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続・米大統領選挙とアフガン大統領選挙

田中龍作2004/10/13
各国は選挙実施のために総額2億ドルも資金援助した。資金は農業国であるアフガニスタン復興の妨げとなっている地雷の除去に回した方が、はるかに国民のためになった。
アフガニスタン 選挙 WorldNow
 【史上初の大統領直接選挙】

 アフガニスタンで初めてとなる大統領の直接選挙が9日、行われた。アフガニスタン全土のほか難民のためにパキスタンとイランの難民キャンプにも投票所が設けられた。

 アフガニスタン国内には約1060万人の有権者(選挙人登録を済ませた人)、パキスタンには74万人、イランには60万人近い有権者がいる。投票率がまだ不明(10日現在)なので、これらのうち何万人が投票したのかはわからないが、投票所には長蛇の列ができるほどだった。

 カルザイ暫定大統領、カヌニ前教育相をはじめ19人が立候補し、史上初の選挙の洗礼を受けた。大勢が判明するのは1週間後で、10月末までにはすべての結果が出揃う(日本風に言えば開票率100%)見通しだ。

 【カルザイ大統領への反発は必至】

 無理に無理を重ねた選挙だった。当初は6月に実施されるはずだったのが9月に、そして10月にと2度も延期された。しかも国会議員選挙も当初、大統領選挙と同時に行うはずだったのが切り離され、05年の実施となる。理由は治安の悪化だ。

 02年6月のロヤジルガ(国民大会議)で選出されたカルザイ暫定大統領は、暫定政府の支配権を地方にまで拡大させるため、地方軍閥の力を削ぐことに腐心してきた。

 地方軍閥は精強な私兵を有し、ケシ貿易により資金力も豊かだ。国軍の地方司令部がせん滅されたケースもある。にもかかわらず、カルザイ政権が力で押さえつけようとしたため軍閥は反発し、国軍との衝突、選挙ボランティアの殺害事件などが起きた(タリバーンによる事件もある)。

 治安は悪化し、危険地でボランティア活動を行う「国境なき医師団」が引き揚げるほどだった。タリバーンは選挙妨害を予告し、国民にも選挙のボイコットを呼びかけていた。

 9日の投票日は、各投票所にISAF(多国籍治安部隊)の装甲車、自動小銃を手にした国軍兵士が張り付くなど厳重な警戒態勢が敷かれた。

 選挙は、カルザイ氏(パシュトゥン人)の当選が確実視されている。多民族国家アフガニスタンの民族構成によるものだ。最も多いのがパシュトゥン人で40%、続いてタジク人=25%、ハザラ人=20%、ウズベク人=6%となっている。

 アフガニスタン国民の民族意識は強烈で、自らの民族代表に投票するのは確実だ(大阪・兵庫の人が阪神タイガースを応援するレベルをはるかに超えている)。カルザイ氏が正式大統領に就任すれば、他民族の反発は必至である。

 【米大統領選のため強行された】

 各地方は、雲を眼下に見下ろす峻厳な山で隔てられていて、それぞれの民族がいて、それぞれの徴税システムがある。このアフガニスタンに中央集権国家をあえて作る理由は、なぜか。

 理由は、米国にとって必要だからだ。米石油会社ユノカルは、中央アジアの天然ガス資源欲しさに、クリントン政権を突付き国連にタリバーンを認めさせようとしたことがある。しかしタリバーンによる女性迫害が報告されていたことで、ヒラリー夫人が「待った」をかけた。タリバーンの国連認定はなくなり、ユノカル社の目論見も潰えたかに見えた。

 だがユノカル社の目論見は、ブッシュ政権の野望となって甦る。カルザイ氏はユノカルの元特別顧問で、ブッシュ政権の代理人なのだ。カルザイ氏には正当な選挙で選ばれた、というお墨付きを与える必要があった。パイプラインを縦断させるためには、中央集権国家にしてカルザイ氏に全土を支配させる必要があった。

 アフガニスタン大統領選挙は、ブッシュ政権のために強行されたといっても過言ではない。何としてでも米大統領選挙が行われる11月までに、アフガニスタン大統領選挙を実施し、自らのアフガニスタン政策の正しさをアピールしたかったのだろう。ブッシュ大統領の下心が透けて見えるようだ。

 各国は選挙実施のために総額2億ドルも資金援助した。資金は農業国であるアフガニスタン復興の妨げとなっている地雷除去に回した方が、はるかに国民のためになった。
続・米大統領選挙とアフガン大統領選挙
反カルザイの軍閥は健在だ。(場所:カブール郊外/撮影:筆者)クリックして下さい。
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地図作製(緑川綾子)

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