19日12時30分から13時までの30分間に、成都市武候区にある「四川大学華西病院」救急部の前には、救急車のサイレンが4回も響きわたった。
臨時応急処置ステーションで消毒を受ける、被災地から送られてきた患者たち。
搬送されてきた患者は、まず入り口前の臨時応急処置ステーションで消毒を受ける。病院内に送られた男性患者を、親族らしき女性が食器やタオル、衣服などの入った網袋を持って追おうとしたが、入り口に立つ医師に止められた――「こういうものは(病院が)無料で提供するから」。被災地では感染症が懸念されているため、現地からの荷物持ち込みは禁止されていると説明した。
「感染症が発生していますか」と筆者が尋ねると、「今のところ、『紅疹症』※ が発生しているだけですが、予防措置は必要です」とその医師が答えた。
※ 中国本土と香港メディアの報道によると、一部被災地域では下敷きとなり圧迫された被災者の体に紅い発疹が現れる、いわゆる「紅疹症」が発生しているそうだ。この紅い発疹は、衛生不良や栄養不足などによる体力低下が原因で起こるもので、感染症ではないという。
「日本の新聞社の記者です。取材させていただきたいのですが」と自己紹介したら、特別に登録などをさせられることもなく、案内のために別の医師を呼んでくれた。
対応してくれた姜賢飛医師の話によると、四川省最大の国営総合病院であるこの「四川大学華西病院」では、これまでに各被災地から移送されてきた約1,400人の患者に治療を行い、うち約800人が入院している。おもに地方の病院では対応できない重傷者を収容しているが、ここに送られてきてから24時間以内の死亡率は0%だそうだ。
四川大学華西病院は被災地の患者と付き添いの親族に食事を無料で提供している。
また被災者への対応としては、患者の治療費と食費を全額免除するだけでなく、付き添いの親族へも、食事も無料で提供しているという。
「これらの費用はどこから出ていますか」と聞くと、
「政府からの補助金が間に合わないので、今は病院の経費でやっています」と答えた。
2階に上がり、被災者の患者たちを収容する専門病室の1つに案内された。
「ここで自由に質問して頂いて構いませんが、20分程度にしてください」姜医師はそう言って、別の病室に去っていった。
案内されたこの病室には8つのベッドがあり、患者と付き添いの親族たちが昼食の最中だった。私は食事を終えた一人の女性患者とその家族に話を聞いた。
綿竹市漢旺鎮出身の李均勇さんは、地震で腹腔内出血と右足骨折の重傷を負った。
女性患者は李均勇さん、四川省綿竹市漢旺鎮出身の37歳。綿竹市郊外の漢旺鎮は震源地のブン(さんずいに文)川から東に数十km離れた所にあり、特に大きな被害を受けた地域の一つだ。地震発生した12日午後、李さんは崩れた自宅の下敷きになり、腹腔内出血と右足骨折の重傷を負ったが、隣人や親戚に救出されたという。
同日夜、李さんは綿竹市内の病院に搬送された。その病院では、収容しきれない負傷者が廊下や駐車場などに溢れ出していて、李さんのような重傷者を治療する手段がなく、転院先を紹介する余裕さえなかったそうだ。綿竹市では当時まだ1万2,000人が生き埋めになっており、地元政府はその救出作業に追われ、負傷者の移送までは手が回らなかったという。
李さんの家族は自力で彼女を救おうと、運送業を営む知人の車に李さんを乗せて成都まで運んでもらい、成都にいる親族を頼りに、この華西病院に入院させてもらったということだ。
「こちらに入院した晩(14日)に腹腔の手術を受けて、足の骨折も処置してもらいました。それからほぼ一週間が経ちました。先生と看護師さんが毎日診察や点滴のチェックなどに来てくれますが、担当医師の名前も知らされていなくて、治療プランの詳しい説明もまだ受けていません。みんな忙しいのを見て、なかなか聞けないのですが、とても不安です……」付き添いで世話をしている李さんの義姉が訴えた。
李さんは傷の痛みを抑えながら「生きてさえいれば、なんとかなります。4歳の娘がいます。娘の顔を思い出すと、生きる気力が湧いてきます」と話し、母親の強さを目の当たりにした思いがした。
病室を出て廊下を歩くと、ナースステーションのカウンターを囲んで話をしているグループの中に姜医師を発見した。四川や河南、山東訛りの標準語が飛び合う中、医師たちは立ちミーティングをしていた。この病院では現在、中国各地から派遣されてきた医師・看護師171人が医療活動にあたっているという。
姜医師に「担当医師と治療の詳細を知らせてもらえず、不安を感じる」という患者と親族の声を伝えたところ、「いま一人の医師がたくさんの患者を担当しているため、意思疎通がうまくできていなかったりもします。病院に報告し、努力して改善します」という返事をもらった。
病院を出る前に、姜医師に「日本インターネット新聞社」の名刺を渡した。彼は「今朝のテレビニュースで、日本政府が被災地に血液透析機50台を提供することを知りました。現場の医師として、大変うれしいニュースです 」と明るい表情を見せた。
姜医師は「もし今後も日本の皆さんにご支援いただけるのでしたら、下記の医療機器が不足していることを伝えてもらえば、ありがたいです」と話し、高い技術を持つ日本からの医療支援に期待を寄せた。
骨折手術用器械
骨折の内固定材料
人工呼吸器
血液透析機
生体情報モニター
消毒類薬剤
連絡先:
四川大学華西病院医務部
住所:中国四川省成都市武候区国学巷37号
TEL:+86(28)8542-2010
FAX:+86(28)8558-2944
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