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チェチェン人医師の訴え「子供を避難させなくてはならない」

田中龍作2006/11/18
戦時下にあって、敵方を治療することは憎しみの対象となる。バイエフ医師はロシア軍と地元武装勢力の双方から命を狙われた。チェチェンで、子供の死者は4万人、戦争孤児は2万6000人にも上るという。
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 戦乱のチェチェンで敵味方問わず診療したハッサン・バイエフ医師が16日来日し、東京・本郷の全水道会館で記者会見した。チェチェンへの支援活動を続ける人たちが、現地のありのままの姿を日本の市民にもっと知ってもらおうと招いた。

 バイエフ医師はチェチェンに生まれ(1963年)育った。2人の姉が看護士であることから、影響を受け医療の道を志すようになった。専門は外科。2000年、米国に亡命し、現在はボストンで暮らす。

 チェチェン共和国ではロシアが軍事侵攻した1994年以来、独立を掲げる地元武装勢力との間で激しい戦闘が続いてきた。人口100万人のうち20〜25%にあたる20万〜25万人の民間人が命を落としたといわれる。

 苛烈な戦闘が続くなかバイエフ医師は、チェチェン人とロシア人を分け隔てなく診療した。「ロシア人であれチェチェン人であれ、私にとっては患者。これが私の原則」と話す。

 勤務していたグロズヌイ郊外の病院には毎日20〜40人もの負傷者が運び込まれてきた。薬品、輸血用血液、麻酔……あらゆる医療物資が底をついていた。歯医者で使う局部麻酔で足の切断手術を行ったこともあった。

 地雷原で負傷した大勢の患者が運び込まれ、手術を48時間続けたこともあった。67ヶ所を切断、7つの頭蓋骨を切開した、という。

 戦時下にあって、敵方を治療することは憎しみの対象となる。バイエフ医師はロシア軍と地元武装勢力の双方から命を狙われた。

 こんなことがあった――
ロシア軍兵士を診療したため地元武装勢力に捕まった。処刑(銃殺)されようとしていたところ、武装勢力の負傷兵士が担ぎ込まれてきた。治療しなくてはならない。司令官が「処刑を延ばしてやる」。バイエフ医師は九死に一生を得た。

 武装勢力の兵士を手術していたら、ロシア軍との間で銃撃戦が始まった。武装勢力が敗走したため、今度はロシア軍に拘束されるはめになった。ロシア軍はバイエフ医師を隊列の先頭に置き行軍した。人間の盾である。同じチェチェン人に殺させようという魂胆からだ。1999年のことだった。

 2000年にはロシアが1000万ドルの懸賞金を掛けたバサエフ司令官が、瀕死の状態で運び込まれてきた。当然バイエフ医師は治療する。これがロシア政府の逆リンに触れ、7ヶ月後バイエフ医師は米国に亡命した。

 4人の子の親でもあるバイエフ医師は、チェチェンの子供の話になると力がこもった。「少なくとも子供たちを避難させなくてはならない」。子供の死者は4万人、戦争孤児は2万6000人にも上るという。


バイエフ医師は17日の水戸を皮切りに横浜、札幌、長崎、広島、京都、弘前、東京で講演する。詳しくは「ハッサン・バイエフを呼ぶ会」のホームページで。

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ハッサン・バイエフ医師(全水道会館〜東京都文京区〜 撮影:上下とも筆者)
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手術中のバイエイフ医師〜左側。スライドを映写しながらチェチェンの悲惨な状況を語った。

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