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イラクの子どもたちの絵
もし音楽に世界を変える力があると考える音楽家がいるとしたら、たぶん彼は、彼女は、音楽ファシストなのだろう。もし音楽に世界を変える力があると信仰する音楽ファンがいるとしたら、彼は、彼女は、音楽ファシズム支持者なのだろう―真の音楽家・深町純さんのピアノ演奏の合間の語りを聞きながら、そんなことを考えた。
2007年5月27日、日曜日。「新宿LIVEたかのや」に於いて、『チャリティーライブ〜イラクの子どもたちは今 Vol.2〜』と題された催しが開かれた。壁に飾られているのは、イラクの、癌や白血病で苦しむ子どもたちが描いた絵。(いや、その中には、既に亡くなってしまった子どもの絵もある。)出演アーティストは、渡辺真希さん、木嶋康晃さん、伊藤智行さん、myuさん、ノブ遠山さん、福井淳さん、加藤健二郎さん、深町純さん。そして、開催協力団体は、現在もなお地獄のような状況がつづくイラクに向けて支援活動を行うふたつの団体―「JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)」と「NPO法人PEACE ON」だ。
JIM-NETの佐藤さん(右)とPEACE 0Nの相澤さんのおとぼけトーク
「音楽に人を癒す力はない。なぜなら、もし音楽にそんな力があるのなら、世界はとっくに平和になっているはずだからだ」そんなことばを述べるダライ・ラマを、深町さんは好きなのだと言う。それでいながらダライ・ラマは、世界各地でコンサート開催を呼び掛ける。そう、音楽というものは、芸術というものは、ダライ・ラマが持つような、この矛盾を孕みながらでなければ、真の音楽、真の芸術ではあり得ないのだと思う。この矛盾を放棄したのなら、そのアーティストは、芸術ファシストかただの技術屋に成り下がるのだと思う。この矛盾を自らの中に抱え込めるアーティストだけが、チャリティー・ライブのステージに立つ資格があるのだと思う。
深町純さんは、チャリティーなんて嫌いだと言う。チャリティー・ライブのステージになんか、いつもは立たないと言う。もし本当に世界の苦しみのために役立つことをしたいのなら、こんなところで音楽なんか、やっていられないと言う。でも、この日、ステージで演奏したのは、それでももし、自分がここでピアノを弾くことがなにかの役に立つのならば……という思いからだ。
ひょっとしたらこの思いは、この日のふたつの協力団体にしても、おなじなのかもしれない。 開催協力団体のひとつJIM-NETは、イラクの癌や白血病の子どもたちに医療機器や医薬品支援を、そしてそれだけでなく生活支援も行っているNGOだ。湾岸戦争とイラク戦争というふたつの戦いのあと、イラクの人々のあいだでは、癌や白血病が激増している。戦時中、アメリカ軍が使用した劣化ウラン弾が、その原因ではないかと疑われているのだが……。
イラクに思いを馳せながら歌うmyuさん=いずれも熊谷宏写す
もうひとつの団体PEACEONは、イラクの子どもたちが学校へ、主に障害者施設へ通うためのスクールバスを走らせている。現在、イラク国内の治安が極端に悪いため、このプロジェクトは休止状態だが、それ以外にも文化交流に熱心だ。たとえばイラク人の画家たちを日本に呼び、展覧会やライブペインティングを行なったりする。JIM−NETの事務局長・佐藤真紀さんは、以前、自身のブログの中でこう書いた。「人道支援の現場って、人を助けるよりも、助ける人を選ぶ、そういう仕事ですよね」
イラクで苦しむ人たちを、すべて救うことなど、もちろん出来ない。でも、この日、ライブ演奏の合間にステージに立って話をしたPEACE ONの代表・相澤恭行さんも、そしてJIM-NETの佐藤真紀さんも、それがわかりながらも、それでもイラク支援に自分の存在をかけたのだと思う。 2時間以上のライブのフィナーレは、佐藤さんや相澤さんも交えての、出演者全員による歌―『青い空と白い鳩(Save me and my country)』。アスラール・ジハールちゃんという9歳のイラクの女の子が書いた詩に、myuさんがことばを足し、木嶋康晃さんが曲をつけた。
青い空と白い鳩 今 大きく飛んだ
これで きっと きっと叶う 日はすぐそこ
イラクの子どもたちはいま、この瞬間、私たちとおなじこの地球の上で、存在している―。
JIM-NET
NPO法人 PEACE ON
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