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【東京IPS=キャサリン・マキノ、2月19日】 沖縄での米兵による女子中学生暴行事件を受け日本政府は、今月末に来日するコンドリーザ・ライス米国務長官に対して正式に抗議するとしているが、国民の反応は『冷ややか』なようである。 福田康夫首相は18日の会見で、27日に来日するライス米国務長官に対し 直接今回の事件をはじめとする在沖米軍の兵士に関わる不祥事を取り上げる意向を明らかにした。ライス米国務長官は日本を訪問する前に中国、韓国を歴訪する。韓国では李明博(イ・ミョンバク)次期大統領の就任式に出席する予定だ。 今月10日、女子中学生に対する強姦容疑で逮捕された米海兵隊2曹、タイロン・ハドナット容疑者(38)の身柄は現在も沖縄県警に確保されている。ハドナット容疑者は強姦については否認しているが、少女を車内で押し倒しキスをしたことは認めた。 しかし、今回の事件に対する国民の関心は13年前(1995年)に起きた沖縄米兵少女暴行事件と比べるとかなり低いと言える。専門家によると、これは日本国内の『安全保障環境の変化』に関係があるという。 『米外交問題評議会』日立フェローのウェストン・コニシ氏はIPSとの取材に応じて次のように語った。「13年前の事件では、様々な要素が国民感情を大きく刺激する結果になった。そもそも、日本における米軍基地の必要性に多くの疑問が出ていた。当時の日本人には、北朝鮮や中国といった国が日本に脅威をもたらすという不安感がほとんど無かった。しかし現在は、多くの日本人が国家の安全保障に危機感を抱いており、(侵略に対する抑止力としての)在日米軍の役割が幾らか必要であると感じているのである」 1995年、12歳の女子中学生が3人の米海兵隊により集団で暴行されるという痛ましい事件が起きた。日本国内では当時、在日米軍の撤退を訴えて約8万5,000人もの人々が参加する大規模な抗議集会が行われた。これは、1972年の沖縄返還以来、国内では最大規模の抗議活動になった。国民の米軍への非難や怒りは東京にまで広がり、政治団体や沖縄を支援する市民グループによる集会が都内各地で行われた。 日米安全保障条約のもと現在、日本に駐留している在日米軍兵士の数は約5万人である。中でもその大部分が沖縄に集中しているため、同地域はまさに米軍の『重要拠点』となっている。 しかし最近になり、沖縄県民からの米軍に対する激しい非難は徐々に高まりを見せ始めている。県内では米兵による事故や事件が相次いでおり、昨年の米軍構成員による刑法犯の検挙人数は46人にも上る。 コニシ氏は「近年の在日米軍再編など安全保障面での2国間の協力は、日本国内での米軍基地を削減しようとする狙いがある。これにより、米軍基地と基地周辺の住民との摩擦の解消に向け(摩擦は完全には消えないが)何らかの影響を及ぼすことになるだろう」と説明した。 さらに、「このような事件に関する刑事手続きの面でも(昔に比べると)大きな進歩は見られる。これまでは日米地位協定 (Status of Forces Agreement: SOFA)に基づき、日本側が被疑者を起訴する時まで米側が被疑者を拘禁していた。しかし、1995年の沖縄米海兵による強姦事件を機にSOFAも見直され、米国は特別な事件での身柄引き渡しには積極的に応じる姿勢を示すようになった。今回の事件でも、日本側が米側よりも先に容疑者の身柄を確保している」 「度重なる在沖米兵の不祥事により、沖縄だけでなく岩国(山口県)など基地を抱える他の地域でも市民の怒りや不満が爆発してもいいはずだ。日米両政府が進める米軍再編の実施を妨げることも可能だろう」と語った。 沖縄の仲井真弘多知事は、今回の事件が再編計画に直接的な影響は及ぼさないとする考えを示したものの、「女性の権利を侵害する深刻な犯罪行為だ。特に被害者が中学生であることを考えると、決して許されるものではない」と怒りを露にした。 経済誌『ビジネス・ウィーク』の元東京支局長で、日本に長く暮らしているロバート・ネフ氏もIPSとの取材に応じ、今回の暴行事件をめぐる国民の関心の低さについて語った。「13年前の事件が極めて悪質な事件であっただけに、今回の事件はあまり報道されなかったのかもしれない。米軍再編により現在、グアムへの基地移転の計画が進行中であるため、沖縄での『反基地感情』も以前ほど高まっていない」 米軍再編計画では、今後6年をかけて約8,000人の在沖海兵隊をグアムに移転させる予定。現地では、核兵器システム『トライデント』、弾道ミサイル、F22戦闘機、航空母艦、原子力潜水艦、ステルス戦闘機など多くの米軍戦闘機が彼らを見守ることになる。 米国側は、今回のような事件が日米両国関係に取り返しのつかない事態を招くことのないよう何とか手を打ちたいと必死だ。トーマス・シーファー駐日米国大使は14日、沖縄に出向き事件の捜査協力と米兵の教育プログラムを実施することを約束した。 さらに、シーファー駐日米国大使は謝罪と共に犠牲者への哀悼の言葉を述べた。「現在日本で暮らす全ての米国人が、被害に遭われた少女と家族の傷が1日でも早く癒えるよう願っています」 上智大学の政治学准教授、中野晃一氏は「沖縄県民は日米両国によって再び威信を傷つけられたと感じているはずだ。13年前の事件後の騒動を思い出し、そして13年前から状況は何も変わっていないと感じたに違いない。沖縄県民が日米同盟のもたらす大きな『負担』(米軍基地や米兵の不祥事)を強いられているという事実が残ったに過ぎない。沖縄はこのような『重荷』から一刻も早く開放されたいのだ」 沖縄県議会は14日、中3少女暴行事件に対する抗議決議を全会一致で採択。米国に対して被害者への謝罪と賠償、さらには全県民が理解できるような明確な再発防止策の提示などを求めた。 在沖米兵による事件は後を絶たない。2007年10月、米空軍大尉の息子が県内のレストランで女性従業員をレイプし怪我を負わせたとして逮捕された。先月には、タクシー運転手を暴行し代金を支払わずに逃走したとして、2人の米海兵隊が逮捕される事件が発生したばかりである。 米軍は再発防止に向け駐日米兵への徹底した教育を実施する構えである。そして、名護の宜野湾市に立地している米軍普天間基地の移設に関する提案も出されている。(原文へ) 翻訳=松本宏美(Diplomatt)/IPS Japan山口響 IPS関連ヘッドラインサマリー: 戦時の残虐行為の事実、教科書からの削除を許さない イラク駐留米軍兵士の心の闇 カナダ:「テロとの闘い」で誤認逮捕 外国軍事基地のない世界を インド・日本:新たな戦略同盟を示す安倍首相の訪印 |