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サウジアラビア:斬首刑直前のメイドに法的支援(全訳記事)

IPSJapan2007/08/06
サウジアラビアで控訴期限の7月16日を目前に勝ち取られたスリランカ人メイドの死刑執行の延期決定は、裁判で被告に法的代理人もないまま死刑判決を下す閉鎖的な司法制度に世界の注目を集める結果となった。(全訳記事)
サウジアラビア IPS 人権
【コロンボIPS=フェイザル・サマト、7月22日】

 サウジアラビアの裁判所への控訴期限7月16日を目前に弁護士が勝ち取ったスリランカ人メイドの死刑執行の劇的な延期決定は、裁判で被告に法的代理人もないまま死刑判決を下す閉鎖的な司法制度に世界の注目を集める結果となった。

 19歳の移民労働者Rizana Nafeekさんが2005年5月生後4カ月の乳児に日中ミルクを飲ませている時に乳児が窒息死したのは故意に殺害したものであるとし、6月16日死刑判決が下された。Nafeekさんは控訴まで1カ月の猶予しかなく、控訴しなければ、斬首刑に処されて、今後の犯罪防止にその遺体は公開されることになっただろう。

 アムネスティ・インターナショナル(AI)によれば、「国による殺害」が増える一方のこの国において今年執行された死刑は100件以上。Nafeekさんの斬首刑が執行されれば、その死刑リストに加えられるはずであった。死刑に処せられた者の多くは外国人である。サウジアラビアの総人口は2700万人、うち550万人が外国籍である。AIによれば、昨年死刑に処せられた39人中26人が外国人であった。

 Nafeekさんの土壇場での刑執行の延期は、香港に本部を置くアジア人権委員会(AHRC)が「異常な事態の下」国際的な訴えを展開した運動の成果である。委員会は、在リヤドのスリランカ大使館の承認を得てこの事件に介入し、法廷で死刑判決に異議申し立てを行うサウジの法律事務所に対する訴訟費用の支払いを負担した。

 スリランカのHussain Bhaila副外相は、減刑嘆願のため先週末リヤドに向けて発つ前にコロンボでIPSの取材に応え、「期限前に控訴した」と語った。副外相とともに、Nafeekさんの両親とスリランカのイスラム教徒リーダー1人がリヤドに向かった。

 このミッションは、死刑執行延期となったメイドを救うためのもうひとつの取り組みである。彼らは、死亡した乳児の両親と会い、さまざまな仲裁者の手を借りて赦しを得たいとの考えであった。彼らはまた、刑務所に拘留されているメイドとの面会も希望していた。

 副外相は「彼ら(両親)にお会いするのは容易ではないでしょう」と述べ、両親はスリランカ大使との面会をすでに拒否していると言い添えた。サウジアラビアの法律では、この事件で刑罰を赦すことができるのは両親だけであるが、死刑判決が下されたとき両親は赦しを与えることを拒否している。

 Nafeekさんの命を救おうとの国際的な取り組みは、他の移民労働者死刑囚にとってサウジの弁護士を雇うことは、たとえその権利があることを知っていても、ほぼ不可能であることを物語るものである。Nafeekさんはスリランカの貧しい家庭の出身で、この悲劇的事件が発生するわずか2週間前に雇用主の自宅に雇われてサウジアラビアで働き始めたばかりであった。

 控訴費用は当初25万サウジアラビア・リヤル(およそ6万6,000米ドル)と提示されたが、スリランカ大使館が交渉に当たり、最終的に2万8,000ドルの割引となった。

 控訴を進めることが可能となったものの、弁護士はいまだ、サウジ当局から最終判決文の写しを含め必要な文書が届くのを待っている状況にある。控訴期限の1週間前には、スリランカ大使館が、弁護士に必要な最終判決その他主要文書を求める「緊急要請」を出した。

 控訴提出により、Nafeekさんは逮捕以来初めて法的代理人を得た。AHRCによれば、裁判でNafeekさんには独立した弁護士がつかなかった。これは、今年2月に武装強盗の罪で死刑に処されたスリランカ人移民4人の裁判と同様であると、AIは伝えている。

 これらの事例は多くの類似点があり、サウジアラビアにおける外国人労働者の死刑裁判にかかわる他の事例を代表するものと言えよう。

 Nafeekさんは、自己に不利な陳述書に署名を強要され、それが乳児を窒息死させた容疑で彼女に有罪判決を下すのに使われたのである。AHRCは「彼女は警察で相当手荒い扱いを受けた。何が起きたのか説明したくとも、助けてくれる通訳も誰もいなかった。彼女は自白にサインをさせられ、後に絞殺容疑で告訴された」としている。

