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【何が起きているのか】 原油価格が上昇を続けている。ニューヨーク・マーカンタイル取引所では28日、一時1バレル=50ドルの大台を突破した。1日には終値でも50・12ドルと初の50ドル台で取引を終えた(※1)。 記録的な高値の要因には、長期化するイラク騒乱、メキシコ湾産油地帯を襲ったハリケーン、中国での需要急増などがあるが、今回の高値を招いた直接の引き金は、ナイジェリアの民族紛争だった。 ナイジェリアの反政府勢力が27日、油田地帯で操業する欧米の石油会社に「生産を中止せよ。1日から従業員への攻撃を開始する」との声明を出したのだ。「ロイヤル・ダッチ・シェル(貝殻マークの『shell』)」はただちに200人余りの外国人従業員を国外に避難させた。 原油価格が50ドルの大台を突破したのは、反政府勢力が声明を出した翌日のことだった。ナイジェリア政府が交渉に応じる姿勢を見せたため、反政府勢力は攻撃を控えている(2日現在)。 【貧困と環境汚染に蜂起した地元勢力】 反政府勢力とは、油田が集中するニジェール・デルタの先住民イジョー族で組織する「ニジェール・デルタ人民志願軍(NDPVF)」だ。指導者のムジャヒード・ドクボ・アサリ氏が90年代後半、武装闘争を提唱して結成した。 ニジェール・デルタは230万バレル/日と世界第5位の産出量を持つ油田地帯だ。「ロイヤル・ダッチ・シェル」などは、英植民地下の50年代から採掘を続けており、地域の環境を悪化させた。ニジェール・デルタは、マングローブと運河に囲まれた湿地帯で、土壌・水質汚染は深刻なものとなっている。 イジョー族の「人民志願軍」を率いるアサリ氏の主張は、単純明快だ。「自分たちが住む地域に豊かな地下資源を持ちながら、なぜ我々は貧しいのか」「パイプラインは攻撃しない。環境を汚染するからだ」と。 ニジェール・デルタから産出される石油の売り上げは、年間300億ドルをゆうに超える。にもかかわらず、同地域の先住民の3分の2は貧困線(1日の生活費が1ドル以下)より下にいる。 豊かになれるはずなのに貧困のまま。あげくに環境は破壊される。90年代にもニジェール・デルタに暮らす別の先住民オゴニ族が、(環境破壊の)補償を求めて立ち上がったが、政府(軍事政権)によって鎮圧され、指導者は処刑された。 アサリ氏率いるイジョー族が求めているのも、自治権と資源(石油)の管理権だ。 【石油利権握る軍部が米国とつながる】 人口1億3000万人、多民族から成るナイジェリアは、1960年に英国から独立すると間もなく、北部と東部との内戦が始まった。北部がナイジェリア政府軍で、東部が反乱軍(ビアフラ共和国を独自に宣言)だった。最終的には、旧宗主国の英国が支援した政府軍が、勝利した。 この構図が今なお続いており、98年に民政に移管されたとは言え、オバサンジョ大統領は軍部出身で、北部の軍部が南部など他地域を支配している。 こと南部の石油資源は軍部が、欧米の石油と結びつき利権を独占してきたと言われている。油田の集中する南部では、地元民族の自治権は認められていない。異を唱えれば弾圧される。「『シェル』は政府(軍)と結託して、ジェノサイド(大量虐殺)を行っている」と地元反政府勢力が語るのは、このためだ。 現在、蜂起している「ニジェール・デルタ人民志願軍(NDPVF)」に対しても、政府軍はヘリからの機銃掃射で追い詰めた。「人民志願軍」の武装は現在のところ貧弱だ。 アムネスティ・インターナショナルによれば「9月中旬までの3週間で500人以上が死亡した」という。 【紛争の長期本格化も】 もし仮に「人民志願軍=イジョー族」を鎮圧できたにしても、ニジェール・デルタでは多民族が武装蜂起している。 さらに厄介なことは、政府軍が米国と結びついた(※2)ことだ。対する地元武装勢力にはフランスやロシアの武器商人から兵器が渡される可能性がある。60年代の内戦時の兵器供給の構図が少しねじれて再現されることになる。そうなれば、長期的な本格内戦となろう。 (※1)50ドルを超えたのは、原油価格の指標となるWTI(ウエスト・テキスタイル・インターミーディエイト)。 (※2)欧米政府は、ソマリアPKO(93年)の失敗を教訓に、アフリカでのPKOはアフリカ諸国の軍隊に委ねるようになったのだが、その結果、米軍がアフリカ諸国の軍隊を訓練することになった。ナイジェリア軍と米国のつながりは、ここで強化された。 |