トップ > 世界 > 「人身取引」批判で見せたブッシュ政権の外交姿勢とその限界(2)
世界

「人身取引」批判で見せたブッシュ政権の外交姿勢とその限界(2)

久米賢生2005/01/15
世界の動静を鳥瞰図を描いて眺めて見ると、ブッシュ政権による外交の限界と日本のアメリカ追随政策の危険性が見えてくる。
米国 政策 NA
 世界の動静を鳥瞰図を描いて眺めて見ると、国連を無視してまで一国専横を通してきたブッシュ政権による外交の限界と日本のアメリカ追随政策の危険性が見えてくる。

 欧州に置いては、イラク問題を契機にEU加盟国間の立場の違い、米欧間の亀裂の存在が指摘されるようになった。冷戦期にはNATO体制の下、対ソ連で結束していた米欧加盟国も、ソ連崩壊と共にアメリカの欧州における軍事上のプレゼンスが低下。当初はアメリカ、カナダと西欧10カ国で発足したNATOが東欧からの相次ぐ加盟で26カ国となるに従い、各国間の利害の対立を内に抱えこむ事となった。

 アメリカ、イギリスによるNATO軍の多国籍軍への参加要請からも、イラク政府軍及び治安組織の訓練をトルコで行うに止めた例からもそれが窺える。更に、ユーロによる通貨統合と経済統合、集団的安全保障体制の面でアメリカとは一線を画したEU独自の動きがある。

 中東における石油資源、アフリカにおける権益に対しての取り組みを見ても、アメリカ、欧州を背後で操るユダヤ資本の動静がアメリカの対欧州外交の要となっているように思う。ウクライナの大統領選挙にみられた世界最大の投機ファンドの総帥であり慈善家であるソロスの介入もその証左であろう。アメリカ及び西欧諸国がパレスチナ問題に強くコミット出来ないことも同様のように感じる。

 ロシアは、ソ連崩壊(1991年12月)からの長い経済低迷から脱しつつ、「強いロシア」を標榜するプーチン大統領の磐石な政権基盤の下、EU拡大に伴う一定の懸案事項につき双方の合意を確認する共同声明を発表。5月末の露EU首脳会合では、ロシアのWTO加盟に関わる諸問題につき合意達成、議定書調印。

 また、ロシア政府は9月に京都議定書の批准法案を承認。国内にはチェチェン問題や新興財閥と政治腐敗などの問題を抱えながらも、この数年は経済面でも着実な回復を遂げている。中国とは、2001年7月に「中露善隣友好協力条約」を締結。04年10月のプーチン大統領の訪中では、領土問題の最終的解決、ロシアのWTO加盟に関する2国間交渉で成果をあげ、北朝鮮とは、金正日総書記と毎年会談を持つなど、朝鮮半島情勢への関与を強める姿勢を示している。

 アメリカが国連をも無視した一国単独行動を取るのとは対照的に、国連を舞台とする国際協調とプーチン大統領の強力な指導力を背景とする首脳外交により中央アジアにおける覇権の再構築を図っている。

 中国は、13億の人口を擁する巨大国家として21世紀に入り世界経済及び政治の舞台に躍り出てきた。胡錦濤国家主席兼党総書記の下で、思想、私有財産制、人権の尊重を保障する憲法改正を行い、開放政策の下で驚異的な経済発展を遂げつつ、WTOにも加盟、先進工業国からは消費市場と共に生産基地として熱い視線が注がれている。日本の経済回復が小泉首相の構造改革よりも中国バブルによると言われる所以でもある。

 しかし、中国は国内における都市と地方との経済格差、政治腐敗、インフレへの懸念など多くの不安定要素も抱えている。WTO加盟で欧米主導による国際的経済の枠組みのなかで一層の発展を遂げようとする中国だが、中国元の為替の再評価次第では国内経済はもとより国際通貨市場での火種を内包している。

 外交面では、台湾の独立を否定、アメリカ及び日本を牽制しながら経済発展の確保の為に全方位外交を展開、近隣諸国及び大国との良好な関係構築のみならず新興国・途上国との対話、ASEAN、APEC等の国際的な枠組みへの積極的な取り組みも見られる。

 さて日本だが、バブル経済崩壊後、空白の90年代から21世紀に入り、やっと長いトンネルの出口に差し掛かったものの、出口の向こうに見える海外の状況は、中国の台頭と台湾をめぐる軋轢、ロシアとは未解決の北方領土問題とシベリア開発、更に北朝鮮とは国交正常化交渉と拉致問題、その上、世界を分断分裂へ導きかねないイラク戦争の去就。どれ一つ取っても日本単独の力では解決は望めない難題がひかえている。


 今日までの戦後日本の経済発展は米国の傘の下で達成されてきたことは事実である。が、経済、社会構造の変革を根底から迫る高齢化と人口減少と云う不可避の状況を目前に、国内では改革を提唱する小泉首相も、外交の面では従来の保守政権がとってきた政策を踏襲、アメリカ追随外交に終始するのみである。ブッシュ大統領は小泉総理との個人的友好関係を最大限に利用して、自身の窮地を回復する為に日本の憲法改変までも目論んでいるのではないか。

 北朝鮮を悪の枢軸国にあげ6者協議では日本を支持しているものの、北朝鮮での緊張は日本をアメリカにつなぎ止めて置くのに都合が良い。ロシアも中国も同様に北朝鮮問題を外交上の駆け引きに利用するだろうから、日朝の国交正常化はイラク国民による政権の樹立と治安回復が達成されるまでは望めないのではないか。

 フィリピンは、我々日本人の手で作成した鳥瞰図の中には描かれていない。日比の貿易取引額は日本の輸出総額の3%に満たない事、海外在留邦人の数でも17位と低いからだろう。では、この時期に何故アメリカ国務省は日比両国を名指しで「人身取引」で非難したのだろうか。《次のページへ》

関連記事:
「人身取引」批判で見せたブッシュ政権の外交姿勢とその限界

ご意見板

この記事についてのご意見をお送りください。
(書込みには会員IDとパスワードが必要です。)

メッセージはありません

下のリストは、この記事をもとにJanJanのすべての記事の中から「連想検索」した結果10本を表示しています。
もっと見たい場合や、他のサイトでの検索結果もごらんになるには右のボタンをクリックしてください。