米国の弁護士資格を持ち、ビルマのパイプラインと人権の問題に関する米国内での「ユノカル訴訟」にも関わった秋元由紀さん
民生置去り、少数民族は弾圧
4月27日に行われた報告
「ビルマ(ミャンマー)東部で何が起きているのか?」で、経済面で失政を重ね続けているビルマ軍政の現状を、秋元由紀さん(ビルマ情報ネットワーク/メコン・ウオッチ)が分析した。
ビルマは、天然ガス、オーク材などの高級木材、鉱物資源、ルビーなどの宝石、水力といった輸出資源に恵まれ、年間37億ドルもの貿易黒字に恵まれている。しかし、国家予算の半分は軍事費に支出され、医療や教育には5%しか支出されていない。多額の軍事費は、民主化勢力や少数民族の弾圧にまわっているのが現状だ。(データはいずれも2007)
ビルマは多民族国家で、人口の3〜4割をビルマ人以外が占める。中央の平野部、7管区にビルマ人が多く、周辺の7州は少数民族が多い。とりわけ国境地帯が少数民族の居住地域となっている。ところが周辺地域は軍政支配が弱く、なかば内戦状態になっている場所もある。ところが天然資源の多くは少数民族の住む周辺7州に偏在し、その開発のために軍政が少数民族の弾圧を続けている。
天然資源開発のため、軍政はまず、国軍を大量に投入する。少数民族の大量移住を強制したり、村を焼き討ちしたりする。そればかりでなく、駐屯した軍人の衣・食・住を確保するため、少数民族に無償の労働奉仕を強制する。少数民族は、ポーターなどの役務強制により生業や家畜などを失うばかりでなく、食料の供出も強要される。強制労働には、女性の性的奉仕も含まれる。
たとえば、サルウィン川の水力資源開発では、4つのダムが建設予定となっており、ダムの建設予定地と、開発予定地と首都とのルートが軍によって支配された。ビルマ東部に限っても、1996年以来、3200もの村が破壊され、15万5千人もの避難民がタイに逃れ、くわえてこの1年に限ってもカレン州だけで3万人もの国内避難民(軍政によって居住地を追われ、国内をさまよう人々)が生じたと推定されている。さらに軍による虐殺も後を絶たない。
サルウィン川開発と少数民族の弾圧(4月27日の資料より)
アンダマン海のヤダナ・ガス田からタイのラチャブリ精製所まで、ビルマとタイの2国にまたがって建設された天然ガスの、ヤダナパイプライン建設をめぐっても、沿線では焼き討ち、強姦、殺人、強制労働などの被害が起きた。人権侵害をめぐって、投資していた米国の石油会社・シェブロン(現、ユノカル)は、米・連邦裁判所に提訴され、トタル(フランス、現在はトタルフィナエルフ)、プレミア・オイル(英国)と共にヤダナ・パイプラインの事業から撤退した。
(関連サイト・1) (関連サイト・2)
欧米は人権問題に配慮して、ビルマの自然資源開発から撤退しているが、その穴を埋めるかのように日本企業と日本政府系の資金が進出している。イエタ郡の石油開発では、現地法人への出資の2割を、半官半民の「日石ミャンマー石油開発」が担っている。そればかりではない、2008年に入ってからODA(政府開発援助)も事実上、再開された。
「ビルマ国内で本当に困っている、国内避難民、タイにいる難民、日本にいる難民にはODAの支援が回らない。日本のODAは事実上、ビルマ軍政を支援してしまっている。そのような実態を多くの日本人が関心を持って、考えて欲しい」と秋元由紀さんは訴えた。
(次ページにつづく)
名目は人道支援だが、実施主体は「国防婦人会」的な翼賛組織が多い(4月27日の資料より)
◇ ◇ ◇