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人工妊娠中絶に関する政策を提案(Table Green) 日韓法学生の交流(3)

渕上亜紀子2007/09/13
日韓法学生の国際交流企画Study Trip from Korea to Japan 2007からの報告。分科会「人工妊娠中絶〜韓国と日本の生命倫理を問う〜」では、日韓の人工妊娠中絶をとりまく現状報告や、今後望まれる政策についての議論などが行われました。
東アジア NPO・NGO NA_テーマ2
※このシリーズでは、去る8月15日から9日間にわたって行なわれた、Study Trip from Korea to Japan 2007の模様を、ホスト国である日本で運営・参加した大学生7人が報告します。

 アジア法学生協会(ALSA)は9カ国(インドネシア、韓国、シンガポール、タイ、中国、日本、フィリピン、香港、マレーシア)の国・地域が加盟するアジア地域の法学生による非政治の学生団体です。Study Trip from Korea to Japanは、日韓ALSAの国際交流企画として実施されました。 (編集部)



前回記事:定住外国人の教育問題を議論(Table Yellow) 日韓法学生の交流(2)

世界的に中絶率高い日韓
 テーブルグリーン「人工妊娠中絶〜韓国と日本の生命倫理を問う〜」では、日韓における人工妊娠中絶の問題について議論しました。両国は世界でも人工妊娠中絶率の高い国で、とりわけ韓国は既婚女性の人工妊娠中絶率が世界一となっています。

人工妊娠中絶に関する政策を提案(Table Green) 日韓法学生の交流(3) | <center>分科会でのプレゼンテーションの様子</center>
分科会でのプレゼンテーションの様子
 人工妊娠中絶は私たち大学生にとっても決して無視できない、身近な問題です。なぜ両国でこんなにも中絶する女性が多いのか。その原因がどこにあるのか、そして改善に向けて何ができるのか。各々の考え、価値観をぶつけ合いながら、自分たちのいま導き出せる答えを探していきました。

 Study Trip(以下ST)が始まり、まず両国の現状についてのプレゼンテーションが行われました。両国の人口妊娠中絶をめぐる近年の特徴としては、日本では総中絶件数は段々と減ってきている中、未成年の中絶数は急激に増えていること、そして韓国側は胎児が遺伝子的病気である場合は中絶が認められていること等が挙げられました。

 また2国間共通の問題としては、性教育の不足やシングルマザーに対して社会が協力的でないこと、家族間で性に関して充分なコミュニケーションがもたれていないこと等が挙げられました。その後、少人数のグループをつくって、それぞれ自身の思うことを語り合い、意識を高めあいました。

人工妊娠中絶に関する政策を提案(Table Green) 日韓法学生の交流(3) | <center>分科会の風景</center>
分科会の風景
 8月17日の社会見学ではJOICEP(ジョイセフ 家族計画国際協力財団)というNGOを訪れました。JOICEPは主に開発途上国の人口とリプロダクティブ・ヘルス、つまりエイズ感染予防や母子保健といった性と生殖に関する健康における分野での国際協力の推進や福祉の向上を目指し活動している団体です。

 JOICEPの方のお話を聞いて、オランダでは中絶に対して否定的であってもやむを得ない最後の手段として残しておくべきだという考えを持っており、中絶が合法化されていることや、開発途上国では医療技術も医者も交通手段もないために妊娠が理由で亡くなる女性が多いこと、また中絶の問題に関して法律的にも社会的にも苦しむのは女性ばかりになっている現状など、今まで知らなかった問題や考え方に触れることができました。

 これまで私は、女性の権利と胎児の権利を比べたとき、命よりも重たいものはないという考えから、胎児の権利を絶対的に優先すべきだと思っていました。しかし、女性が責められてしまう社会的傾向の中、女性の意思のみで行動できない国もあるなど様々な矛盾に悩まされており、女性の住みにくい環境が中絶を増やしている事実があることを知りました。そして女性だけでなく男性も同じようにこの問題に取り組んでいける社会づくりの必要性をとても感じました。

 また、日本でも韓国でも、性に関して恥じらいのほうが勝ってしまっており、家族や友達の間でも話題にしにくいということが問題であり、その認識を変えていくべきだという意見に関して、今回は、実際に自分達の体験を話し合ったりすることなどを通じて、新たな問題意識が持てたように思います。

人工妊娠中絶に関する政策を提案(Table Green) 日韓法学生の交流(3) | <center>テーブルコーディネーターの石井君(中央大学2年)が議論をまとめています</center>
テーブルコーディネーターの石井君(中央大学2年)が議論をまとめています
 8月18日に行われた分科会では、解決策をよりはっきり提示するためにこの問題を性教育、社会的福利、選択された中絶、刑罰の4つの側面に分け、各グループに分かれて具体的な政策を発表しあいました。そして今まで話し合ってきた成果を報告する場である、翌19日のProgress Report(学術発表会 以下PR)に向けて、より中絶問題をわかりやすく理解してもらうため、そして身近に感じてもらうために、5分の短いビデオを製作しました。

 そのビデオでは、ある女性の妊娠が発覚してから、中絶を決意するまでを描いています。社会保障が満足に受けられない様子や、相手の男性からひどく拒絶されてしまう様子、家族や学校の先生から性に対して十分な教育を受けてこなかった様子の描写なども含まれています。メンバーの全員が何かしらの役を演じ、セリフも内容もすべて自分達で考えました。PRでの評判もよかったですし、何よりも作っている最中、みんな終始笑顔で参加できてとても楽しかったです。学術、思い出、両方の意味で集大成となるものができたように思います。

 そして分科会活動の集大成として、19日に行われたPRでは、人工妊娠中絶の減少を目指した政策案を発表しました。小学校〜高校までの新たな性教育システムの提示、女性だけでなく、人工妊娠中絶に関わった医師らも対象に含めた刑罰化、託児所やカウンセラーの充実、そして経済的困難を抱えた親をサポートする公的機関の設立などがその内容です。

 これらの政策を実現するためには、まずこの問題の重大性を1人1人が認識していくことが必要です。今回テーブルグリーンとしてこの問題に本気でぶつかることが出来たからこそ、私たち参加者はその重要性を痛感できたのだと思いますが、残念ながら世間一般では、まだまだ話題にあがっていないように思います。この問題意識を広めていくこともまた課題であると考えます。

 STの開始当初は、会話のほとんどが英語なので、なかなか積極的に話し合いに参加することが出来ませんでしたが、そんな私も含めた日本人参加者に対して、テーブルコーディネーターを務めて下さった先輩方は、日本人のみでのミーティングを行って下さいました。

 「苦手意識とか緊張ってあるし、自分の意見を積極的に言うのって勇気のいることだと思う、けれどホストである日本人が楽しんでどんどん話していかなきゃ韓国人も乗っていけないし、もっとこの機会を楽しんでいこう……」

 そういった言葉のおかげで、翌日からのディスカッションでは、私自身苦手な英語で萎縮してしまっていたことを反省し、いい意味で開き直って、意見を自ら進んで言えるようになりました。

 きっとSTでこういった経験をした人は、日本人にも韓国人にもたくさんいると思います。STでは、そこでしか味わえない体験、気持ち、たくさんのものを得ることが出来ました。またそれは、どこかで何かかたちにしなければならないと、強く思わせてくれるものでもありました。STで学んだことを決して無駄にせず、自分のこれからのALSAでの活動や、やりたいことに還元していけたらと思っています。
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