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WWFインターナショナル 気候変動問題で、日本にリーダーシップを求める

吉田しのぶ2008/02/21
「クライメート・セイバーズ東京サミット2008」に関連して、ジェームス・リープWWFインターナショナル事務局長は記者会見、温暖化対策に対して日本政府の強いリーダーシップを求めた。
NA NA 記者会見
WWFインターナショナル 気候変動問題で、日本にリーダーシップを求める | <center>環境問題での日本のリーダーシップを求めるリープWWFインターナショナル事務局長(日本外国特派員協会で、筆者撮影)</center>
環境問題での日本のリーダーシップを求めるリープWWFインターナショナル事務局長(日本外国特派員協会で、筆者撮影)

 2月15日、東京・港区のソニー本社で開かれた「クライメート・セイバーズ東京サミット2008」で、WWFのクライメート・セイバーズ・プログラムに参加する企業12社が、地球の気候変動への対策をさらに強化、拡大するという決意を表明した「東京宣言」に署名した。サミットは、WWFとソニーが共同で開催した。

 この東京宣言は、世界の温室効果ガス総量を2050年までに50%以上削減しなければならないことや、2℃以上の気温上昇を抑えるためには、今後10〜15年で排出量のピークを迎え、その後減少させなければならないことなどを訴えている。

 クライメート・セイバーズ・プログラムは、企業がWWFの支援でCO2削減努力を進める取り組み。宣言に署名した12企業はいずれも、同プログラムで自らが定めた排出削減の目標をすでに超える成果を出しているという。

 宣言では、企業が今後ビジネスパートナーに対して気候変動に及ぼす影響を提言していくことや、消費者に低炭素型のライフスタイルを提案していくこと、WWFのクライメート・セイバーズ・プログラムの活動を拡大していくことなどが盛り込まれている。

 今回「東京宣言」に署名した12企業はアリアンツ・グループ、キャタリスト、ザ・コリンズ・カンパニー、ヒューレット・パッカード・カンパニー、ナイキ・インク、ノボノルディスク、ノキアコーポレーション、佐川急便株式会社、ソニー株式会社、スピッツベルゲン・トラベル、テトラパック、ザンテラ・パークス・アンド・リゾート。
 
 同日午後、日本外国特派員協会で開かれた会見では、WWFインターナショナルのジェームス・リープ事務局長が、12社の「東京宣言」の署名が「ほかの産業や企業のモデルになり、政治や消費者にも影響を与えることになる」と評価。一方で「日本はG8の開催国として、気候変動に対する国際的なアクションにつながるようなリーダーシップを発揮していくことが求められる」と環境問題に対しての日本政府の積極的な関わりを求めた。

(以下に、リープ事務局長の会見内容の一部を訳します。日本や日本の産業の環境問題への取り組みに対しての意見です。後半は出席した海外や国内のジャーナリストからの質問に答えています。訳・筆者)

WWFジェームス・リープ事務局長会見・概要

○世界的な気候変動の中での日本の役割
 ここではまず、グローバルな世界の中で気候変動に対し、日本政府に望まれる役割についてお話させてください。今年開催されるG8のリーダーとして、日本には国際的なアクションに弾みをつけるための決定的な役割があります。

 気候変動は理解や概念の枠を超えた、私たちの時代の大きな挑戦であると言えるでしょう。この問題は地球上のすべての人に影響を与えます。誰一人気候変動の影響を逃れることはできないのです。そして、みなが協力する道を見つける以外にこの問題を処理することはできません。

 気候変動はもうすでに起こっています。北極の氷は、今までの歴史で例を見ないほど速く溶けています。昨年の夏には、記録上最高の水が北極で観測されました。

 グリーンランドの氷は、過去2年間でその前の10年間の10倍もの速さで溶けているという報告もあります。そのような問題は、その分野に精通している人だけが知っていることのように思われるかもしれませんが、もしこのまま溶け続けたら、地球の海面は7mも上昇します。インパクトはとても大きいのです。

 そして、この危険な気候変動から我々が自らを守るためには、平均の気温上昇を2℃未満に抑えなくてはならないことは、科学が証明しています。気温が2℃以上上がるのを防ぐしかないのです。科学は、それを成功させるには、今すぐアクションを起こすことが必要だということも証明しています。世界の排出量が今後10〜15年間でピークを迎え、その後減少していくことが必要です。それは簡単なことではありません。

 このようなことが日本政府と私企業部門にどのような意味をもつかについて話させて下さい。

 これは公益の問題です。私たちは協力して共に行動しなければなりません。気候変動の対応に成功するか否かは、地球全体の排出量を削減できるかどうかにかかっています。つまり、一国がその国の排出量減少をするだけでは自分たちを守ることはできないのです。地球全体のことを視野に入れなくてはならないのです。それは、世界の政府が共にアクションを起こさなければならないことを意味しています。

 昨年12月の(温暖化防止の)バリ会議では、そのようなことが話し合われ、各国はこの問題に対して2009年の12月までに協定を結ぶということで一致しました。そしてその協定には先進国が2020年までに1990年の排出量レベルの20%〜40%の削減をすることを含めなければいけません。

