対人地雷の使用や生産・輸出はおろか貯蔵も禁止する「対人地雷禁止条約」が締結されてちょうど10年が経つ。1997年12月3日、カナダのオタワで署名されたことから「オタワ条約」とも呼ばれ、現在155カ国が加盟している。日本は98年に加盟した。時の小渕首相は「軍縮で世界をリードする」といった趣旨のことを言って胸を張っていたが、何のことはない。45番目の加盟国だ。
地雷除去作業(スリランカで、いずれも筆者撮影)
対人地雷を踏むと足を失うが、命は助かるケースが多い。生きている同僚を捨てて行けないので、部隊の進軍は遅れる。殺すよりも効果的だ。しかも生産コストは安価(国によってマチマチだが、1個=約1ドル)ときている。当然安い値段で仕入れることができるので、ゲリラ勢力などは大量に購入する。
ところが、この兵器は戦争が終った後も紛争当事者の意図を離れて人を殺傷し続ける。「悪魔の兵器」と呼ばれるゆえんだ。犠牲者の中心は農民や子供などである。義足をつけている人が目につくのは、熾烈な内戦を経験した国だ。ゲリラなど反政府勢力がこの地雷を多用するからだ。
先進国の政府軍は地雷を埋設した場合、地図を残す。最少にして最大の効果をあげるように合理的に埋める。ところが、ゲリラ勢力の場合、地図など作っている時間がない。合理的に埋める軍事技術もない。「手当たり次第に埋めた」。アフガニスタン北部同盟マスード派のある司令官が語ってくれたことがある。味方が埋めた地雷を味方の兵士が踏むこともあった、という。
地雷原(スリランカの激戦地で)
作るのが1ドルに対し、除去するのに1個あたり100ドルもかかる。こんな愚かしい兵器も珍しい。155カ国も加盟するのは至極当然だ。紛争地域に行くと「地雷除去作業」の光景を必ず見かける。
1-2m単位で細かくメッシュを切り、金属探知機で地雷を探り当てていく。地雷除去の政府スタッフやNGOスタッフが踏むこともある。恐ろしいほど緊張する作業だ。「緊張のあまり最初の頃は黄色い汗が出た」。スリランカで地雷除去の活動に携わっていたある日本人NGOスタッフは、現場を取材した筆者にしみじみと語った。
英国BBC放送によると、昨年は全世界で45km
2に及ぶ土地で地雷が除去された。地道で血のにじむような除去作業が続くのを尻目に、地雷は次々と生産され紛争地帯に持ち込まれる。世界最大の「地雷生産・輸出国」である中国は対人地雷禁止条約に加盟していないのだ。
スリランカでは政府軍と反政府武装勢力「タミル・タイガー」との間で戦闘が続く。地雷除去のNGOスタッフは「出土してくるのが中国製なら政府軍が、パキスタン製であれば『タミル・タイガー』が埋めたものだ」と話した。
アフガンのマスード派はソ連とのつながりが深かった。それでも地雷は中国製だ。「安いから購入した」。司令官は自嘲的な笑みを浮かべた。
出土した対人地雷
「対人地雷禁止条約」にはアメリカも加盟していない。軍事的な効果を重要視しているのだ。その米軍がイラクで武装勢力が仕掛ける地雷の一種「路肩爆弾」に苦しんでいるのは、皮肉というしかない。米軍の死傷者の大半はこの「路肩爆弾」によるものだ。あまりの皮肉さに言葉を失う。
子供の場合、成長に応じて義足を作り変えていかねばならない。「(サイズが)合わなくなると、とても痛い」。砲撃を浴びる村から逃げる際に地雷を踏んだという、アフガニスタンの少女の言葉が忘れられない。