−NGOフォーラム・環境ユニット「3Rイニシアティブ」イシューリーダー・安間武さん(化学物質問題市民研究会)に聞く

荒木祥2008/07/07
アジアやアフリカ諸国は、資源の有効利用などに名を借りた先進諸国の「ゴミ輸出」に神経を尖らせている。最貧国の最も貧しい人々は、先進国のために使われた船の解体で毎日のように命を落としている――安間武さんのお話をうかがった。
日本 ゴミ NA_テーマ2
目 次
1.途上国の人々の懸念と不信
2.ゴミが「中古品」として途上国に輸出される
3.廃船解体の問題、人命が犠牲
4.日本の廃棄物問題
5.国内処理原則と環境正義

 2008年G8サミット・NGOフォーラムの環境ユニットでは「気候変動」と「生物多様性」と「3Rイニシアティブ」の3つの課題を重点的に扱っている。「G8環境大臣会合2008神戸」で、廃棄物の「国内処理原則を実現しつつ、資源の国際循環を可能とする新たな3Rイニシアティブ」を求めた化学物質問題市民研究会の安間武さんにお話を聞いた。「3R」とは、削減(Reduce)、再使用(Reuse)、リサイクル(Recicle)を指す。

【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】「中古品」に化ける輸出ゴミ、途上国で健康被害も−NGOフォーラム・環境ユニット「3Rイニシアティブ」イシューリーダー・安間武さん(化学物質問題市民研究会)に聞く | <center>安間武さん(撮影:山本ケイ) www.news.janjan.jp/special/0805/0805308327/1.php</center>
安間武さん(撮影:山本ケイ) www.news.janjan.jp/special/0805/0805308327/1.php
途上国の人々の懸念と不信

 アジアやアフリカなど発展途上国の人々は、先進諸国から有害廃棄物が送り込まれているという実感を持っており、日本やアメリカなど先進諸国に対する根強い不信感があります。NGOフォーラム環境ユニットは3つの課題のひとつとして「3Rイニシアティブ」の問題点を取り上げ、神戸で行われた環境大臣会合をはじめ、様々な機会をとらえて、「3Rイニシアティブ」がもたらす途上国の人々の懸念と不信を明らかにしてきました。

 2004年8月の米シーアイランドG8サミット(議長国・米)で小泉首相(当時)とブッシュ大統領が共同提案し、2005年4月の3Rイニシアティブ閣僚会合(東京)で立ち上げられ、日本政府が推進している3Rイニシアティブは、「資源の国際循環」をうたい、その目標のひとつに「貿易障壁の低減」があげられています。途上国の人々は、この目標が有害廃棄物や廃棄物寸前の中古品の途上国への輸出促進につながっていると考えています。

 有害廃棄物の国境を越える移動を管理するために、国際的にはバーゼル条約があります。しかし資源の有効利用などを名目に、相手国の同意があれば有害廃棄物を輸出できるのです。このバーゼル条約の抜け穴をふさぐために、いかなる目的であろうと有害廃棄物の先進国から途上国への輸出を禁じるバーゼル禁止修正条項が1995年に採択され、現在63カ国が批准しています。しかし、日本、カナダ、アメリカ、オーストラリア、ニュージランドなどが強く反対しており、いまだに発効していません。

 また日本政府が推進するアジア諸国との2国間経済連携協定の関税削減リストには有害廃棄物が含まれており、途上国の人々はこのような協定は有害廃棄物貿易を促進するものであると強く反対しています。2006年に調印された日本フィリピン経済連携協定についてフィリピン国内に強い反対があり、フィリピンはいまだに批准していません。

【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】「中古品」に化ける輸出ゴミ、途上国で健康被害も−NGOフォーラム・環境ユニット「3Rイニシアティブ」イシューリーダー・安間武さん(化学物質問題市民研究会)に聞く | <center>出典:【3Rイニシアティブ】ポジションペーパー www.g8ngoforum.org/environment/uploads/envi_unit_080306.pdf</center>
出典:【3Rイニシアティブ】ポジションペーパー www.g8ngoforum.org/environment/uploads/envi_unit_080306.pdf
ゴミが「中古品」として途上国に輸出される

 先進国から途上国に送り込まれる電子廃棄物の惨状については、アメリカのNGOバーゼル・アクション・ネットワークが2002年に中国のグイユ、2005年にナイジェリアのラゴスにおける電子廃棄物のリサイクルの状況をビデオ撮影して初めて世界に報道し、衝撃を与えました。ナショナル・ジオグラフィック誌やENVIROASIAなども中国や途上国のこのような実態を報道しています。

 野焼きや酸による貴金属回収などの危険な原始的リサイクル作業が人々の健康を脅かし、大量の電子廃棄物の残骸が所かまわず投棄されて地下水、土壌、大気を汚染しています。アメリカからナイジェリアに輸出される中古品名目のパソコンで実際に修理して使えるのは25%であり、再使用できない残りの75%は、金目の金属などを取り出した後、その残骸は水辺や空き地に投棄されています。

 先進国から途上国に有害廃棄物や廃棄物寸前の中古品が輸出されるのは、先進国は廃棄物処理コストが高く、一方途上国はコストが安く環境基準も緩いからです。すなわち、“市場原理”にも基づいて、高いところから低い所に流れ込むのです。中古品名目ならバーゼル条約の対象になりません。したがって、中古品と廃棄物を明確に区分する基準が必要です。

廃船解体の問題、人命が犠牲

 G8サミット/神戸環境大臣会合では「3Rイニシアティブ」の問題について重点的に問題提起をしましたが、アジアにはもうひとつの“大きな”有害廃棄物問題があります。バングラデシュ、インド、パキスタンなどで行われている先進国の廃船の解体問題です(関連サイト:発途上国における船舶解体問題)。

