8月に予定されている北京オリンピックには世界中から3万人ものジャーナリストが取材に訪れる。報道に対する規制が厳しい中国で自由な取材活動が保障されるのか懸念されるなか、世界的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」が29日、東京・内幸町の日本プレスセンターで、中国政府によるジャーナリストへの弾圧の実態を報告した。
フェリム・カイン氏、左はHRW日本駐在員の土井香苗氏(日本プレスセンターで)
報告したのはHRWの中国担当調査員フェリム・カイン氏。元『ダウ・ジョーンズ』通信社ジャカルタ支局長。中国取材経験は豊富で中国語も堪能。現在、香港在住。
カイン氏は1年6ヵ月に渡って中国政府による人権弾圧状況を調査した。29日はこのうちジャーナリストへの弾圧について話した。
「チベットで暴動が起きた3月以降、メディアに対する抑圧が強まっている。26人の中国人ジャーナリストが現在、獄中にいる。容疑は曖昧。『噂を広めた罪』とか、『国家転覆を図った罪』とかだ。内容は政府が欲していない話をカバー(取材・報道)したに過ぎない」
カイン氏によれば日本人を含む外国人記者に対しても良いものではない。
「国土の半分で外国人ジャーナリストを締め出している。チベット、甘粛省、四川省のチベット族居住地域などだ」
北京五輪と人権弾圧をかけ合わせたイラスト
「中国の(御用)メディアが外国人ジャーナリストに圧力をかけてくる例もある。こうした(御用)中国メディアが外国人ジャーナリストに対して『殺すぞ』と脅迫した。中国政府にとって親切ではない報道をしたからだった」
(筆者注:言論の自由が存在しない中国には、欧米でいうジャーナリストはいない。東京駐在の中国人記者は外交官ナンバーをつけた車に乗っているほどだ。)
「外国人ジャーナリストは暴力にもさらされている。治安警察や治安警察に依頼されたヤクザものが手を下す」
「中国外国特派員協会(FCCC :Foreign Correspondent Club of China)の調査によると2007年、外国人ジャーナリストへのハラスメントは185件あった。今年3月のチベット暴動後は50件のハラスメントが報告されている。チベット、四川省、甘粛省に入ろうとしたジャーナリストに対してだ」
北京五輪取材に赴く大メディアの記者も熱心に耳を傾けた
中国政府に弱腰のIOC
2001年、北京でのオリンピック開催が決定した際、中国政府はIOCに対して「人権状況を改善する」と約束した。これを受けて中国政府は、2007年から『外国人ジャーナリストの活動の完全な自由を保障する暫定法』を施行している。『暫定法』は2008年末まで有効となっている。
ところが外国人ジャーナリストに対する規制は、上述したごとく厳然と存在する。カイン氏は「IOCも我々も中国政府に対して『外国メディアの自由を確保しろ』と言わなければならない」と力を込める。
ところが肝心要のIOCが弱腰なようだ。カイン氏は次のように明かした―
「中国政府は『人権状況を改善する』とIOCに約束したのだから、約束を履行するよう中国政府に要求すべきだ。こうIOCに申し入れたところ『我々はスポーツ団体であって人権団体ではない』という答えが返ってきた」
自分の身は自分で守るしかないようだ。外国人ジャーナリストの場合、形だけとはいえ『暫定法』もあり、収監される危険性は少ないが、中国人に対してはこの法律は適用されない。中国では外国人記者のインタビューに答えた、というだけで3年6ヶ月の懲役に処されたケースもある。慎重に動かなければ取材協力者にとんでもない迷惑が及ぶことになる。
カイン氏は「中国政府による盗聴・監視を逃れるために携帯電話は3〜4台持っていくように」と勧めた。最後に「3万人ものジャーナリストが入れば、中国の政治や社会をカバー(取材・報道)するいい機会だ」と五輪取材に赴く日本人記者を激励した。
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