第4回BALLE(地域経済活性化に向けた企業連合、Business Alliance for Local Living Economies)会議が米国バーモント州バーリントンで6月8日から10日にかけて開催され、初日には地域通貨を題材とした特別セッションが行われた。
BALLEは米国やカナダの中小企業のネットワークのネットワークで、さまざまな形で地産地消型の経済を推進している。会員はIT関係者やコミュニティレストラン、商工会議所や生産協同組合、本屋や研究者などバラエティに富んでいるが、ウォルマートや石油資本などの大企業が支配している現在の経済構造へのオルターナティブとして地域経済の活性化が大切であるという点では見解が一致している。
地域内での取引手段こそが健全な地域経済の形成、ひいては地域の経済的自治につながることから、BALLEは地域通貨に対して強い関心を持っている。今回の特別セッションは、「マネー崩壊」(日本経済評論社)や「Of Human Wealth」(英語版が近日中に刊行予定)などの著者であるベルナルド・リエター(Bernard Lietaer)氏の講演で始まり、彼は著名な経済学者のことばを引用して米ドルの通貨危機が間近に迫っていることを警告した。
現在、私たちはどのような場合にも単一の国内通貨を使うことに慣れきっているが、地域の社会的ニーズに根ざした通貨や全世界を網羅するグローバル通貨も必要であることを同氏は指摘した。また、現在の通貨システムが変更不可能であるという一般的な固定概念に対しても彼は疑問を投げかけ、お金が実は「交換手段として何かを使おうという合意事項」であり、そのため「価値に対して中立ではない」、つまり通貨システムの構造そのものが私たちの行動や価値観に影響を与えていることを示した。
これに引き続いて、2004年6月にニューヨーク州バード・カレッジで「21世紀の地域通貨」という国際会議を開催したE.F.シューマッハー協会のスーザン・ウィット(Susan Witt)女史が、マサチューセッツ州西部で昨年から実践しているバークシェア・プロジェクトについて説明を行った。
この通貨は農業やレストランなどのコミュニティ・ビジネスへの融資として発行されるという点で非常に興味深いものである。地元の商工会議所もこのプロジェクトを支援しており、同女史は現在地元の市役所に地域通貨での納税を認めてもらうよう掛け合っているところだという。
この他にもニューヨーク州のイサカアワーズの創始者であるポール・グローバー(Paul Glover)氏、会議が開催されたバーリントンでバーリントン・ブレッドという地域通貨を運営しているエイミー・キルシュナー(Amy Kirschner)女史、カナダ西部のカルガリーでカルガリーダラーを運営しているジェラルド・フイットリー(Gerald Wheatly)氏が、それぞれの地域経済を強化する手段としての地域通貨についての紹介を行った。
「地域通貨ルネサンス―まち起こしマネー戦略」(本の泉社)などの著者であるトーマス・グレコ(Thomas Greco, ホームページ, ブログ)氏は、お金や金融システムが「限られた私的利害により、それを利する形で操作されている」ため、お金が「政治力の源泉」であると語った。
金利やインフレを「寄生要素」で、現在の通貨システムが「景気変動の幅を拡大する」(好景気のときには過熱気味になる一方、不況のときにはとことん景気が悪くなる)ことを同氏は批判した上で、補完通貨などの相互決済システムの使用を提案し、草の根のNPO・NGOや企業連合、公共部門や営利追求企業をシステムに組み入れる必要性を強調した。
今回の会議のもう一つの特徴としては、すでに運用されている企業間バーターシステム関係者も参加したことが挙げられる。IRTA(国際冷凍運輸協会、International Refrigerated Transportation Association)のクリスタ・ヴァーダバシュ(Krista Vardabash)女史が、法定通貨を使った場合には必要となる税金などの経費を節約する手段としての企業間バーターについて概説を紹介した。
カレント・イノヴェーションズ(Current Innovations)のアネット・リグス(Annette Riggs)女史は同社が作成したオンライン決済システムを紹介し、エコビジネスや地域発展に取り組む人へのアプローチの他、地域通貨システム自体の持続可能性の重要性を説いた。
また、ピーク・オイル(化石燃料の採掘量がすでに最大限に達し、今後は徐々に減少してゆく)問題への対処という観点から、再生可能なエネルギーをより活用したライフスタイルの構築を模索している動きも紹介された。脱炭素研究所(Post Carbon Institute)のジュリアン・ダーレイ(Julian Darley)氏は、化石燃料(石油や天然ガス)が安価で入手できた時代が終わりつつあることを説明し、地域通貨と関連させることで太陽光や風力の利用を推進してゆくプロジェクトについて紹介した。
グローバル・コミュニティ・イニシアチブスのグウェンドリン・ホールスミス(Gwendolyn Hallsmith)女史も、公共部門と民間企業の対立からコミュニティへ、「職と賃金」から「所有と投資」へ、そして域外輸出依存型から輸入代替工業型への移行の重要性を説いた。同女史は補完通貨の導入マニュアルである「地域通貨ガイド」の編纂を終えたばかりで、現在世界中でパートナーを模索している。また、タイムダラーの創始者であるエドガー・カーン(Edgar Cahn)氏も、社会正義の重要性を説いた。この他にも、この会議では以下の事例やプロジェクトが紹介された。
Home Enterprise
Recycle Bank(BALLE会議のスポンサーでもある)
Citizen Chips
Open Money
Targeted Currencies
今回の会議で私にとって最も興味深かったのは、各部門間での連携があちこちで見られたことである。タイムダラーは実業界との関係構築を模索していた、地域通貨の運動家の中には自治体に地域通貨での納税を認めさせようとしていたり、これまで地域通貨を使った経験のないBALLEの参加者の多くが地域通貨に関心を示していたりした。来年はサンフランシスコでBALLEの会議は開催されるが、この場でも地域通貨が取り上げられるものと思われる。
(廣田裕之)
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講演を行うベルナルド・リエター氏
カルガリーダラーについて説明するジェラルド・フイットリー氏
IRTAについて説明するクリスタ・ヴァーダバシュ女史
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