 寿命を終えた廃船は資材の9割が再利用されると言われていますが、船舶解体は過酷な労働集約型作業であるため、先進国の船舶解体施設は20年以上前にほとんどが閉鎖され、労働安全衛生基準がないに等しく、労働単価が安い南アジアに“輸出”されて解体されています。しかし、ほとんどの廃船の船内にはアスベストやPCB類、燃料油残渣などの有害物質や爆発性ガスが除去されれずに大量に残っており、解体作業によって労働者の健康と命が犠牲となり、海岸地帯の水や土壌が汚染されています。

 グリーンピース・インターナショナルと国際人権連盟(FIDH)及びバングラデシュのYSPは、バングラデシュとインドにおける船舶解体の悲惨な状況を写真とともに報告しており、山口県の「人間いきいき研究会」が『船の終焉〜船舶解体の人的犠牲』として日本語訳を出版しています。
 
 報告書『船の終焉〜船舶解体の人的犠牲』によれば、バングラデシュのチッタゴンやインドのアランの海岸には解体のために世界中から集められた廃船が何十隻も乗り上げており、貧しい人々が農村から出稼ぎでやってきて、安全の知識や防護服などもないままに、劣悪な労働条件で廃船を解体しています。アスベストやPCB、残渣油など有害物質にさらされるばかりでなく、爆発や大きな鉄板の落下などによる死亡事故や人身事故が絶えず起きています。しかし貧しい人々はどんな仕事でもせざるを得ません。最貧国のもっとも貧しい人たちには事故や死亡の統計すらないのです。

 バングラデシュのチッタゴンで解体される船舶は1970年代後半以降に建造された大型商船で、その7割が日本製といわれていますが、日本ではこのような南アジアにおける船舶解体問題についてほとんど知られていません。それは日本の船舶の80%以上が例えばパナマやリベリアなどの便宜置籍船であり、このことが日本の責任を見えなくしているひとつの理由です。先進国の造船会社や海運会社は、製造者や船主の責任を果たさずに、有害物質を除去していない廃船を途上国に押し付けているのです。バーゼル・アクション・ネットワークやグリーンピース・インターナショナルは、船主及び船主国の責任を明確にするよう国際海事機関に求めています。

【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】「中古品」に化ける輸出ゴミ、途上国で健康被害も−NGOフォーラム・環境ユニット「3Rイニシアティブ」イシューリーダー・安間武さん(化学物質問題市民研究会)に聞く | <center>出典:【3Rイニシアティブ】ポジションペーパー www.g8ngoforum.org/environment/uploads/envi_unit_080306.pdf</center>
出典:【3Rイニシアティブ】ポジションペーパー www.g8ngoforum.org/environment/uploads/envi_unit_080306.pdf
日本の廃棄物問題

 日本やヨーロッパでは廃棄物処分場の逼迫という問題があります。日本の処分場の残余年数は、一般廃棄物が約13年、産業廃棄物は約6年であり、非常に逼迫しています。イタリアのナポリ(カンパニア州)では街にゴミがあふれて大問題になりました。途上国の人々はこのような先進国の処分場逼迫の問題が、廃棄物や廃棄物寸前の中古品を途上国に送り込もうとする動機のひとつであると考えています。

 日本では、テレビやエアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機といった家電4品目だけでも年に約2,300万台が使用済みとして廃棄されています。使用済みの家電4品目は家電リサイクル法に基づき、メーカーが自主的に回収する公式のルートが定められていますが、実際に公式ルートで回収されるものは半分くらいであると国の家電リサイクルに関する検討会で報告されています。使用済みパソコンについても資源有効利用法に基づきメーカーによる自主的回収ルートが定められていますが、年間約1,000万台近く発生する使用済みパソコンのうち、このルートによる回収は1割くらいといわれています。

 これらの回収ルートに乗らない使用済み家電やパソコンの多くは、皆さんの近所に回ってくる廃品回収業者を通じて収集され、その多くが中古品名目でアジア諸国に輸出されていると言われています。

 このような大量の廃棄物を発生させる大量生産、大量消費、大量廃棄という私たちの生活パターンを根本的に変える必要があります。また3Rの3つのR(削減(Reduce)、再使用(Reuse)、リサイクル(Recicle)のうち、第1番目のR、廃棄物の削減を最優先しなくてはなりません。

国内処理原則と環境正義

 電子廃棄物だけでなく、日本の自治体等が収集した古紙やペットボトルなども市場原理に基づき、大半が高く買い入れる中国に輸出されています。その結果、日本国内の古紙やペットボトルのリサイクルシステムが崩壊しています。

 正規の回収ルートに出さず、近所に回ってくる廃品回収業者に出した使用済み家電やパソコンが途上国に送られ、途上国の人々の健康や環境を脅かしているということは、私達自身が加害者でもあるということです。有害物質を除去しないままに南アジアで解体される寿命を終えた船舶の解体で多くの貧しい労働者が命を奪われ、健康を損ね、怪我をしているという事実に対し、「汚染者負担の原則」に基づけば、世界で最も強大な造船国、海運国である日本に、この問題に対する責任がないはずはありません。

 先進国は廃棄物処理を途上国に押しつけるのではなく、自国で発生した廃棄物は自国で処理し、途上国に資源として輸出する場合には有害物質を除去してクリーンな資源として輸出するという“国内処理原則”を徹底すべきです。そして廃棄物の問題は市場原理にゆだねるのではなく、環境正義という視点から、途上国に危害をもたらさない仕組みを作ることが重要です。「国内処理原則を実現しつつ、資源の国際循環を可能とする新たな3Rイニシアティブ」を求めます。
◇ ◇ ◇
IMAGINE バーは左記事を元に、JanJan内のすべての記事から連想検索した結果を表示します。