|
【何が起きているのか】 昨年初めから本格化したダルフール危機は、8月下旬頃からBBCがようやくチャド側の難民キャンプから映像を交えてリポートできるようになり、今では国際的にも広く知られるようになった。 外交問題が争点のひとつになる米国大統領選挙では、民主党ケリー陣営と共和党ブッシュ陣営が、競うようにスーダン政府への強硬な対応を訴えている。「アフリカ系米国人」の票を当て込んでいるからだ。 9日、ブッシュ大統領はホワイトハウスのプレスリリース(印刷物)で、アラブ系民兵「ジャンジャウィード」によるダルフール住民の迫害を「ジェノサイド(集団殺害)」と認定した。パウエル国務長官も同日、上院外交委員会で「ジェノサイドと結論付ける」と述べた。 ジェノサイド条約(1948年、国連第3総会で採択)では、戦時、平時を問わず、集団殺害に関わった政治家・軍人・私人は、国際司法裁判所で裁かれ処罰される。また国連憲章に基づき制裁(経済制裁はもとより軍事制裁まで含む)を課すこともできる。 ただし米軍による軍事行動については「派兵する用意はない」と慎重な姿勢を示している。 これに噛み付いたのがケリー陣営で、ケリー候補は「ダルフール紛争を終結させるために米国はもっと強い役割を担うべきだ」と訴えた。ブッシュ陣営は手ぬるい、と言わんばかりだった。 とはいっても、今のところ共和党の方が現地視察に乗り出すなどして有権者にアピールしている。 【生存者が語るジェノサイド】 ビル・フリスト上院議員(共和党・テネシー州選出)は9月初旬、チャド・スーダン国境の難民キャンプを視察し、難民から実情を聴いた。同議員はスーダン政府からビザの発給を拒否されたため、チャド側から入った。 同上院議員がインタビューした10歳から18歳の少年、少女5人は「『ジャンジャウィード』と(スーダン)政府軍の攻撃を受けた」と口々に語った。 別の生存者は虐殺のもようをつぶさに語った。 ―先ずスーダン政府軍機が上空から偵察飛行した直後、軍用車両からの砲撃が始まる。続いて「ジャンジャウィード」が馬に乗って襲ってくる。山に逃れたが、追いかけてきた警察が拡声器を使って「安全になったから村に戻りなさい」とそそのかす。山から下りてきたところを虐殺する。 スーダン軍兵士が成人男女、子供合わせて2000人を山に追い詰めて封鎖し、餓死させたケースもある、という。 【ルワンダ虐殺の再現か】 米国は今週中にも国連安保理にスーダン制裁案を提出する予定だ。予想される内容は― ・(停戦監視でスーダンに入っている)アフリカ同盟軍の兵力と権限の拡大。 ・飛行禁止空域の設定(多国籍軍による空からの監視、スーダン機の飛行禁止) ・アナン国連事務総長による評価(ジェノサイドの有無、犯人特定) 国連安保理で採決が行われれば、中国は拒否権を行使する見込みだ。王光亜・国連大使は「制裁はスーダン政府の反発を招き、硬化させることになる」と理由を説明する。 スーダンは、大型油田開発としては中国が初めて手掛けた国である。「中国石油ガス総公司」が1996年、スーダン南部の油田の採掘権を獲得した。当初はカナダの石油会社も参入していたが、米国の圧力で撤退した。 ちょうど10年前、同じアフリカのルワンダで起きた「ジェノサイド」では、80万人が虐殺された。人類史上に残る忌まわしい事件だった。 当時国連の対応の遅さと平和維持軍(PKF)の無力さが批判された。同じような事態がスーダンで起きる恐れが十分ある。 |