 斬首刑に処せられた4人のスリランカ人男性の事件では、彼らは裁判で、尋問中に警官に殴打されたと裁判官に述べている。4人のうちの1人Ranjith de Silvaさんは、死刑執行の1週間前にヒューマン・ライツ・ウォッチからの電話取材に応じて、自分に不利な自白がなかったら、死刑に処せられることはなかったかもしれないと聞いていると述べた。

 De Silvaさんはまた、裁判で裁判官は彼には上訴する権利があることも告げなかったし、4人のいずれにも判決の写しを与えることはなかったと話した、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べている。AIによれば、4人のうちの1人は、15年の懲役に課せられたと思っていたと見られている。

 Nafeekさんの訴訟事件では、サウジの裁判官の行為について現在詳細な調査が行われている。AHRCによれば、彼女は2005年にサウジアラビアに来た当時23歳ではなく17歳であったと裁判官に知らせたと言われている。パスポートには、職業斡旋業者によって虚偽の生年月日が記載されていた。すなわち、乳児の死亡時には彼女はまだ17歳の未成年者であったことになる。

 しかし裁判官は、これを立証するための医学検査を指示することを怠った、と人権団体は述べている。スリランカ大使館は7月8日付の声明で、Nafeekさんが1988年2月4日生まれであることを裏付ける出生証明書があると確認している。

 コロンボにある公認外国職業斡旋業者協会のSuaj Dandeniya会長によれば、サウジアラビアは雇用の最低年齢を22歳と定めている。

 文書改ざんは広く行われている。一部の推定によれば、海外に出稼ぎに行くスリランカのイスラム教徒の女性の10%から25%が未成年で、偽造文書やパスポートで仕事を得ているという。サウジアラビアには現在およそ30万人のスリランカからの移民労働者がおり、その3分の1がイスラム教徒の女性である。

 Dandeniya会長は「この違法プロセスにかかわっているすべての役人がとがめられるべきである・・・職業斡旋業者だけでなく」と述べている。

 コロンボを本拠に長年にわたり移民労働者を支援している移民労働者センターのDavid Soysa所長は、中東の家庭で働く多くの移民労働者が職務訓練をほとんど受けておらず、いかに準備不足であるかを、Nafeekさんの事件は例証するものであると考えている。海外での雇用促進を担う主要政府機関であるスリランカ外国雇用局が行っている訓練は、わずか12日間だ。

 Soysa所長は「移民労働者の適切な訓練の不足が深刻な問題となっている。授乳中によく起こることなのだが、赤ん坊がむせたら、げっぷをさせなければならない。だがそのメイドはその方法を知らなかった。訓練を受けたメイドであれば、簡単に対処できたことだ」と述べた。

 所長はまた、これは児童の人身売買事件でもあると考える。「違反者は処罰されるべきだ」と語った。

 サウジアラビアは、児童の権利条約に署名している。条約は加盟国に対し18歳未満での犯罪について死刑執行を禁じている。

 Nafeekさんの控訴審がいつ行われるかは定かでない。(原文へ

翻訳=坪沼悦子(Diplomatt)/IPS Japan浅霧勝浩

IPS関連ヘッドラインサマリー:
赦しが命を剣から救う
世界の死刑執行数、減少傾向
人身売買報告書の判断基準に対する疑念広がる
サウジアラビア:斬首刑直前のメイドに法的支援(全訳記事)
今回はコロンボIPSのフェイザル・サマトより、サウジアラビアにおけるスリランカ人メイドの死刑執行の延期決定に焦点をあてたIPS記事を紹介します。(IPS Japan浅霧勝浩) 資料:Envolverde
サウジアラビア:斬首刑直前のメイドに法的支援(全訳記事)
サウジアラビアの裁判所への控訴期限7月16日を目前に弁護士が勝ち取ったスリランカ人メイドの死刑執行の延期決定は、裁判で被告に法的代理人もないまま死刑判決を下す閉鎖的な司法制度に世界の注目を集める結果となった。
サウジアラビア:斬首刑直前のメイドに法的支援(全訳記事)
IPS欧州のページはこちらへ。IPS Japanニュースの「死刑制度関連特集記事」は欧州連合とディプロマット社の支援で日本語版の配信を行っています。(ジャウラIPS欧州局長と浅霧IPSJ理事長)

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