「中国政府による仏教徒への弾圧を座視したままではいけない」。日本各地のお坊さんたちがチベットの窮状に救いの手を伸べようと連帯の輪を広げている。核となる会の名称は「宗派を超えてチベット平和を祈念する僧侶の会」。会は6日、東京・内幸町の日本プレスクラブで「日本でダライ・ラマ14世と中国政府の直接対話を求める」声明を発表した。
「僧侶の会」記者会見(日本プレスセンターで筆者撮影)
「僧侶の会」代表の川原英照さん(真言律宗)によれば、これまでに会への連帯を表明しているのは、真言宗、天台宗、臨済宗など6宗派、数百人。
日本プレスセンターでの記者会見には川原代表はじめ幹事をつとめる僧侶6人が出席した。「同じ仏教徒であるチベットへの弾圧に心を痛め、僧侶として何もしないということは耐えられないのでこの会を作った」と川原代表が設立の趣旨を述べた。
川原代表は3年前、自らが貫主を務める熊本県玉名市の寺にダライ・ラマを招き、以来親交を続けている。「人権を保障するのは国家でしかない。4月に成田空港で記者会見したダライ・ラマ法王が『プリーズ・ヘルプ・ミー』と言っているように聞こえた」と話す。
ダライ・ラマ14世は4月、アメリカ便に乗り換えるトランジットで成田空港に立ち寄った。「僧侶の会」によれば記者会見を許可する代わりに日本政府がつけた条件が「政治的な発言はしない」というものだった。「ダライ・ラマ法王が『プリーズ・ヘルプ・ミー』と言っているように聞こえた」と川原代表が言うのはこのためだろう。
記者会見では幹事の岡沢慶澄さん(真言宗)が「僧侶の会」の声明を読み上げた。
内容は「中国政府の圧政下にあるチベット人の生命、人権、文化、言語、民族性消滅の危機を深く憂慮し、ブッダの大悲に根ざす正当な怒りによって強く訴えます。私たちはダライ・ラマ14世の提唱する非暴力と対話による解決を心から支持し、ともに慈悲の精神をもってこの問題の平和的な解決に取り組みます。日本国政府に対しては歴史的な(ダライ・ラマと中国政府の)直接対話の舞台を用意することを求めます」などとするものだ。
チベット弾圧抗議集会(5月6日、代々木公園)
岡沢さんは「ダライ・ラマ法王は観世音菩薩の生まれ変わりとして信仰されている。この観世音菩薩が国外に追放されているということになる。慈悲の象徴が否定されてよいのか」と語る。淡々とした口調の中に怒りが込められていた。
中国政府への対応について僧侶たちは「力に力で解決することではなくて慈しみあうことが源・・・」「仲の良い友人に諭すように・・・」などと寛大な姿勢を示していた。
ところがチベット仏教ナンバー2のパンチェン・ラマについて話が及ぶと態度が一変した。パンチェン・ラマは1995年に認定された直後から、中国政府によって幽閉されている。拘束された時は6歳。「世界最年少の政治囚」と呼ばれた。実在のパンチェン・ラマ代わって中国政府は自らに都合の良い少年をパンチェン・ラマに仕立て上げてインストールしているが、チベット人は認めていない。
これについて川原代表は「明らかな宗教弾圧です。それを『宗教弾圧だ』と言い切る勇気を持たなければならない」と語気も鋭く語った。
大樹玄承さん(天台宗)は「一刻の猶予もならない。ダライ・ラマの年齢を考えるとチベットの人たちがしてきたことが途絶える」と危機感を募らせる。
声明文は先月末までに福田首相や高村外相に郵送した。川原代表は「檀家や門徒に政治家がいるので、(中国政府とダライ・ラマの)直接対話の舞台を作るよう働きかけたい」と力を込めた。
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