「サブプライム問題にはじまる信用不安は危機を脱した」という観測もあるが、実物経済への影響は今後、さらに深刻化し世界経済にも影響を与える、と私は予測する。
ニューヨーク証券取引所の様子、4月16日。(ロイター/アフロ)
それに対し、これまでに実施・提案された対策は、主に金融緩和と法人税減税であり、これは信用不安解消には、それなりの効果があったようである。しかし、こうした政策の恩恵を受けるのは競争力のある大企業や富裕層で、競争力の無い企業や貧困層は対象にならない。もちろんこうした政策を実施・提案する側は、活力のある層を優遇するのが経済を活性化するのに効果的で、いずれその効果は貧困層にも及ぶと主張する。
だが、強者優遇の政策が取られた小泉・安倍政権やフッシュ政権の実績をみると、こうした政策はむしろ格差を拡大し貧困層を増加させている。サブプライム問題は今後、金融関係よりも個人消費に影響することが予測されるので、こうした現在の対策はかえって今後の経済に悪い影響を与えないか懸念される。
サブプライム問題の今後の展開を考えると、対策としては個人消費の拡大を図ることが大切で、そのためには格差の解消が先決である。格差解消には福祉と教育の充実が有効だから、そのための財政支出を考えるべきだろう。
またサブプライム問題による株式市場の低迷で、投機的資金が商品市場へ流入したことは、広く知られている。石油や穀物が実需に基づかない投機商品となった結果、石油価格や穀物価格の高騰を増幅したのだった。だから、投機的資金を抑制することはこのところ問題になっている物価上昇への対策としても有効だろう。だが多くの国が財政難の現在、この2つの課題に応える政策を実施するのは困難に見える。
しかし、証券(先物商品も含む)取引に広く薄く課税する証券取引税を実施し、その税収を福祉・教育に充てれば、ある程度この課題に同時に応えられるのではないか。「広く」とは、小口も含めた全取引者を例外なく課税対象とすることであり、「薄く」は税率を比較的低く抑えることだ。
税率をを例えば0.1%とする。東証が1日平均2兆9,000億円。これに1,000億円超の大証、東証マザース等を加えれば3兆円超の取引が行われているので、年間約1兆円の税収が見込める(イギリスがほぼ同額、NY市場だけで1日1,300億ドルの取引が行われるアメリカはもっと巨額になる)。これを原資として、ある程度の施策は可能だろう。
この種の税の提案は 外国為替取引に広く薄く課税する事が提案されたトービン税が最初である。今ではトービン税は税収を発展途上国の援助に当てる、と理解されているがもともとは為替の乱高下を防ぐため、売買回数の多い投機には影響するが、回数の少ない投資には影響しない税として提案されたものだ。
しかし、この種の税を一部の国だけで導入するのは、非導入国への投機マネーの流入を招くので難しい。導入するのなら、少なくともG8+中国、さらにはアラブ産油国なども加え、一斉に導入する必要がある。その意味で、今回のサミットはこの問題を検討し実施するための、時期といい、規模といい、まさに好機であろう。
地球温暖化は確かに緊急の問題だが 世界経済の停滞をどう解消するかは、それ以上に緊急の問題であると思う。その効果的な対策として洞爺湖サミットでは証券取引税・先物商品取引税の導入が合意されることを望みたい。
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