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斎藤統合幕僚長訪露をめぐる日露のマスコミの温度差

鵠沼光2008/04/14
4月11日、防衛省の斎藤隆統合幕僚長が訪露し、ロシア軍のトップであるバルーエフスキー参謀総長と会談した。この会談の内容を巡っての両国のマスメディアの反応が面白い。日本側は、「ロシア空軍機による伊豆諸島南部の領空侵犯問題」を大きく取り上げているのに対して、ロシア側は、「日本が、米国のミサイル防衛システムへの参加を拒否」したことを歓迎している内容。相当、距離があるが悪いばかりではないようだ。
ロシア マスコミ NA_テーマ2
斎藤統合幕僚長訪露をめぐる日露のマスコミの温度差 | <center>斎藤隆統合幕僚長の訪露を報じるリア・ノーヴォスチ通信社の報道。米国旗のアンテナの下にはためく日本旗。</center>
斎藤隆統合幕僚長の訪露を報じるリア・ノーヴォスチ通信社の報道。米国旗のアンテナの下にはためく日本旗。
 同じ会談が関心が違うとこれほどまでに違って見えるのだろうか?あるいは人は自分が聞きたいことしか耳に入らないのか?

 4月11日、防衛省の斎藤隆統合幕僚長が訪露し、ロシア軍のトップであるバルーエフスキー参謀総長と会談した。この会談の内容を巡っての両国のマスメディアの反応が面白い。

 現在、筆者は日本にいないので日本のマスコミの報道を詳しく知ることは出来ない。しかし、インターネットなどを手がかりにする限り、この会談内容は日本側の報道によれば、2月9日に起こったとされる「ロシア空軍機による伊豆諸島南部の領空侵犯問題」に関してロシア側が「領空侵犯の事実を否定」し(毎日、日経、産経等)、「再発防止の協議を約束」(毎日、日経、産経)したとのこと。

 見出しも「領空侵犯の再発防止へ協力=斎藤統幕長とロシア軍トップが会談」(時事)など。いずれも「領空侵犯」問題を前面に出している。全体の印象は、「またロシアは認めない」の一言であろう。

 一方、ロシア側の主要紙の報道は、「日本が、米国のグローバル防衛システムへの参加を拒否」(イズヴェスチヤ紙電子版)、「日本は防衛システムのグローバル化問題に関して米国と協力しない」(モスコフスキー・コムソモーレッツ紙電子版)、「日本は、ミサイル防衛システム(MD)の統合に関して米国と協力しない」(TVズヴェズダ電子版)、「露日は宇宙の軍事化を許さない」(ヴズグリャド電子版)など、いずれも米国グローバル・ミサイル防衛システムに日本のミサイル・防衛システムを(当面は)統合しないとの斎藤隆統合幕僚長の発言に注目している。

 わずかに「アジア太平洋地域における安全保障問題と北朝鮮問題についても会談」とあるのが、「領空侵犯」問題の討議のことではと推測させるのみで、この問題に対する関心の低さを感じさせる。いくつかの新聞は、日露間での防衛交換協力や、その将来性についてふれ、あたかも日露軍事同盟の動きがついに始まらんが如き印象を与え、驚かせた。

 逆に、日本側のインターネット版報道で、MDシステム問題に触れたのは、筆者が確認できた限りでは、時事ドットコムのみで、それも記事題名には登場せず、記事下部で言及されているのみである。

 ロシア側マスコミの報道の源泉は、バルーエフスキー参謀総長が会談後に行った記者会見によるものらしい。

 この会見で、リア・ノーヴォスチ通信によれば、バルーエフスキー参謀総長は次のように発言した。

 「私と斎藤隆日本防衛省統合幕僚長の名前において、絶対的にこれ(宇宙の軍事化)に反対する。私たちは共にこの立場にたどり着いた」。「ミサイル防衛システムにおける日米協力は、近い将来における米国グローバル・ミサイル防衛システムに対する日本防衛システムの統合を予定していない。私は斎藤氏の口から私が聞きたいと望んでいたものを聞くことが出来た。わたしは満足だ」とのことである。

 要するに、ロシア側はバルーエフスキー参謀総長も含め、「近い将来において日本ミサイル防衛システムを米国システムに統合する予定はない」という斎藤統合幕僚長の発言に大注目。会議中で触れられた日露防衛機関の協力拡大方針にも注目している。しかし、他の会談内容には無関心であったようだ。

 ロシアは以前から米国によるミサイル「防衛」システムの拡大に懸念を抱いており、バルーエフスキー参謀総長もことあるごとに米国主導のグローバルミサイル防衛システムに反対である旨を一度ならず宣言している。

 またロシアは一貫してその対外戦略として、世界の米国一極化反対、世界の多極化推進賛成の方針を堅持している。ここで鍵となるのは中国である。多極化政策の一環として、中国と合同演習を行うなど協力を実施する一方で、ロシアは中国情勢の潜在的な不安定性をも忘れてはいない。

 また中国との関係には、政府が政治・経済・防衛面などで協力を推進する一方で、国民の間には根強い中国恐怖感情があり、ロシアの「仮想敵国」とはという質問に対して、中国をあげる人は非常に多い。

 このため少なくとも対中関係同様の多角的な協力関係を、日本との間に築きたいという潜在的な意思があるようだ。今回の斎藤隆総合幕僚長の一発言へのこれほどの大注目には、このような背景があるように思える。しかし、会談を報道した日露のジャーナリストたちの内、どちらが視野が広く先見の明があるのであろうか?
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