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マレーシア最高裁判所は2月19日、同国のタンカーを昨年6月にマラッカ海峡で襲撃し、油323万ドル相当を強奪した9人のインドネシア人に懲役7年の判決を言い渡した。AFP通信が伝えた。同海峡で、海賊に司直の手が及ぶ確率は低い。 マラッカ海峡は世界有数の海賊出没海域で、各国の船舶が被害に遭っている。国際海事局海賊センターのまとめによると04年、同海峡での海賊発生件数は45件にのぼる。年間7万5000隻もの船舶が同海峡を通過するが、日本の船舶は最大の利用者だ。中東地域から輸入する原油の8割が通る。 日本のライフライン(生命線)といわれるマラッカ海峡で起きた海賊事犯の判決を、大マスコミがなぜ伝えないのか不思議でならない。日本の船舶が巻き込まれた事案ではなかったからか。昨年の今頃は大騒ぎだったのにもかかわらず、だ。昨年3月、マラッカ海峡を航行中の日本のタグボート韋駄天が海賊に襲われ、乗組員3人が拉致された。身代金は総額で2100万円にものぼった。4月には三菱商事の子会社が所有する貨物船が襲われ、現金200万円余りが奪われた。 「ニホンガタナで襲ってきた」 たて続いた海賊事件にマスコミ各社は色めき立ち、取材クルーを現地に飛ばした。筆者もノコノコと出かけた。インドネシアは1万5000もの島々からなる。島と島をつなぐようにマングローブ林が延々とのびる。海賊が出撃したり潜んだりするには持ってこいの場所だ。海賊の楽園といってよい。 インドネシア北スマトラ州で実際、海賊に襲われた漁民の話を聞いた。同州最北部の漁村ウジュンカンプン村のイスマイルさん(写真中段=33歳・当時)は、海岸からわずか2マイルの海上で、ある夜エビ漁をしていた。時刻は11時頃。大きなエンジンを積んだボートが高速で接近してきた。野球帽を被り覆面をした男2人がイスマイルさんの漁船の後部から乗り込んできた。 乗り込んできた男たちは長さが1・5mもある刀(イスマイルさんは「ニホンガタナ=日本刀」と呼んだ)を振りかざして凄んだ。「これ以上ここで仕事を続けるようならば、お前を殺す」。イスマイルさんは海に飛び込み、泳いで逃げた。「漁船を盗まれてどうして生活していけばよいのか、途方に暮れている」、イスマイルさんは肩を落とした。 インドネシア海軍犯行説も 沿岸と沖合いでは、出没する海賊の種類が全く違う。後者は使用する船も武器も本格的だ。日本の船舶はこちらの海賊に襲撃される。「ニホンガタナ」などは出てこない。 04年7月にインドネシアのタンカーが襲われた海域を目指して、小型漁船をチャーターしようとしたが、断られた。「うねりが激しく、とてもじゃないが小舟では無理だ」と漁師は首を横に振った。そこでインドネシア海上保安庁の警備艇(写真上段)に乗せてもらった。 「船団を組み、連なって航行する船舶は狙われやすい」、警備艇のキャプテンは話す。海峡といえども海は広い。一隻ずつ探して襲うよりも、次々と襲うほうが効率良いからだ、という。海賊も燃料代を節約するのだそうだ。「ジャパンの船はあんなふうだぞ」、キャプテンは続けた。 海軍、海上保安庁、警察などは異口同音に「海賊はGAM=ガム」だと言う。GAMとはアチェの独立を目指していた反政府武装組織のことだ。 事件は、外洋仕様の船でなくては近づけない海域で起きている。被害者の話によると、海賊はロケットランチャーなどで武装していた、という。30年に及ぶ内戦でGAMは疲弊し、武器は貧弱だった。せいぜいがAK47・カラシニコフである。ロケットランチャーなんて彼らの夢の世界にも出てこないだろう。外洋仕様の船も夢のまた夢。 では、海賊は誰の仕業なのか 現地人の多くは口をつぐむが、GAMを除くと最も口の端にのぼるのが海軍犯行説だ。沖合いで外国の船舶が襲撃される事件は、海軍の財政がひっ迫した時に発生する、と解説するジャーナリストもいる。19日にマレーシアで実刑判決を受けたインドネシア人海賊は、海軍ではなかったようだ。だが、捕まり裁判にかけられる海賊は氷山の一角に過ぎない。海軍が捕まるようなことは先ずない。海賊による襲撃事件が影を潜めるということはないだろう。ガードの甘い日本の船舶が襲われる事態は今後も続く。 |