 日本は歴史的にエネルギー効率の高い国のリーダーでした。最もエネルギー効率の高い国の一つだと言えるでしょう。日本は誇りを持てる歴史を持っています。そしてこれからはさらにその上に歴史を重ねていけるか挑戦されています。日本には、世界が気候変動の問題に立ち向かう中で、リーダーシップをとることが求められています。

 日本では2050年までの排出量の目標設定がされました。それはとても重要なことですが、十分とは言えません。2020年までの積極的な目標設定が必要です。私たちは排出量を今すぐ減らさなければなりません。2020年までに25〜40%の削減が必要です。

 G8の開催国として、真のリーダーシップが日本に求められているのです。G8では、世界に先進国は前進して自分たちの役割を担う準備ができていることを証明することがとても重要です。

 福田内閣がゼロ・エミッション技術を推進しているのはとてもいいことです。グローバルな技術の資金を作り、発展途上国の低炭素排出型の発展の道を作ることは、私たちの未来の成功に決定的だと言えるでしょう。

 しかし、私たちが今年7月北海道で行われるG8会議で日本に求めることは、1997年の京都会議で日本に定められた目標を達成することで、先進国のパートナーたちが2020年までに20〜40%の削減をすることです。

 隅々まで行きわたる絶対的な目標が必要なのです。先進国には特別な義務があるという認識が必要なのです。インドや中国の後ろに隠れられません。ほとんどの排出は先進国からなのだという認識が必要で、先進国は先頭に立ち、積極的にアクションを取らなければなりません。

○中国・アメリカ
 2つのことを話します。

 1つ目は中国のことです。過去数年間、世界の国々は中国を見て「中国があんな形で成長を続けているのに、なんで私たちが問題解決をしなくてはならないのか」と言ってきました。しかし、バリ会議で中国は前進しました。中国は協力しようとしています。建設的に交渉に応じています。先進国が期待されているのと同じ形で貢献することを期待できませんが、中国は話し合いに応じています。そしてバリ会議ではとても重要な役割をしていました。

 2つ目は、ほとんどの人の心にあるであろうアメリカへの疑問です。過去7年間、アメリカが建設的なパートナーでなかったことは否定できません。しかしコペンハーゲンでのアメリカの派遣団は、今までとは全く違うものになるでしょう。

 大統領選の3人の候補者、共和党候補のマケイン議員、民主党のオバマ議員やヒラリー・クリントン議員、は気候変動の問題にコミットしています。アメリカのポジションは、選挙後大きく変わるでしょう。2009年12月の派遣団は協定に決着をつけることになると思います。

○東京都の取り組みの評価
 東京都の、2020年までに再生可能なエネルギーの東京のエネルギー消費に占める割合を20%に高めるという取り組み(再生可能エネルギー戦略)はとても重要です。東京都が、今後国の政策につながる取り組みをしていることを理解し、産業界が支持していくことが大切です。


○日本企業の役割
 企業の役割について話します。今日、私たちは「東京宣言」に12社の企業が署名したことを発表しました。その中には世界のリーディングカンパニーも含まれています。
ソニーが主催しました。

 ソニーは2006年に、二酸化炭素の排出量を2010年までに7%削減すると宣言しましたが、彼らはもうすでに9%の削減に成功しています。

 この「東京宣言」はいくつかの理由でとても重要です。
(1)参加企業は実際に排出量削減を実現している。削減量はアメリカの道から300万台の車を消したに等しい。
(2)彼らの貢献は産業界のほかの企業や政府に、実際に二酸化炭素を削減し、かつビジネスを成功させるのは可能なんだということを示すことになる。
(3)ビジネスパートナーに排気量減少を促すこと、消費者に低炭素排出型のライフスタイルに移行することを促す。

 そしてソニーやノキア、ナイキなどのカンパニーは実績があり、とても尊敬されている企業です。そのような企業は、ほかの産業やパブリックに影響があるでしょう。モデルとなります。

 私はこの問題に早期に取り組む企業は、今後二酸化炭素を規制される経済では勝者になると信じています。そのような企業には機会があるでしょう。


質問:
 日本の貢献について、今の話だとあなたの見方は楽観的すぎる気がします。何千という企業のなかから、日本は2社です。日本企業のリーダーシップに関して、あなたの懸念することは?

