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ノーベル平和賞、グラミン銀行の挑戦、副総支配人が大阪で講演

山本ケイ2007/12/02
昨年のノーベル平和賞を受賞したバングラデシュのグラミン銀行副総支配人のウマイ・クルスムさんが来日し、大阪で記念講演を行った。クルスムさんは「貧困層や女性を救済したグラミン銀行のアイデアをぜひ日本でも生かしてほしい。このアイデアは国全体を変えることも出来る」と呼び掛けた。
バングラデシュ 貧困 NA_テーマ2
 設立10周年を迎えた「日本NPOセンター」(東京都)と近畿労働金庫(近畿ろうきん)が主催する「NPOメッセin関西2007」が1日から大阪市内で始まり、初日に06年にノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行副総支配人のウマイ・クルスムさんが記念講演を行った。グラミン銀行はバングラデシュで貧困層へ低利融資などを手がけ、現在、メンバーと呼ばれる借り手約724万人を抱え、2,459支店を持つ大手金融機関に成長している。

ノーベル平和賞、グラミン銀行の挑戦、副総支配人が大阪で講演 | <center>グラミン銀行の概要を報告するウマイ・クルスムさん(大阪経済大学70周年記念館で)。</center>
グラミン銀行の概要を報告するウマイ・クルスムさん(大阪経済大学70周年記念館で)。
 講演ではクルスムさんが同銀行の概要やメンバーの状況などをスライドで報告した。それによると現在、720万世帯にサービスを提供しており、収入向上ローン、住宅ローン、教育ローンに加え、物乞いをしなければ生きていけない貧困層向けローンなどを展開している。驚くのはその貸出利率の低さで、収入向上ローンで10%、教育ローンは修学中は0%にし、卒業後に5%にしている。経済的に困難な状況にあるメンバー向けは利率0%で貸し出している。預貯金サービスや独自の年金システムも提供している。

 メンバーのうち9割以上が女性というのも特徴だ。バングラデシュでは女性が果たす役割が大きいにもかかわらず、家庭や社会で男性優位の風潮が続いていた。家事や料理、家畜や農作物の世話まで女性がこなしているが、それが金銭に換算されてこなかったため、女性が不遇な扱いを受けてきたという。こうした女性たちに低利融資を行うことで、収入の道を見出し、生活も豊かになり、結果的に女性の地位が上がるなどグラミン銀行が単に金融サービスだけでなく、社会を変革する流れを作ったことも報告された。

 とりわけ貧困層の生活改善に果たした役割は計り知れない。多くのメンバーが融資を元手に子牛の育成、牛の飼育、雑貨店経営、縫製業、耕作権の取得など500種類以上の経済活動に投資、収入アップによる家計の向上につなげている。さらに物乞いをしていた約9万7,000人のうち融資を受けた9,400人が行商や携帯電話販売業などを始め、物乞いから脱出したという。

 記念講演後半には近畿ろうきんの石橋嘉人理事長と対談した。その中で融資の返済率が98.40%ときわめて高いことについて「いくら貸し出せるかよりも借り手がどういう状況にあるかを把握することが重要です。私たちは借り手に銀行に来てもらうのではなく、私たちが借り手のところに行くようにしています。銀行のスタッフが融資のお金が適切に使われているかを常に見ており、借り手も数人から10人くらいの単位でグループを構成し、週1回のミーティングを開いています。その中で誰がどんな融資を受け、どんな事業を行ったかを報告します。団結心が高まることが保証システムにつながっているのです」と説明。銀行とメンバーが緊密な関係になり、メンバー同士が情報交換することで、焦げ付きも防ぐことができているようだ。

ノーベル平和賞、グラミン銀行の挑戦、副総支配人が大阪で講演 | <center>講演後半では近畿ろうきん石橋嘉人理事長(左)と対談した。</center>
講演後半では近畿ろうきん石橋嘉人理事長(左)と対談した。
 金融サービスが女性の地位向上にもつながっているが、これについては「結婚で女性が多額の持参金を強いられるダウリーという慣習を排除できるようになりました。家庭では女性がグラミー銀行のメンバーであることで夫が妻を平等に扱うきっかけになり、家庭の重要な決定事項について妻の意見を聞くように変わってきています。選挙にも積極的に参加するようになっており、地域でいい候補者がいなければメンバーの中から候補者を出すこともあります」など、融資による経済的な改善が地域、家庭、政治の場でも女性の立場を向上させることにつながっている現状を話した。

 最後に、参加者に「グラミン銀行のアイデアをぜひ日本でも生かしてほしいと思います。日本は経済や教育水準も高いと聞いており、バングラデシュよりも短い時間で成果を挙げることができるのではないでしょうか。このアイデアが国全体を変えることも出来るということを理解してほしいのです」と呼びかけた。グラミン銀行の金融サービスが社会運動的な広がりを見せることが可能であり、日本でも応用されることを期待した。

[グラミン銀行]
 1976年に経済学者、ムハマド・ユヌス氏のプロジェクトとしてバングラデシュでスタートし、83年に銀行として認可された。貧困層女性の経済的自立のために数ドルから数十ドルという小額無担保融資の「マイクロ・クレジット」を積極的に展開してきた。06年10月に「底辺から経済的・社会的な発展を創出する取り組み」としてユヌス氏とグラミン銀行がノーベル平和賞を受賞した。融資額は累計で約65億ドル、総預金残高は6億9,229万ドルに達する。

[ウマイ・クルスムさん]
 1956年バングラデシュ北部のネットコロナ県生まれ。チッタゴン大学で経済学を専攻し、ユヌス教授の指導を受ける。78年に修士号を取得し、卒業と同時にグラミン銀行に参加。99年に総支配人補佐となり、現在は副総支配人としてモニタリング・評価部門を統括。グラミン銀行の活動を草創期から支えてきた1人。

参考:
NPOメッセin関西2007
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