 日本の産業界が、まだ必要とされるようなリーダーシップを発揮していないことは確かです。事実、日本の産業界の大きな部分が政府にプレッシャーをかけていることは明確です。G8で世界が必要とするようなリーダーシップを期待できるような政治にはまだ程遠いと言えるでしょう。

 産業界からの抵抗も大きいです。鉄鋼や電力などの排出集約型・エネルギー集約型の産業にとって、この問題は大変難しいとは思います。しかし、それは世界中どこでも同じです。はっきり言いますと、今までの様子を見る限り、日本が期待されるようなリーダーシップをとれるかどうか私たちは懸念しています。

答:
 前回のG8でのアンジェラ・メルケルの活躍は素晴らしかったです。ヨーロッパの排出量削減の試みとG8での成果という前進は、彼女の活躍によるものが大きかったと思います。それが日本に望まれるリーダーシップの形で、日本には見習ってほしいです。

 残されている時間は少ないのです。排出量のピークを10〜15年の間に迎えさせるというのは、大変な企てなのです。確かに、積極的な企業は、まだまだ少ないと言えるでしょう。

質問:
 全世界を見れば、12社というのは大海の一滴でしかないように思うが、あなたの言う2020年の目標までに、クライメート・セイバーズ・プログラムはどのくらい広がると思いますか? 今現在話が進んでいるところはあるのですか?

答:
 12社は始まりです。

 実際の排出量削減だけでなく、クライメート・セイバーズの意味は、その活動によって送られるシグナルにあります。ブランド力のある会社が参加し「私たちはこの問題解決のために貢献している。大切なことをしているんだ」というメッセージを送ることによって、ほかの企業の促進剤になります。WWFのプログラムに参加するかどうかという問題よりも、そういう行動を促す契機になることが大切です。

 そして、こうした動きは結果的に政治にも変化を与えることになります。私たちがクライメート・セイバーズを始めたのは2000年ですが、その時起こったことは、実績のある企業が「この問題は深刻だ。私たちは何かするべきだし、できることがある」と行動することで、実際排出量が減っただけでなく、政治的に重要な影響を与えました。

 何より、政治に影響を与える契機になることが大切ですが、クライメート・セイバーズ・プログラム自体に参加する企業が急速に増えていく手ごたえがあると感じています。

質問:
 1960年代と70年代、人口の増加が与える影響の問題について多くが語られていましたが、最近はあまり耳にしなくなった。人口は増え続けているのに、排出を減らすことばかりが注目されています。WWFはこのことについてどういう考えを持っているか。

答:
 私が思うに、そのことに関してはいくつかのことが言えると思います。1つは、人口は横ばいになり始めたということ。少なくとも、10年前に我々が予想していたよりも横ばいになりつつあります。

 もう1つは、人口増加を安定させるには、女性の教育と、女性の権限を強化するということが大事だということです。そしてそれは、地球にとって最重要事項だと思います。それは私たちWWFのビジネスではありませんが、決定的に重要でしょう。

 (環境)問題には2つの側面があります。1つは総人口の問題。そしてもう1つは人々が「どのように生活するか」です。私たちはこの2つ目について努力しています。人々のライフスタイルや技術によって大きな差が出ます。

 もし地球上に住む人がみんな平均的なアメリカ人のような暮らしをしたら、地球が5個必要になると言われます。地球が持続できるようなライフスタイルに人々を移行していく、というのが私たちの仕事です。

質問:
 日本の産業からは、「もうこれ以上環境問題対応のためにエネルギー効率をよくする余裕はない」という声も聞きますが、産業界が気候変動の問題に立ち向かうためにもっとできることは何だと思いますか?

答:
 2050年までに先進国に求められる削減量は80%にも上ります。だから私たちはエネルギー効率と二酸化炭素排出低減のために違う手段を再考案しなくてはなりません。特に風力や太陽電池などの再生可能なエネルギーの利用です。

 福田首相はゼロ・エミッション技術を推進していますが、それが日本の向かうべきところです。その技術で日本はリーダーにならなくてはなりません。

 ヨーロッパやアメリカでは、この問題に取り組んだ企業にのみ未来があるといってもいい。そういう今後は企業が市場を支配することになると思います。それくらい我々の未来は二酸化炭素の問題に縛られているのです。

 ヨーロッパやアメリカの大企業は、クライメート・セイバーズ・プログラムに参加していない企業であっても、低二酸化炭素排出型の経済の構築に真剣に取り組んでいます。日本がそうしない理由はどこにもありません。

 世界銀行のチーフ・エコノミストだったニコラス・スターン氏は、気候変動による影響は世界のGDPの20%にも上ることになるだろうと、予測しています。それはとても大きい数字です。日本の産業は、気候変動に対して起こすアクションにかかるコストについて心配していますが、それは多分1〜2%としか予測されていません。行動しないことによって10倍のコストがかかるのです。そしてどんな経済もそんなコストを払える余裕はないのです。

 西側諸国のいくつかの企業はその事実にきちんと直面し始めています。そして日本もそうなるべきです。
◇ ◇ ◇

ご意見板

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[32908] ご指摘ありがとうございます。
名前:吉田しのぶ
日時:2008/02/22 12:07
ご指摘の通りニコラス・スターン氏でした。
訂正します。
[32906] 翻訳とりまとめまですぐに出していただいてありがとうございます
名前:小倉正
日時:2008/02/22 09:16
 一箇所だけ、
GDPの20%の被害になるというニコラス・ジョンソンの報告…というのはニコラス・スターン卿の勘違いじゃないかと思います。
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